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「スプーン」は料理よりも先に日常生活で使われていた

スプーンが食卓に登場したのは、ナイフよりやや遅れて14~15世紀頃といわれています。おもにスープを飲むために使われていましたが、当時のスプーンは高級品扱いだったため、上流階級のみが用いる道具として親しまれてきたツールを持ちます。

しかし中世ヨーロッパにおけるスプーンは、食卓よりも前に登場していました。当時のキリスト教では、生まれた子どもにスプーンを贈るという習慣があったため、スプーンの存在自体はナイフ以上に身近であったと考えられます。

「フォーク」が広まりにくい背景には宗教が関連

前項で挙げたように、フォークは宗教的観点から食卓への普及が遅れました。紀元前1,000年にナイフとスプーンの原型が登場してから、フォークの登場までには2,000年以上もの年月が必要だったのです。

現代のフォークのルーツが生まれたのは11世紀といわれていますが、当時はまだ「食べ物は手で食べるもの」という考えが根付いていました。実際に食卓のカトラリーとして用いられるようになったのは、18世紀頃といわれています。ただしイタリアではパスタ文化に基づき、16世紀頃から一般的に普及していたと考えられています。

日本のカトラリーの歴史

現代の日本でも、幅広い料理でカトラリーが活躍していますよね。ここでは、日本のカトラリーの歴史をご紹介します。洋食だけではなく、中華料理や和食のアレンジ料理などでも大活躍するカトラリー。さまざまな国の料理を楽しむ日本ならではの、カトラリーとの関係性を学んでみましょう。

もっとも古いルーツは旧石器時代!

日本のカトラリーの歴史は、旧石器時代にまで遡ります。ただし、もちろん当時からフォークやナイフが登場していたわけではありません。旧石器時代〜石器時代の埋蔵品から「木製の匙(さじ)」が発見されていることから、食器を使って食事をするという営みが存在していたことがわかっています。

当時の匙は石でできており(=石匙)、ナイフやスプーンとして用いていたと考えられています。食事のためだけではなく、皮・骨・角などの加工や、イネ科植物を切るためにも使われていたのだとか。材料や加工方法が限られていた時代ならではの、ハイブリッドな小道具だったといえます。

シルクロードから中国のカトラリーが伝来

そんな日本に本格的なカトラリーが伝来したのは、紀元前2世紀頃から活用され始めたシルクロードによるものと考えられています。ご存知の通り、シルクロードは中央アジアを東西に横断する古代の交易路です。

カトラリーは中国から金属製のスプーンが伝わってきたことが由来と考えられており、平安時代にはすでに箸と匙を使う作法が浸透しつつあったといわれています。平安時代の代表的随筆『枕草子』でも、宮中でカトラリーが使われている描写が描かれています。

西洋料理によって普及した江戸~明治時代

江戸時代に入ると日本に西洋料理が普及するようになり、同時にカトラリーの文化も広まっていきました。とくに明治時代における文明開化では、料理をはじめとする多くの西洋文化が輸入され、生活様式の洋風化が進められました。

当時、日本に最初に定着したカトラリーはスプーンといわれています。カレーライスやスープなどの洋食が一般家庭でも親しまれるにつれて、用いられる食器の形もどんどん変化していったのです。

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