5.煮汁を捨てて還元鉄と重曹を洗い流し、一度ゆでこぼす

鍋を流しに移動し、鍋肌から水を少しずつ注ぎ粗熱をとる。ザルを重ねたボウルに黒豆を水ごとそっと移す。鍋はきれいに洗っておく。還元鉄の代用で鉄玉を使用した場合、このタイミングで取り出す。

「流しに還元鉄の粉が残って、流しがさびることがあるので、作業が終わったら丁寧に掃除しましょう」
ザルを上げてボウルの水を捨て、上写真のようにボウルの端から水を注ぎ、ザルを上下に静かにゆらして洗う。ボウルの底に還元鉄が残らなくなるまで、5~6回繰り返して洗う。

「食感と味の含みをよくするために、還元鉄と重曹の炭酸成分を洗い流す作業です。水にさらすことであっさりとした味に仕上がります。鍋とボウルに水を注ぐときは、黒豆に直接当たらないようにしましょう」
次に洗った黒豆をゆでこぼす。黒豆の水気をきり、きれいに洗った鍋にそっともどし、豆にかぶるくらいの水を鍋肌から注ぐ。フタをしないで強火にかけ、沸いたら弱火にして5分ほど煮て火を止める。途中、白い泡(炭酸成分)が浮いてきたら丁寧に取り除く。

「水で洗った黒豆を温め直すために行う作業です。炭酸の成分を除き、水分をほどよく抜くことで、シロップがより染みやすくなります」

6.シロップに黒豆を加える。10分煮て冷ますを3~4回繰り返す

4のシロップを中火にかけ煮立たせる。5の黒豆はそっとザルに上げて、熱いうちにシロップの鍋に静かに入れる。ザルが熱いので、持つときにふきんやミトンなどを使うとよい(上写真はやっとこを使用)。

「シロップと黒豆はどちらも温めた状態で合わせることで、豆の皮が破けにくくなります。熱いのでやけどに注意して行いましょう。初心者はシロップの火をいったん止めてから、黒豆を入れてもOKです」
弱火にして、白い泡が浮いてきたら除く。泡が落ち着いてきたら、豆が空気に触れないように厚手のキッチンペーパーに1か所空気穴をあけ、鍋にかぶせてフタにする。10分ほど煮たら火を止めて、粗熱がとれるまでそのままおく。これを3~4回繰り返して、好みの甘さになればよい。

「実は黒豆に味を含ませるために重要なことは、煮る時間は重要ではなく『温めて冷ます』こと。ちなみにシロップと豆を合わせてからは、いくら煮ても豆はやわらかくなりません(浸透圧の関係)」
できればひと晩おいて、さらに10分煮て冷ます作業を2~3回行うとよい。

「2日間にまたいで煮ると、味がよく染みるのでおすすめです。煮て冷ます回数が多いほど、シロップが煮詰まって甘みが強くなります。私の店ではシロップの量が1/2~1/3に減るまで煮詰めます」
好みの甘さまで煮詰めたら、仕上げに中火にかけてフツフツ煮立ってきたら、しょうゆを加えて火を止める。そのまま冷ませば完成。

「しょうゆを加えることで、キリッと締まった甘さに仕上がります」

豆の味がふわっと香る上品なおいしさに感激

食べてみるとふっくら、ほっくり、皮までやわらか。今まで食べた黒豆の蜜煮は甘さが勝るばかりでしたが、この黒豆はすっきりとした上品な甘み。さらっとした舌触りのあと豆本来の風味がふわっと広がり、いくらでも食べられます!

熱々のときより冷めたほうが、ねっとり感が出て味が締まっていく気がします。ハレの日にふさわしい、手をかける価値のあるプロのレシピ。ぜひお試しあれ!

【保存方法①】冷蔵保存で7日間

汁ごと清潔な保存容器に入れ、表面にラップをかける。または密閉袋に入れ、空気を抜く。どちらも冷蔵庫に入れ、7日ほど保存可能。

【保存方法②】煮沸した保存瓶で半年間

煮沸消毒した保存瓶に黒豆を入れ、黒豆がかぶるくらいまで煮汁を注ぐ。鍋に水と瓶を入れて、フタ(煮沸消毒済み)を少しずらしてかぶせる。中火で5分ほど煮立たせたら火を止め、フタをして取り出し、そのまま冷ます。半年ほど冷蔵庫で保存可能。
左は北海道産の黒豆、右は篠山産の丹波黒豆

【番外編】もっとくわしく知りたい! 黒豆のあれこれQ&A

Q:黒豆の選び方は?

A:産地の違い、新豆・ひね豆の違いで選ぶといいでしょう。

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