ライター : dressing

洋菓子研究家が伝授! 最高においしい「バタークッキー」の作り方

この記事は、豊かなフードライフを演出するWEBメディア「dressing」の提供でお送りします。
お菓子作りの基本となる「クッキー」。シンプルな材料を混ぜて焼くだけの手軽さから、読者のみなさんも一度は作ったことがあるのでは? でも実は、レシピ本にはあまり書かれていない「プロならではのコツ」があったのです! それを実践するだけで、いつものクッキーが何倍も何十倍もおいしくなるのです。
今回は、プロのクッキーレシピを教わるべく、新妻グルメライター植木祐梨子が、洋菓子研究家・たけだかおる先生に弟子入り。 たけだ先生主宰の予約がとれないお菓子教室に参加して、とっておきのレシピを教わってきました!
●祐梨子 「先生〜! 今度、夫のお友達の家に遊びに行くことになったんです。手作りのお菓子を持っていきたくて、ササッと作れそうなクッキーを作ろうかなと思って♪」 ●先生 「いいですね! クッキーなら大人数でも分けやすいですし、手土産にはぴったりですね」 ●祐梨子 「はい♪ でもクッキーって作り方は簡単だけど、固くなってしまったり、風味が弱かったり。レシピ通りに作ったつもりでも、その時々で仕上がりが変わることが多いんですよね…」
●先生 「うーん。それはもしかしたら、バターを泡立て器ですり混ぜすぎたり、生地を触りすぎたりすることが原因かも」 ●祐梨子 「え!? “バターは泡立て器でしっかりとすり混ぜましょう”って、レシピ本によく書いてありますよね?」 ●先生 「たしかに、すり混ぜることで空気が入って食感がよくなるというメリットもあります。でも混ぜすぎると、空気を抱き込んでサクっと口どけがよくなることと引き換えに、バターの味がダイレクトに伝わらず、風味を感じにくくなることもあるんです」 ●祐梨子 「それは知らなかったです! どうすれば、バターの香りを残しつつ、サクサクの食感に仕上げることができるのでしょう?」 ●先生 「サクサクでバターの香りたっぷりのクッキーを作るためには、守ってほしいポイントがいくつかあります! さっそく説明していきますね」 ●祐梨子 「はい、よろしくお願いします!」

押さえておきたいポイント3つ

1.冷たいバターを使うこと! 2.小麦粉にアーモンドパウダーを加えること! 3.クッキー生地を触りすぎないこと!

[point1]冷たいバターを使うこと!

●祐梨子 「先生、冷たいバターを使うとはどういうことでしょうか? いつもクッキーを作るときは、常温に戻したバターを白っぽくなるまで泡立ててから、粉や砂糖と混ぜ合わせていたのですが……」 ●先生 「その方法も間違いではありませんが、バターの風味をより感じるためには“冷たいバター”を使うのがオススメです! たしかに、常温にしてゆるめたバターをすり混ぜて空気を抱き込むと、クッキーは口どけの良いサクサク食感になりやすいです。でも空気を含ませた分、バターの香りがダイレクトに伝わらなくなってしまうんですよ」 ●祐梨子 「バター自体に空気を含ませると、風味が弱くなってしまうんですね。でも、冷たいままのバターは固いので、他の材料とうまく混ぜ合わせることができないですよね?」 ●先生 「はい。そこでオススメなのが、 “フードプロセッサーを使うこと”なんです!」 ●祐梨子 「なるほど! フードプロセッサーなら、冷たいままのバターでも、撹拌(かくはん)することで他の材料と混ぜることができますね」 ●先生 「そのとおり! 泡立て器の場合は、ゆるめたバターを混ぜることで空気が入ってしまいます。でも、フードプロセッサーなら冷たいままのバターを撹拌できるので、バター自体に空気を含ませることなく、クッキー生地が作れるんです」 ●祐梨子 「ゆるめたバターを混ぜるか、冷たいバターを混ぜるか、その違いで空気の入り方が変わって、クッキーの風味に違いが出てくるということですね」 ●先生 「そういうこと! バターの味を強調させたい場合は、なるべく空気を抱き込まないようにするのがポイントなんです。 フードプロセッサーを持っていない場合は、泡立て器ではなくゴムベラを使いましょう。その場合、バターは”芯がない状態“くらいのゆるさに留め、溶けるほどゆるめないように注意しましょうね」

[point2]小麦粉にアーモンドパウダーを加えること!

●先生 「さて、バターをきちんと冷やしたところで、粉と砂糖を混ぜ合わせていきます。ここでポイントとなるのが、粉を2種類入れること。小麦粉のほかに、アーモンドパウダーも合わせて加えましょう」 ●祐梨子 「たしかに、アーモンドパウダーを入れたら、ナッツの香ばしい風味が加わっておいしくなりそう!」 ●先生 「そうなんです。さらに、アーモンドパウダーには油分が含まれているため、焼き上がりの生地が固くなりにくく、サクホロ食感になる効果もあるんです」 ●祐梨子 「味も食感も良くなるとは、まさに一石二鳥ですね!」 ●先生 「ちなみにアーモンドパウダーには、“皮付き”と“皮なし”があります。どちらの種類を使うかはお好みですが、今回はバターの香りを引き立てたいので、“皮なし”を使いましょう」

[point3]クッキー生地を触りすぎないこと!

