ライター : ☆ゴン

おせちの珍味「棒鱈」

おせち料理の珍味「棒鱈(ぼうだら)」をご存じですか?棒鱈の発祥は江戸時代からとされ、おもに北海道や東北沿岸で漁獲された真鱈(まだら)を、加工・乾燥させた保存食のこと。当時から北前船で関西地方まで運ばれていました。

尾がついたまま3枚におろした真鱈を、完全に水分が抜けるまで干したものが棒鱈です。食べるときは1日から1週間程度、水に浸して硬く干からびた身を戻します。

鱈は水分が多い淡白な白身魚ですが、天日干しすることで旨みが凝縮。それを時間をかけて戻して煮込むと、鱈のホロホロとした食感とおいしさが楽しめるのです。

京都のおせちにおける「棒鱈」の意味

おせち料理にはそれぞれ意味がこめられています。たとえば昆布巻きは「喜ぶ」にかけて、黒豆は「まめに働く」、数の子は子宝に恵まれますようにという意味があるのです。

棒鱈は「たらふく(鱈福)食べられる」という意味から、「食べ物に困ることがないように」との願いがこめられた縁起物。そういう理由から、京都をはじめとした関西地方では、棒鱈をおせちに入れたとされます。

また棒鱈は、保存食として日持ちをすることから、おせち料理の具材として重宝されたのが、もうひとつの理由です。

棒鱈の作り方

おいしい干物には、鮮度の良い真鱈が必要。棒鱈作りは、鱈が旬を迎える12月~翌3月ごろにおこなわれます。北海道の稚内は、大きくて良質な真鱈が多いため、棒鱈の生産が盛んな地域。水揚げされたら、すぐに加工作業をはじめるそうです。

できあがった棒鱈は、かつては需要が多い関西または九州北部地方に出荷されていました。いまは全国に広く流通し、どこでも手に入る食材です。一方、近年の漁業資源減少により、真鱈に代わって、助宗鱈(すけそうだら)の棒鱈が増えています。

下準備と天日干し

鱈は鮮度が落ちるのが早いので、頭と内臓を取り除き、尾がついたままの3枚おろしに加工。このあとすぐに天日干しするのが「凍干し」、室内乾燥である程度水分を抜き、天日干しする「素干し」の2種類があります。どちらも、魚に塩をしないのが棒鱈の一番の特徴です。

冷たく乾いた北風が吹く北海道の稚内は、棒鱈作りにはもってこいの環境。吊るした状態で完全に乾燥したら、おろした棒鱈を2カ月ほど寝かせて完成です。

棒鱈の戻し方

棒鱈は食べるまでにひと手間かかります。完全に水分の抜けた棒鱈は、水で戻してから料理に使うのが一般的です。

水に浸して戻す

加工してすぐに天日干しする凍干しは、水に浸して1~2日もあれば戻ります。一次乾燥させる素干しは1週間程度と、戻りはかなり遅めです。どちらも手間と時間がかかりますが、やわらかくするために欠かせない作業。

また気温の高い季節は、浸す水の温度が高いと棒鱈が傷むことがあるので、冷暗所か冷蔵庫でおこなってください。

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