ライター : 稲吉永恵

野菜ソムリエ / ローフードマイスター / オーガニックコンシェルジュ

長崎で育った郷土料理「ハトシ」

長崎の郷土料理といえば「カステラ」や「佐世保バーガー」など海外から入って独自に進化を遂げた料理が多いですよね。ハトシもそんな郷土料理のひとつ。中国から貿易を通じて伝わった料理で、そのおいしさから長崎に広く伝わり、長年愛されるまでになりました。

ハトシとは、食パンの間にエビのすり身を挟んで油で揚げたもので、おかずのひとつとして食卓に並んだり、おやつのように手軽に食べられたりしています。

長崎ではメジャーなハトシですが、ハトシを食べたことがない、見たことがないという人も多いのではないでしょうか?今回はそんなハトシの歴史からレシピ、おすすめの名店までをご紹介します。

「ハトシ」って何?

はじまりは明治!ハトシの歴史

ハトシは明治時代に、清国(当時の中国)から伝えられた料理です。明治時代は、まだ洋食や中華料理など海外の料理が今より少ない時代でした。今でいう総菜パンのような味わいは、和食が中心の日本人にとって衝撃だったのではないでしょうか。

当時、伝わったばかりのハトシは瞬く間に広まり、日常的に食べられる家庭料理にまで発展したそうです。このときの具材は高価なエビに限らず、ひき肉や魚のすり身などを使い家庭ごとに工夫して作っていました。

今では、店頭販売などで長崎名物として食べられています。ハトシのおいしさを知っているからこそ、伝承され続けているんですね。

なぜ「ハトシ」という名前に?

ハトシは中国語で「蝦多士」という名前で、今でも食べられています。「蝦(ハー)」はエビ、「多士(トーシー)」はトーストを意味していて、中華風エビトーストといった意味の料理になります。油で揚げるという意味をつけた「炸蝦多士(ジャーハートーシー)」と呼ばれることもあるそうです。

そんな中国から入った「蝦多士(ハートーシー)」という呼び名を真似して生まれたのが、長崎県の「ハトシ」です。ハトシは日本だけでなく台湾にも伝わり、そちらでは「蝦吐司(ヘートースー)」と呼ばれているそうです。同じ料理ですが、地域ごとに別の名前がついています。

長崎ではどういうときに食べられる?

昔は家庭料理として活躍したハトシですが、現在ではお店で食べることが多いようです。作るには工程がかかりますが、揚げたてがとてもおいしいんですよ。最初から作らなくても今では通販や店頭で冷凍したハトシを販売しているところも多くあります。油で揚げるだけでできたてが味わえるのはうれしいですね!

また、ハトシから派生した「ハトシロール」というものも売られているようです。ロール状になったスティックタイプで、主に鯵のすり身を使用しています。プレーンのほかにもチーズやエビなどの種類があり、いろんな味が楽しめるので人気があります。冷凍のものも売られているようなので、ぜひ一度食べてみたいひと品ですね。

ハトシの材料と味は?

手作りすると手間がかかるハトシですが、材料は至ってシンプル。「食パン」「エビのすり身」「揚げ油」さえそろえれば、おいしいハトシが家庭でも作れます!

エビのすり身が手に入らないときは、生のエビを買ってきてすり鉢ですりつぶすか、はんぺんや魚のすり身でも代用が可能です。ハトシはエビの風味があるとおいしいので、エビのすり身と魚のすり身を半分ずつ混ぜるのがおすすめ。食パンは耳があってもなくても大丈夫ですが、耳のないものを選ぶと火の通りが一定になりますよ。

中身のすり身には野菜やつなぎ目的の卵、チーズや胡麻、ヒジキなどお好みの具材を混ぜて作ってもおいしいです。ただ、あまりいろいろな具材を入れると挟みづらくなりますので、混ぜ込むときはすりつぶすか細かく刻むといいですよ。

ハトシってどんな味?

味だけで言えばエビフライに近いかもしれません。シンプルにエビのすり身と塩、食パンだけで作れば、同じような味わいになるはず。

エビフライとの大きな違いはまず、エビをすり身にすること。すり身にすることで、丸ごとのエビとは違うフワッとした食感が生まれます。荒めにつぶせばエビ本来のプリプリとした食感も味わえますよ。中に野菜やチーズなどの具材を入れたりと、アレンジできるところも魅力のひとつです。

もうひとつの違いは食パン。パン粉にせずそのまま使うことによって食パンのふんわり感を損なわず、また油に当たる面積が大きいのでパン粉よりサクッとした食感を味わうことができます。この食感の違いや味のバリエーションが今なお引き継がれていることが、ハトシの人気の秘密かもしれませんね。

編集部のおすすめ