ライター : macaroni 編集部

山田奈美さんから学ぶ発酵食品の取り入れ方

Photo by kazuhiro gohda

薬膳・発酵料理家、国際中医薬膳師/山田奈美さん 食べごと研究所主宰。雑誌やwebなどで発酵食や薬膳レシピの提案や解説をおこなうほか、神奈川県葉山の「古家1681」にて「和食薬膳教室」「発酵教室」などを開催。著書に『ぬか漬けの基本 はじめる、続ける』(グラフィック社)『二十四節気のお味噌汁』(wave出版)など。8月末に新刊『菌とともに生きる 発酵暮らし』(家の光協会)を発行
私たちの健康をサポートしてくれる発酵食品。体によいことを知りながらも「自分で作ってみたいけどむずかしそう」「毎日はちょっと無理かも」と思っている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、発酵食品を気軽に取り入れるヒントとして、手作りの発酵食品を毎日食べるという薬膳・発酵料理家の山田奈美さんのライフスタイルをご紹介します。発酵食品の魅力やこだわり、管理のコツなどを教えていただきました。

Photo by kazuhiro gohda

山田さんは、神奈川県葉山にある築90年の古民家に、旦那さんと小学3年生の息子さんの3人で暮らしています。

「家族の健康を守るには、やはり食事が資本。でも、むずかしい凝った料理を作る必要はないと思っています。外食続きで胃腸が疲れているから消化にいいものにしようとか、そのときの家族の体調や状況に合わせて献立を考えていますよ。

そんなときに便利なのが、発酵食品なんです。発酵食品は、管理が大変とか手間がかかるとか思われがちですが、手軽で飽きずに摂取できる健康食品のようなもの。納豆やぬか漬けなんか、よい例ですよね。お皿に盛るだけでひと品完成しますから」

そう穏やかに語る山田さんのキッチンは、たくさんの手作り発酵食品で溢れています。山田さんはいつから発酵食品に傾倒されたのでしょうか。

発酵食品に魅了されたきっかけ

Photo by kazuhiro gohda

今でこそ発酵食品に囲まれて健康的な生活を送っている山田さんですが、元はバリバリ働く編集者。仕事が深夜に及ぶこともあったんだとか。取材で出会った薬膳の先生の教えを受けるうちに、発酵食品を積極的に取り入れるようになったそうです。

「当時は昼夜関係なく仕事をしており、冷えや生理不順、体のだるさなど、常に不調を感じながらも、見ぬふりをして過ごしていました。そんなとき、薬膳の先生に取材する機会があり、話を聞いて、自分の食生活がいかに乱れているかを痛感しました。なんとか食を整えなければと、思いついたものがぬか床です。

小さい頃からぬか漬けが食卓に並ぶ環境で育ったんですけど、まさか自分でも作るとは思っていませんでした(笑)。『ぬか床は管理が大変そう』と思われがちですが、一度作ってしまえば、あとは野菜を入れるだけ。中途半端に余った野菜を腐らせずに済むし、健康的なひと品が簡単にできあがります」

今では調味料ほとんどが手作り

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庭で管理されているしょうゆ樽
手作りのぬか漬けのおいしさに感激した山田さんは、どんどん発酵食品の魅力にはまっていったそうです。

「食生活を見直し、発酵食品を積極的に取り入れるようになって体調がだんだんとよくなったんです。20代の頃より、実は今のほうが元気なくらい(笑)。

今では、みそやしょうゆ、塩などの基本の調味料だけではなく、塩麹やしょうゆ麹なども手作りしています。塩分量や発酵の度合いをアレンジできるのもよいですし、なによりおいしいですからね」

確かに山田さんのつややかな肌からも、健康さが伝わってきます。では、そんな山田さんのライフスタイルにはどんなこだわりがつまっているのか、探ってみましょう。

発酵食品を取り入れたライフスタイルのこだわり

朝昼晩に合わせた食リズムを意識する

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手作りの納豆は、市販の納豆菌と稲藁についている天然の枯草菌を使って作っている
山田さんが大切にしていることのひとつに、食のリズムに合わせた食べ方があります。また、みそやしょうゆなどの調味料も含め、何かしらの発酵食品を食べているそうです。

一日の腸の動きを意識して、発酵食を取り入れます。たとえば、朝食は排出を助けるような発酵食品を中心に取り入れたり、夕食で油分の多いもの食べるときは、発酵食品の力を存分に借りて消化を促したり……発酵食品のおかげで1日の食リズムが整ってきますよ。

特に朝は必ず、納豆とおみそ汁と梅干しを食べています。我が家ではこの3つが朝食の三種の神器なんです。昼食は息子に作るお弁当と同じものをワンプレートでいただくことが多いですね。夕食は献立によってさまざまですが、ぬか漬けは必ず食べますよ」

家族と楽しみながら取り入れる

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写真(左):息子の大地くんが作り、育てている「だいちゃんの白みそ」。毎週月曜に三和土(たたき)で開かれるはかり売りの店でも人気の品だそう。 写真(右):息子の大地くんが生まれた年に、庭の梅の木から取れた100粒の梅で作った「大ちゃん梅干し」。100歳まで長生きしてほしいという願いを込めて、誕生日に毎年1粒ずつ食べている。誕生日になると、僕の梅干しは?と聞いてくるんだとか
健康的な生活は、ひとりの力で作り上げられるものではありません。山田さんの暮らしには、常に一緒に楽しんでいるご家族の姿が見受けられました。

「私は添加物や過剰な除菌もできるだけ避けるようにしています。発酵食品も菌なので、過剰に除菌するとよい菌までいなくなってしまうからです。そうした理由も含めて、家族みんなでいつも話し合って共有をしています。

息子は小さな頃からみそや、ぬか床作りにチャレンジして、発酵食品を生活の一部にしていますよ。無理なく、家族で体の変化を感じながら取り入れることが大事かもしれません」

信念を持って道具を選ぶ

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2020年2月仕込みのみそ樽。樽は常温で管理しているが、すぐに使う分はかめ壺や保存容器に移して使っているそう
「みそやしょうゆ作りには大きな樽を使っています。この樽は樹齢100年の吉野杉を組んで、竹の “たが” で留めています。『しっかりと手入れをすれば100年は持つよ』と樽屋さんに教えていただきました。

樽は通気性がよく、呼吸しているので菌が繁殖しやすいですし、陶器のかめ壺は、外の温度変化の影響を受けにくく、塩や酸にも強いです。それぞれの良さがあり、使う道具によって味わいも変わるのがおもしろいですね。

ただはじめは、フタつきのホーローやプラスチック容器など、家にあるもので充分!いきなり大量に作ろうとせず、少しずつこだわっていけばいいと思います」
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