ライター : macaroni 編集部

3月の手仕事:土鍋の活用【神谷よしえさんの12カ月の手仕事 #9】

Photo by 渡邊康昭/UP inc.

寒い冬のあいだ、鍋や煮物料理でお世話になった土鍋をそろそろ片付けようとしている方も多いのではないでしょうか。でもそれは、少し早すぎるかもしれません。土鍋は保温性が高く、一度熱を加えておけば放って置くだけで味が染み込みおいしく仕上がる調理器です。早々としまってしまうのは、もったいないですよ。

毎月、生活の知恵ともいえる手仕事と季節のレシピを教えてくださっているフードアドバイザーの神谷よしえさんは、「慌ただしい季節こそ土鍋をフル活用しましょう」と提案します。そこで連載の9回目は、土鍋の遠赤外線効果を活用して素材の旨味を凝縮させたレシピをご紹介します。

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フードアドバイザー・調味料ソムリエプロ/神谷よしえさん 大分県宇佐市出身。伝承料理研究家の母が設立した台所だけの建物「生活工房とうがらし」を継承。「ごはんはエール」をテーマに人と人を繋ぎ、産地と料理人を繋ぐ活動や国内外でおにぎりや調味料の講演やセミナーなどをおこなっている。趣味はおにぎりを握ること
「春風が心地よい日も増えましたが、朝晩は冷え込むことも多く、身体を温める料理がまだまだ必要な季節です。土鍋には具材にしっかり熱を通し温めてくれる遠赤外線効果があるので、これを活用しない手はありません。

じつは土鍋は、究極の時短アイテム。余熱だけで調理をするので素材の旨味を最大限に引き出せます。コトコト煮詰めることもなくほったらかしにしておくだけなので、具材が煮崩れる心配もなく簡単に調理できるんです」

土鍋料理は新聞紙×バスタオルでほったらかし

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「土鍋と新聞紙、バスタオルの組み合わせは、考えた人は天才だと思うほど最強です。具材を入れた土鍋をひと煮立ちさせて、新聞紙とバスタオルに包むだけで簡単に素材にしっかり味を染みこませることができますよ。

火にかけるのは沸騰させるまでなので、正味10分程度。包み込む新聞紙の量は約1日分(4~5枚)で充分です。まずは新聞紙で、しっかりと土鍋を包みましょう」

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「新聞紙の上からバスタオルで包み、半日ほどほったらかしにしておけば味が染み込みます。

例えば、土鍋でおでんを作ると、半日でだしの色味がしっかりついた大根や卵に仕上げることができますよ。土鍋をそのまま食卓に出せば、いつまでも冷めることなくあつあつの料理を楽しめるのもうれしいですね。ただし、加熱する時間は土鍋の大きさや火加減によって異なるので注意してくださいね」

ほったらかし調理の極み。春野菜の土鍋蒸し

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調理時間:10分(※ほったらかしの時間を除く)

「土鍋にお好みの野菜を入れてひと煮立ちさせたら放置するだけ――という、これぞほったらかし料理の極みともいえるレシピです。野菜の水分を活かして蒸し煮にすることで、素材の栄養分と甘さをたっぷり味わうことができますよ。

根菜から順に入れることで火が通りやすくなり、ホクホクの蒸し野菜がいただけます。ドレッシングやポン酢、ごまだれ、お好みの味付けで味わってください」

材料(2〜4人分)

・春キャベツ……適宜
・玉ねぎ……適宜
・菜の花……適宜
・さやえんどう……適宜
・グリーンピース……適宜
・マッシュルーム(お好みのきのこ)……適宜
・酒または白ワイン……大さじ2杯
・水またはスープ……200cc

作り方

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1. 野菜をひと口大の大きさに切り分ける

2. 1を土鍋に並べ、酒と水を静かに加える

3. 中火でひと煮立ちさせたら火からおろし、新聞紙で包む

4. 3の上からバスタオルに包み、数時間〜半日ほど放置する

旨味と香りがたっぷりごはんに染みる。鯛めし

Photo by 渡邊康昭/UP inc.

調理時間:40分

「次に紹介するのは、土鍋を使った鯛めしのレシピです。放置する時間は必要ありませんが、鯛は春が旬なので、ぜひ土鍋をしまう前にいただきたいですね。鯛は大きい切り身がなければお刺身やアラでもOK。骨に気を付ければ御頭部分も使えます。

おこげを作る場合は、うっすら焦げた匂いが漂ってきたら火を止めましょう。ねぎや香味野菜との相性もよいので、お好みで合わせてください。

鯛は干物を使うと、だしの旨味と風味が利いてパエリアのように仕上がります。塩加減を気にせずそのまま使ってもおいしいですよ」

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