ライター : macaroni 編集部

8月の手仕事:梅酢と赤しその活用

Photo by Yasuaki Watanabe/UP inc.

四季折々、さまざまな風景や風情が感じられる日本には、代々受け継がれる季節の手仕事があります。便利になって日常ではなかなか目にできなくなったものもありますが、こうした先人たちの知恵に今一度目を向けるのも、ひとつの季節の楽しみ方といえるでしょう。

この連載では、大分を拠点に全国の調味料や食材の魅力を発信しているフードアドバイザーの神谷よしえさんに、生活の知恵ともいえる手仕事を季節のレシピと共に教わります。

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フードアドバイザー・調味料ソムリエプロ/神谷よしえさん 大分県宇佐市出身。伝承料理研究家の母が設立した台所だけの建物「生活工房とうがらし」を継承。「ごはんはエール」をテーマに人と人を繋ぎ、産地と料理人を繋ぐ活動や国内外でおにぎりや調味料の講演やセミナーなどをおこなっている。趣味はおにぎりを握ること
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第2回目のテーマは、梅干しを食べきったあとに残る「梅酢と赤しそ」の活用法です。

6〜7月に塩漬けした梅が、8月にはいよいよ完成の時期を迎えます。毎年、梅仕事をしているご家庭では、今年漬けた新しい梅干しと昨年の古い梅干しとを入れ替えるわけですが、そのときに残るのが、昨年の梅干しが浸かっていた「梅酢と赤しそ」。これをどうしたらいいのかわからずに困っている方が意外と多いと神谷さんはいいます。

「梅干しを入れ替えるときや購入した梅干しを食べきったときに、赤い汁やしその葉が残っていますよね。それが梅酢と赤しそです。

梅を入れ替えるタイミングで破棄するという方もいるのですが、それってとてももったいないことなんです」

Photo by Yasuaki Watanabe/UP inc.

「6月に梅を塩漬けし、ちょうど梅酢があがったころに旬の赤しそを加える。そして7月末ころの土用に梅を干し、8月に昨年の梅干しと入れ替える――というのが梅仕事の一連の流れ。

私の母がよく『食は連続ドラマ』と比喩していましたが、季節の手仕事には必ず理にかなった流れがあります。赤しそと梅酢も梅仕事の“連続ドラマ”の一部。余すところなく使えるんですよ」

梅干しの副産物ともいえる赤しそと梅酢。その使い道を、神谷さんに教えていただきました。

梅酢の活用方法

Photo by Yasuaki Watanabe/UP inc.

「梅酢は、梅を塩漬けしたときに出てくる酸味の強いエキス。これに赤しそを加えたものを正しくは赤梅酢といい、漬物の色付けに使われることが多いです。

特に梅干しを漬け込むとき、梅酢に赤しそを加えた瞬間に一気に梅酢がピンク色へと変わる様子は圧巻。まさに『料理は科学』を体現しているので、お子様の夏休みの研究の題材にもできるのではないでしょうか。

昨年の梅干しの梅酢は、保存の状態にもよりますが色味や酸味は少し落ちているかもしれません。でも、食材をほんのり梅味にしたり、酢飯をピンクに色付けしたりできますよ。何かと重宝するので、残ったら保存容器に入れて取っておきましょう。

そしてぜひ、旬の夏野菜を梅酢に漬けてみてください。即席の和風ピクルスが簡単に作れます」

夏野菜のしば漬け風

Photo by Yasuaki Watanabe/UP inc.

調理時間:塩漬け半日、しそ漬け2〜3日
保存期間:冷蔵で10日〜2週間程度


「夏の暑い日や、ちょっと体力を消耗したなというときに、ふとしば漬けが食べたくなることってありませんか?しば漬けのやさしい酸味を、日本人の身体は覚えているのかもしれません。

本来しば漬けは、長期保存ができるよう乳酸発酵をしたものなのですが、梅酢を使えば簡単にしば漬け風のお漬物を作ることができます。野菜に色がついたら食べごろ。冷蔵庫保存で10日ほどは持ちます。

食欲がないときでも、これさえあればごはんが食べられるから不思議。お茶をかけて、さらさらっと流し込むのもいいですね」

材料

・なす……小2本
・きゅうり……2本
・みょうが……5個
※上記をすべて合わて300〜400gほどにする
・赤しそ……50g
・梅酢(または酢)……200cc
・みりん……大さじ1杯
・塩……小さじ1杯

作り方

1. なすときゅうりは5mmほど、みょうがは縦半分に切る。切ったら塩をふりかけ、よく揉み込む

2. 容器に1を入れ、しっかり重しをして水分が上がるのを待つ。半日から1日して水分が出てきたら、水気をよく絞る

3. 赤しそにみりん、梅酢もしくは酢を加え、2を混ぜ合わせて保存容器に移して保存する

コツ・ポイント

1. しっかりと重しをする

Photo by Yasuaki Watanabe/UP inc.

「漬物の専用容器があれば、それを使ってください。ない場合はジッパー付きの袋で代用可能です。その場合は、空気をよく抜いてから重しをのせておきましょう」
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