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漬けこみ術で魚料理をもっと簡単に!
この記事は、三越伊勢丹が運営する、食メディア「FOODIE」の提供でお送りします。
手間がかかる、下処理が大変、匂いが残る……。家庭で日常的に魚料理を作るのは、少々ハードルの高さを感じてしまいますよね。もっと簡単に、おいしくお魚を楽しみたい!
そんな願いを叶える「魔法」こそ、古くから伝わる日本人の知恵、「漬け込み」なのです。フレッシュマーケット内の生鮮魚介類専門<東信水産>近藤小百合シェフに、「漬け」のテクニックを伝授していただきました。
短時間で旨みがアップする「幽庵漬け」
「『漬け込み』とはもともと傷みやすい魚を保存するために発達した技術ですが、それだけではありません。タレに漬けることによって、魚本来の風味と旨みがぐんとアップするんです」
近藤シェフは漬け込みのパワーをそう話します。中でも今回教えてくれるのは、江戸時代に考案された伝統的な製法「幽庵漬け」です。
「『幽庵漬け』の特長は、どの家庭にもある醤油、酒、みりんでできることです。他の漬け込みとは異なり、長時間熟成は厳禁。醤油で身が硬くなりますし、なによりしょっぱくなってしまいます。短い時間で効率的に味をしみ込ませて、魚の旨みを引き出すのです」
魚種を選ばないのも「幽庵漬け」のポイント。例えば秋なら鮭を使ったり、冬ならブリなどもおすすめ。季節の旬の魚で楽しめるオールラウンダーなのです。今回は青魚のサワラの切り身で実践してもらいました。
POINT①:最初の「塩」こそ、漬け込みの命!
タレに漬ける前に、まずは魚の下処理。切り身の皮目に塩をまんべんなく振りかけて30分おきます。この下処理こそ、実は漬け込みをするうえで一番大切なポイントなのだそう。
「塩をかけることで、皮目にある臭みやえぐみが水分として外に出てきます。このひと手間を加えるだけで、見違えるほど上品な味になりますよ」
さらに、組織にある水分を吸い取ることで、漬けダレがしみ込みやすくなるという利点もあるそうです。30分後、切り身から出てきた水分をキッチンペーパーで拭き取ればできあがり。これくらい簡単なら、負担を感じずに取り入れられそうです。
POINT②:黄金比のタレで集中的に漬ける
続いて、料理バットに漬けダレを用意します。醤油、みりん、酒の配合はすべて同じ1:1:1と、間違えようのないほどシンプル。そこに下処理を終えた切り身を漬け込むのですが、ここでのポイントは魚の脂。
「脂ののり具合によって時間を調節します。脂ののった魚なら1時間、さっぱりとした魚は30分ほどが目安でしょうか。繰り返しますが、『漬け込みすぎない』ように意識しましょう」
漬けダレの量は切り身が少し浸かる程度でOK。漬け込み中に1〜2回上下を返したり、ラップをかぶせると満遍なくタレを行き渡らせることができます。香り付けに輪切りにしたかぼすを浮かべれば、それだけでさっぱりとしておいしそう。季節によって柚子やレモンでも代用可能です。
「この漬けダレは本当に万能なので、作りすぎたら『マグロの漬け』など別の料理にも活用できます。とはいえ、一度漬け込んだ後のタレには魚の風味がしみついてしまいます。魚にはそれぞれの風味があるので、異なる魚種を同時に漬け込む時はバットを分けてくださいね」
POINT③:おいしい「焼き」は、焦がさず、触らず
漬け込みが完了したら、いよいよ「焼き」の工程へ。
「漬け込みと同じで、『やりすぎない』ことが大切。魚は肉よりも火が通りやすいので、焼き過ぎるとぱさぱさに。さらに醤油とみりんなので、火が強いとすぐに焦げ付いてしまいますよ」
オーブンなら220度で10〜13分、魚焼きグリルなら中火で焼き色が付く程度が目安です。※家庭のオーブンにより異なりますので、あくまでも目安です。
「魚の身は繊維がとても弱いので、焼きの途中は基本的には触りません。片面グリルの場合のみ、1回だけ返すようにしてください。焼き上がりの直前にハケで漬けダレを一塗りすれば、おいしそうな照りがうまれます」
付け合わせには、漬けダレを塗って切り身と一緒に焼いた季節の野菜を用意。爽やかな柑橘の香りとともに、「幽庵焼き」のできあがりです。
ひと口食べてみると……ほくほくした柔らかさと、しっかり付いた甘辛な味、心地よい清涼感にびっくり。これはまさに、お店の味です!
「さらに、魚を1度漬け込めば保存も効きますし、密閉の保存袋などに入れて冷凍庫で保存すれば、解凍せずにそのまま焼くことができます。魚の味を引き出して、保存もしやすい。『漬け込み』はいいこと尽くめの調理方法なのです」
魚種にかかわらず、気軽に実践できる今回の「幽庵漬け」。皆さんもぜひお試しください。
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