●先生 「さて、ここからは一番重要なポイント! サクホロ食感のクッキーを作るために大切な“クッキー生地のまとめ方”について解説しようと思います」 ●祐梨子 「生地のまとめ方? バターと粉類を合わせてひと塊にするだけなのに、コツがあるのでしょうか?」 ●先生 「意外かもしれませんが、クッキーが固くなってしまったり、風味が落ちてしまう一番の原因は、“生地の触りすぎ”にあるの。 バターと砂糖、粉類を合わせてから、きっちりまとめようとボウルの中で何度も生地を触る人が多いのですが、触りすぎるとバターが溶けて分離してしまうんです。バターの構造上、一度完全に溶けてしまうと、いくら冷やしても元の形状には戻りません。 なので、バターと粉類を合わせるときは軽くまとめる程度に留めておきましょう」 ●祐梨子 「“軽くまとめる程度”とは、どのくらいの状態でしょうか?」
●先生 「フードプロセッサーに入れて攪拌していると、バターと粉が混ざり合って全体が黄色くなってきます。そのまま攪拌し続けると、写真のようにゴロゴロッとした大きな塊ができてくるので、その状態になったらラップに取り出してひとまとめにしていきましょう」
●祐梨子 「なるほど! ある程度固まってきたら取り出して、あまり触りすぎないよう“カタチを整える”くらいのイメージで生地を完成させていくんですね」 ●先生 「そういうこと! フードプロセッサーで生地をまとめて、成形しながらさらに手でまとめて……と繰り返してしまうと、つい触りすぎてしまうので注意してくださいね」 ●祐梨子 「たしかに、型を抜いて…まとめなおして…と繰り返していると、クッキー生地はどんどん柔らかくなりますよね。手の温度でバターが溶けてしまったことが原因だったんですね」 ●先生 「それもありますね。あとは、何度もまとめなおした生地は、焼き上がりが固くなってしまうの。それは生地を触りすぎることでグルテンができてしまうからなんです」 ●祐梨子 「なるほど! カチカチの固いクッキーができる理由は、そこにあったんですね!」

クッキーの輪郭をハッキリとさせるには?

●祐梨子 「先生、もうひとつ質問があります! きれいに成形したつもりでも、いざ焼いてみるとオーブンの中で生地が広がってしまって、形が崩れてしまうことがあるんです。これにも原因があるのでしょうか?」 ●先生 「もちろん、お菓子作りの失敗には必ず理由があります。形が崩れてしまう原因は、生地内のバターの状態が関係しているの。でも実は、それもフードプロセッサーで解決できますよ!」
●祐梨子 「フードプロセッサーを使うメリットは、バターに空気を抱き込ませないことだけじゃなかったんですね!? フードプロセッサーがクッキーの形にどう影響するのでしょう?」 ●先生 「焼いているときに形が崩れるのは、オーブンの中で生地が焼き固まる前に、バターが溶けてだれてしまうことが原因なの。 でも、先ほど説明したとおり、フードプロセッサーなら“バターが冷たい状態”をキープしたまま、クッキー生地を作ることができます。生地内のバターが冷え固まった状態なら、オーブンの中で生地がだれるタイミングを遅らせることができるんです。この写真を見れば、違いがわかるかしら?」
●祐梨子 「本当だ! 左はクッキーの輪郭がぼやけているけれど、右はハッキリしていて綺麗!」 ●先生 「生地内のバターが冷たければ、形が崩れる前に焼き固まるので、シャープな輪郭をキープしやすくなる、というわけです」 ●祐梨子 「オーブンに入れるときのバターの状態で、こんなにも違いが出るんですね」 ●先生 「そして、その効果をさらに高めてくれる簡単なテクニックがもうひとつ。焼き上げる前に、冷凍庫で2時間ほど生地を冷やしておくんです」
●祐梨子 「え~! 冷凍するだけで、こんなに差が出るんですね!」 ●先生 「先ほどの原理と同様、常温のままの生地をオーブンに入れるよりも、冷凍して冷やした生地の方が、バターが溶けて生地がだれるタイミングを遅らせることができるからです」
●先生 「ちなみに、焼くときは通常のクッキングシートではなく、メッシュ素材のシートを使っています! 私が愛用しているのは“シルパン”というもの。仕上がりのレベルがぐんと上がりますよ。 メッシュ素材のおかげで油分が下に抜けやすくなって、よりサクサクに焼き上がるんです。また、クッキー生地が横に広がるのを抑えてくれる効果もあります。プロも使っている製菓道具なのですが、洗って繰り返し使えるので経済的でもありますよ」

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