ライター : macaroni 編集部

秋の味覚の王様「いくら」

Photo by さねしげかおり

いくらの旬はちょうど10月から11月の秋時期。生のすじこが市場に出はじめたら、いくらの醤油漬けにして新米と一緒に旬の味を堪能したいですよね。

しかし、いざいくらの醤油漬けを作ろうと調べてみると、かなり手間のかかりそうなレシピが多く出てきます。そこで、失敗せずにおいしい醤油漬けレシピを探るべく、築地の人気和食店・魚河岸三代目 千秋(うおがしさんだいめ ちあき)さんにお話を伺ってきました。

教えてくれた人

魚河岸三代目 千秋 料理長/鎌田規広さん
北海道出身。幼い頃から道産の魚を食べて育つ。和食料理店で約10年修業したのち魚河岸三代目 千秋へ入店。目利きの技術は素晴らしく、同業者から一目を置かれるほど。毎日市場へ通いながら、その日のおいしさを見極めお客さまに最高の形で届けている。

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魚河岸三代目 千秋は2004年にオープンした魚料理店。築地を舞台にしたグルメ漫画『築地魚河岸三代目』(小学館)を監修する小川貢一さんが、同漫画内に登場する小料理屋『ちあき』をモデルにして立ち上げました。漫画内に登場するグルメも堪能できるとあって、ファンの方々の聖地になっているお店なんです。

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そんな人気店をオープン当初から支えているのが、鎌田規広さん。確かな目利き力で手に入れた新鮮な魚を使って、日々おいしい魚料理を作り続けています。

おいしいいくらの醤油漬けを作るなら今

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いくらの醤油漬けは、コツをつかめば意外と簡単です。一般の方がよく失敗するポイントは、すじこの膜から卵を取るとき。指で卵をつぶしてしまう人が多いのですが、じつは力はそれほどいりません。

熱めのお湯のなかで作業すれば、温度で膜が縮むので自ずと卵が取れます。金網を使う人もいますが、やさしく素早く取れるのはやっぱり指ですね」

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「いくらの食べときはまさに今。11月まで旬とはいわれますが、産卵が近くなった鮭から獲れる卵は皮が厚くなり、食べると若干硬く皮が口に残ります。いわゆるピンポン玉と呼ばれる状態です。

価格帯は比較的安いのですが、おいしく食べるなら市場に出はじめた頃のすじこがいいでしょう。ぜひ今のおいしさを堪能してみてください」

1. 新鮮なすじこを手に入れる

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新鮮なすじこを見分けるには、卵のツヤ感やひと粒ずつのハリに注目してみてください。何よりも見た目がキレイな食材は間違いなくおいしいです。

私たち料理人は見た目が悪くてもおいしい食材を見極められるよう目利きの技術を磨きますが、一般の方はいくつか見比べて一番美しいすじこを選ぶことをおすすめします。あとは、鮮度が落ちないよう購入したその日に調理するのが鉄則です」

2. すじこをほぐす

湯の中でほぐし、卵をバラす

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「すじこをお湯のなかでほぐすには、熱めの温塩水を用意するのがポイントです。なぜかというと、水温が低いとすじこの膜がうまく縮まらないから。ぬるいお湯でスタートすると、冷たいすじこを入れた瞬間に水温が下がり、卵が取りにくくなってしまうんです。

用意する温塩水の水温は50度強を目安に。温度計を持っていない人は、手を入れたときにお風呂より少し熱いくらいの温度を目指してみてください。塩を入れると仕上がりが鮮やかになりますので、1リットルあたり大さじ1杯の塩を加えましょう。今回は2リットルの温塩水を用意しました」

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「すじこは膜があるほうを下(膜が裂けている部分を上)にして温塩水に浸けます。卵を取る際は、しごくというより摘まむようにするとつぶれにくいうえに効率よく外せますよ。水温で膜が縮み、勝手に卵が外れるのでやさしく作業することが大事。

いくら熱めのお湯を用意していも、すじこ自体が冷たいのでどんどんお湯の温度が下がります。生ものは鮮度が命なので、“作業は手早く丁寧に”が基本です」

薄皮を取り除き、ザルにあげる

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「すじこの膜から卵をすべて取り外せたら、一度汚れたお湯を捨てます。次に水道水を加え軽く洗い流しましょう。やさしくかき混ぜると、つぶれてしまった卵は上に浮いてくるので、手で取りのぞいてください。この作業は何度も繰り返す必要はありません。完了したらザルにあげます。

先ほどまでお湯につけていたので、卵は若干白っぽくなっていますが心配しなくても大丈夫。このあと、冷たい塩水に浸けると、鮮やかな色に戻ります」

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水切りしたてのいくら。お湯で作業していた分、少し白っぽく濁った見た目をしている。

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