その味のブラックボックスは、なんと魚醤

酒屋を営んでいた創業者・久保田良則さん(現・会長)が、品質の良い調味料を顧客に提供したいとの想いで1983年に設立したユーサイド。「食の基本は家庭料理にあり、そこで使われる製品は簡単・便利でおいしく、そのうえ安全で安心なものでなければならない」との考えのもと、添加物に頼らない製品作りをモットーとし、バラエティあふれるおいしい調味料を製造・販売しています。

同社の胡麻ドレッシング、セイアグリー健康卵で作ったマヨネーズなどは、紀ノ国屋・明治屋などの高級スーパー、百貨店でも販売されているので、見覚えのある方もいらっしゃっるのでは。

「すき焼のたれ」は、創業間もない頃からのロングセラー商品。発売当初は、関東で売れても地元関西では出荷が伸びなかったとのことですが、関西での割り下の需要が高まるにつれて評判を呼び、愛用者が増えていきました。

ーースバリ、お伺いします。他社の割り下との味の違いの秘密は?

久保田將之さん(社長):「すき焼のたれ」の味のポイントは、当社オリジナルの魚醤を加えている点にあります。勝浦のマグロ業者から「解体したマグロで販売に向かない部位を使って何か創りだせないか?」と会長が社長時代に相談を受け、試行錯誤の末に生み出したマグロの魚醤です。これを隠し味としてプラスしたことで、「すき焼のたれ」に芯が入ったというか、ボディがしっかりとし、かつ味に奥行きが生まれました。当社独自の味のブラックボックスといったところですね。薄めずにそのまま使っていただくと、野菜から染み出した水分でちょうど良い塩梅になって、おいしいすき焼きが楽しめます。


筆者自身もこの割り下のファンで長年愛用しており、これで味わうすき焼きはコクがあるのに甘すぎず辛すぎず、まろやかなやさしさが感じられます。特に牛肉がもっている本来の旨味を存分に引き出してくれるので、牛肉好きに重宝されている1本というのも納得です。その秘密がマグロの魚醤にあったとは、まさに目からウロコです。

おいしい『肉じゃが』も「すき焼のたれ」で簡単に作れます

ユーサイドの「すき焼のたれ」は添加物を一切使わず作られている商品で、もちろん保存料も不使用ですから、開封後は早く使い切ることが大切です。

すき焼きをおいしく食べてこの割り下が残った場合におすすめしたいのが、肉じゃがへの活用。春先から初夏にかけて出回る新じゃがは皮が薄く、みずみずしさが特長です。その新じゃがと牛肉、残った「すき焼のたれ」で、おいしい肉じゃがが簡単に作れます。

材料(2人前)

・じゃがいも……中2個(4~6等分に切る)
・牛バラ肉……100g(3cm幅くらいに切る)
・玉ねぎ……1/2個(くし切り)
・グリーンピース……20粒程度
・すき焼のたれ……100cc
・昆布水……300cc
・油……適量

※昆布水は1000ccの水に昆布8~10g程度を浸けて、ひと晩冷蔵庫に置いておくだけ。煮物や味噌汁などに重宝します

作り方

1. 鍋に油を馴染ませ、中火で玉ねぎをさっと炒める

2. 1に牛バラ肉を入れて炒め、肉の色が変わったらじゃがいもを入れてさらに炒める

3. 2の玉ねぎがしんなりしたら昆布水を加えて煮込み、煮立ってアクが出てきたらていねいに取り除く

4. 3にすき焼のたれとグリーンピースを入れ、じゃがいもがやわらかくなるまで煮込む。煮汁が1/4くらいの量になるまで煮詰まれば完成

卵に大根おろしをプラス!「すき焼き」の新たなおいしさが始まります

おいしい割り下さえあれば手軽に作れるすき焼きは、今も家庭のご馳走として、根強い人気を保っています。そんなすき焼きの楽しみ方を拡げてくれるアイデアを、最後にご紹介します。

大根おろし!それを用意するだけでOKです。京都の老舗料亭から始まったとされる食べ方で、いたって簡単。大根おろしを作ってしっかりと水気を切ったら、好みの量を溶き卵に加えるだけ。大根のさっぱり感が牛肉とほど良く絡み、いくら食べても飽きの来ない味になります。卵が少し苦手な方も、これなら抵抗なく食べることができますし、卵がまったく口に合わないなら、大根おろしだけですき焼きを食べてもおいしいです。

京都のメーカーが生み出した割り下と、京都の老舗料亭発のアイデアで、定番の食べ方とはひと味違うおいしさを楽しんでくださいね。

【参考文献】
※『日本の食文化史~旧石器時代から現代まで』|岩波書店2015年刊
※『たべもの起源辞典』|東京堂出版2003年刊
※『すき焼き通』|平凡社2008年刊

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