ライター : 丸山夏名美

食いしん坊ライター/料理研究家

味の「黄金波形」は崩れないのか?

手軽においしいお鍋が食べられるとあって、人気の高い鍋つゆ。この市場でNo.1の売上を誇るのがミツカンです。
ラインナップは幅広く、メイン商品シリーズのひとつ「〆まで美味しい™鍋つゆ」は13種類。そのすべてで一貫しているのが、「口に入れたときの『先味』、食材を噛んでいる時の『中味』、飲み込んでからの余韻『後味』すべてがおいしい」ということ。人がもっとも「おいしい」と思う味の感じ方を、ミツカンは味覚曲線の「黄金波形」と呼んでいます。

鍋つゆ開発担当の山中 直人(やまなか なおひと)さんによると「どんな食べ方をしても、たとえ冷めても、ミツカンの鍋つゆは味が壊れることがない」とのこと。

Photo by ミツカングループ

山中さんは鍋つゆのおいしさを追求するため、日によっては100回を超えるテイスティングをして開発を進める“100舐め男“の異名をもつ人物。SNSやブログで変わった食べ方を見つけたなら、それでも「黄金波形」が崩れないか実験をするそうです。

「味が壊れることがない」は本当なのか? 疑問をもった私は、本当に「黄金波形」が崩れないのか、確かめてみることにしました。下記4つで実食&検証します。

1. クセのある食材をミックス
2. 同一食材を大量に入れる
3. 低温で食べる
4. 2種類の鍋つゆを混ぜる

レシピを山中さんと共有し、ご実食後にコメントをいただきました。

実験 1|クセのある食材をミックス「納豆&チーズのキムチ鍋」

Photo by Kanami Maruyama

まずはクセの強い食べ物を組み合わせてキムチ鍋つゆに投入!おいしそうな組み合わせですが、クセが重なれば「先味」「中味」「後味」に偏りが出て「黄金波形」が崩れるかもしれません。またそれぞれ素材の味が強いため、つゆのコクが素材たちに負ける可能性も……。

うどん以外は納豆、チーズ、牡蠣、ニラ、春菊、長ネギとクセが強い食材の代表格ばかり。しっかりと火を通したい牡蠣と長ネギは最初に入れて煮込み、ゆでたうどん、ニラ、春菊を加え、最後に納豆とチーズをトッピングしました。

Photo by Kanami Maruyama

牡蠣と納豆がチーズにからみ、それぞれをキムチ味が包み込んでいて、口に入れた瞬間から(正確には香りだけでも)おいしいです。

Photo by Kanami Maruyama

うどんがキムチ味と具材でよりコクが増しただしつゆを吸って、これまた絶品でした。「黄金波形」はまったく壊せなかったのではないでしょうか。

――実食してのご感想や検証結果についてお願いします

「この組み合わせを聞いて『まず大丈夫だろう』と思いました。実際においしく最後まで味わえましたし、黄金波形が揺るぎなかったな、と。ただ、キムチ鍋の特徴である唐辛子、ニンニクなどのパンチがきいた強さが減り、まろやかだったので、そこはちょっと悔しいです。おそらく溶けたチーズの影響でしょう」(山中)

検証結果……「黄金波形」は崩れないが、キムチ鍋感が減少

山中さんもおっしゃる通り、「黄金波形」は揺るがず、ひと口目から締めのうどんまでおいしくいただきました。キムチ感が減って悔しいとのコメントでしたが、まろやかで誰もが食べやすい味なので、多くの方におすすめしたいです。

実験 2|同一食材を大量に入れる「8割以上トマト鍋」

Photo by Kanami Maruyama

トマトは人気のある野菜で種類も多くあります。そんなトマトが愛される理由は甘さと酸味が濃くてバランスが取れているから。また、トマトには味がスープ類に溶け出しやすい特徴も。味が濃くて汁に染み出しやすいトマトなら、鍋つゆの味に影響しないわけがありません。

Photo by Kanami Maruyama

当然ですが、ほぼトマトです。トマトと長ネギ(少々)は最初から入れ、ほぼ火が通ったところで舞茸(少々)を加え、最後に三つ葉をトッピングしました。

Photo by Kanami Maruyama

火が通って少し崩れかけたトマトに寄せ鍋のだしが混ざって、なんとも爽やかで味わい深いです。トマトだけで食べるより、ずっとおいしいのではないでしょうか。

Photo by Kanami Maruyama

お鍋にご飯を入れることも考えましたが、今回は白ごはんにのせて……。これだけで何杯もいけます。

――実食してのご感想や検証結果についてお願いします

「おいしいだろうと踏んではいたのですが、思った以上に味覚曲線が良いですね。波形が崩れるどころか、より美しく研ぎ澄まされたと言えるでしょう。文句なしで公式メニュー化しても良いレベルです」(山中)

検証結果……「黄金波形」は素晴らしいまま、絶品!

「黄金波形」は崩れるどころか、より美しくなったとのこと。確かに、本当に絶品でした。検証をしている身としては負けた気がして悔しいですが、これには頭が上がりません。

実験 3|低温で食べる「涼風 冷しゃぶサラダ鍋」

Photo by Kanami Maruyama

鍋つゆは、鍋に入れて加熱する前提で作られているはず。ならば、加熱しないで食材を入れたらどうなるのだろう、という実験です。熱々ではないお鍋って、ありなのでしょうか。

Photo by Kanami Maruyama

※写真は1人分の陶器鍋
火にかけないので、野菜は生で食べられるものをそろえました。レタス、トマト、きゅうりと大葉や貝割などの薬味に長ネギ。うどんと豚しゃぶは事前にゆでました。卵はうどんを最後まで楽しむための“味変”用です。

冷たいままで充分おいしい!食材を小さめにしたこともあり、思った以上に焼あごだしがからみます。とにかく深いだしがきいたうどんサラダを食べているよう。油分がなくさっぱりしているので、これからの暑い季節にも食したいメニューではないでしょうか。

Photo by Kanami Maruyama

少しだしが入った取り皿に生卵を割り入れて、最後のうどんを。「〆まで美味しい」と謳われている以上、ここまで実証しなくてはなりません。これまた間違いのない味でした。

――実食してのご感想や検証結果についてお願いします

「『温度変化ぐらいでは黄金波形は崩れない』と自信をもっていましたし、冷温でも絶対においしいと胸を張って言えます。本シリーズのなかでも、私が『美しい』と絶賛している『焼あご』の実力が存分に発揮された鍋でした。どんな季節、たとえば夏でも楽しめるはずです」(山中)

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