ライター : 馬原 香織

料理家/料理教室主宰/調理師

「ひと煮立ち」とはどのような意味?

「ひと煮立ち(ひとにたち)」とは、汁物や煮物などを一度沸騰させ、ひと呼吸置いたら火を止めること。

煮汁が沸騰することを「煮立つ」と表現し、ボコボコと泡が出る状態まで火にかけます。煮立ったら、その状態でひと呼吸(約30秒)待ち、火を止めましょう。この工程が「ひと煮立ち」です。

ただし、30秒はあくまでも目安。火の通りが早い葉物野菜や、加熱しすぎると分離する牛乳、生クリーム入りのソースを「ひと煮立ち」させるときは、ひと呼吸の時間を短めにするとよいでしょう。様子を見ておこなってくださいね。

ひと煮立ちする理由は?料理別に解説

味噌汁

長時間沸騰させると、味噌の風味がとび、味が落ちてしまう味噌汁。そのため、具材に火を通しておき、最後に味噌を加えるようにします。

味噌を加えたら、「ひと煮立ち」させ、火を止めるのが基本の作り方。「ひと煮立ち」させて作る味噌汁は、味噌の風味がまろやかに感じられますよ。

肉じゃが

肉じゃがのような煮物は、煮込んでいる途中で具材を追加すると鍋の温度が下がります。一旦火を強める際に「ひと煮立ち」させることで鍋の温度を上げることができますよ。「ひと煮立ち」したあとは、火を弱めてコトコト煮込みましょう。

また、仕上げに「ひと煮立ち」させると具材に味が染み込みます。青菜やさやいんげんのような色が変色しやすい具材は、鍋に加えてさっと「ひと煮立ち」するだけで十分。長時間煮込間ないことが、彩りよく鮮やかに仕上げるポイントです。

麻婆豆腐

仕上げに水溶き片栗粉でとろみをつける麻婆豆腐にも、「ひと煮立ち」が有効です。水溶き片栗粉を加えると鍋の温度が下がるため、沸騰するまで加熱します。「ひと煮立ち」させることでとろみが安定するのです。

時間が経ってもとろみが水っぽくならないので、見栄えのよい麻婆豆腐に仕上がりますよ。

「ひと煮立ち」の基本のやり方

「ひと煮立ち」させるときは、最初から中火にかけるのが基本です。蓋はせず、沸騰するまで中火で加熱し、沸騰後30秒ほど加熱を続けます。

具材を追加して温度が下がってしまった場合は一旦強火にしてもよいですが、ある程度温まったら沸騰前に中火に戻しましょう。

煮汁にアルコールを含む場合は、「ひと煮立ち」する前に十分加熱しておくことがポイント。「ひと煮立ちだけ」ではアルコールが飛びきらない可能性があるので、先にしっかり加熱しておきましょう。

電子レンジで「ひと煮立ち」はできる?

味を染み込ませたり、とろみを閉じ込めたりする効果のあるひと煮立ちは、電子レンジにはややむずしい工程かもしれません。

食材や料理により火の通りが異なるため、ひと煮立ちしている間は様子を見ながら調整が必要になってきます。そのため、電子レンジ任せにすると、加熱しすぎたり逆に加熱が足りなかったりして、ひと煮立ちの効果が得られない可能性があるのです。

レシピにひと煮立ちの工程が記載されている場合は、目視で確認しながらおこなうようにしましょう。

編集部のおすすめ