ライター : macaroni トレンド

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東京肉レポート TOKYO WAGYU REPORT
食べ歩きをはじめて10年以上、外食で年間250食の肉を食す生粋のマニア。東京を中心に全国各地を飛び回り、これまでに訪れたお店は1,000店舗以上。ひたすら旨い牛肉を追い求める肉食系ウェブサイトとインスタグラムを運営。

1. 専門店が急増。進化系ハンバーグ

Photo by china0515

「ハンバーグってもともと家庭料理のイメージが強いと思うのですが、最近は専門店が急増しています。その先駆けともいえる『挽肉と米』は吉祥寺や渋谷に系列店を展開していますし、肉割烹のお店がハンバーグをメニューのひとつに入れるパターンも増えていますね。家で簡単に本格的な味が楽しめるお取り寄せ商品としての売上も伸びているようです。

目の前で炭火焼きしたり、上質な挽肉を使用したり、中をレアに仕上げるなどの特別感があることが進化系ハンバーグの特徴です。それから、提供するタイミングに合わせて土鍋で炊き上げたり、厳選されたブランド米を使用し“ごはん” にこだわる店も多いですね。」

進化系ハンバーグ専門店の記事はこちら▼

2. 本格派お取り寄せ/デリバリー

Photo by TOKYO WAGYU REPORT

「ここ2年、お取り寄せの需要が高まっています。とくに “おうち贅沢” に最適な肉にはその傾向が顕著にあらわれており、売上が2019年の3〜5倍に達する店舗も少なくありません。

私自身も、焼肉の名店の味を自宅で楽しめるお取り寄せサービス「おうちで和牛」を運営しているのですが、コロナ禍になってから新たに参入しはじめたところも多く、有名焼肉店や卸売業者もそのひとつと言えます。同時に販売プラットフォームの強化もすすみ、上質な肉が一般の消費者向けに流通するようになりました。

肉のお取り寄せといってもしぐれ煮や冷凍の切り落としなど、保存がきいて端切れでも成り立つ商品が多かったですが、最近はきちんとした部位を使い、家で料理を完結させるキット式の商品が増えたと思います。本来ならば、お店に行かないと食べられない高級肉割烹店のしゃぶしゃぶなども販売されていましたね」

3. ノスタルジックな町焼肉

「ここ数年ブームだった、うにやトリュフなど豪華食材と肉を掛け合わせたり、霜降りがつよい和牛の部位を好んで提供する、いわゆる高級焼肉に飽きてしまった人たちが世の中に一定数います。そのなかで再注目されているのが町焼肉。きっと昭和の文化に回帰する町中華やレトロスイーツブームと重なるところがあるんでしょうね。

町焼肉の定義は、ザックリ言うと古くから地元で愛されている焼肉店。昔からの営業で培った独自の仕入ルートがあるのでいい肉をリーズナブルに食べられたり、オリジナルの味付けのたれが楽しめたりするのが人気の秘密です。

銘柄牛や血統にこだわっていなくとも、肉の扱い方や味付けの技術が高いのでおいしい焼肉に出会えることが多いんです。なぜか、店のお母さんのクセが強いパターンも多くて、それもその店の魅力だったりします(笑)」

4. 異業種参戦型コラボ焼肉

「ここのところ、焼肉屋の間でコラボレーションが増えているんです。焼肉屋×焼肉屋、焼肉屋×インフルエンサー、焼肉屋×生産者と、大きく分けると3つほどのパターンがありますね。

焼肉屋×焼肉屋同士であれば、お互いの看板メニューを交互に出すような特別コースを作り、インフルエンサータッグなら、食べ手側の理想を叶えるようなコース、生産者コラボの場合は “その生産者が育てた個体に限定した” のコースを提供したり。それぞれコロナの影響で売上が落ち込んでしまった業界を盛り上げるためのコンテンツとして流行している、という背景があります」

5. 和牛のサステナビリティ/アニマルウェルフェア

「焼肉屋や生産者の間でも、できるだけ牛や環境に負担をかけない育て方や無駄の出ないような食べ方に重きが置かれはじめています。いらないホルモン剤は排除されたり、育てる環境の見直しがおこなわれたり。

とくに話題にあがってきているのは、子どもの出産を終えたお母さん牛(経産牛)について。経産牛はどうしても肉質が硬くなってしまうため、これまでは有効に扱われないことが多かったんですよね。最近は出産後に肉として流通できるような飼育方法が取り入れられつつあり、そういった牛は “サステナブル和牛” ともいわれています」

今後の肉業界にも注目

進化系ハンバーグ、お取り寄せの発展、昭和レトロな焼肉の再熱、業界を盛り上げるコラボレーション、見直される和牛の飼育……。

お話を聞いたうえで感じたのは、いずれの肉文化も原点回帰をしつつ、しかるべきところは進化しているということでした。昨今は肉文化が嫌煙される風潮もありますが、サステナビリティが進む世の中で、肉業界はどう発展していくのか。双方において最良の形がとれる形を願い、注目していきたいですね。

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取材・文/倉持美香(macaroni 編集部)
※掲載情報は記事制作時点のもので、現在の情報と異なる場合があります。

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