連載

さわやかに香るハーブ「ディル」を使った、初夏の異国風レシピ。

季節に合わせたハーブとスパイスの使い方を提案する連載の第3回。今回は、さわやかな香りが特徴のハーブ「ディル」を取り上げます。鎮静作用や安眠効果にすぐれた、魚との相性がよいハーブ。涼しげな初夏のレシピとともに紹介します。

なだめる効果をもつハーブ「ディル」

初夏におすすめしたいハーブといえば、さわやかな香りが魅力の「ディル」。
和名で「イノンド」と呼ばれるディルは、セリ科の一年草。地中海沿岸から西アジアにかけてが原産地と言われています。

ディルという名の語源は、北欧の古代の言葉で「鎮める、なだめる」という意味の「ディラ」に由来していて、その名のとおり鎮静作用や安眠効果に優れたハーブとして、古くから親しまれてきました。

紀元前5000年頃から生活に用いられてきたディルは、新約聖書によると税金の代用となるほど重宝されていたと記されているほか、中世のヨーロッパでは、魔よけやまじないの材料としても使われていたのだそうです。

ディルの特徴と使い方

ふわふわと羽のように柔らかく繊細な葉をもつディル。鮮やかな緑色は、料理に添えるとひときわ引き立ちます。

ディルとフェンネルの違い

ディルは、見た目も料理の用途もフェンネルとよく似ています。

フェンネルはディルに対して、根の近くに白く大きな茎をもち、味わいも独特の強い甘みが感じられるというところが大きな違いです。

ディルは葉先のみが店頭に並んでいますが、フェンネルは白く大きな茎のついたまま販売されているのを多く見かけます。

また、フェンネルよりもディルの方が、一般的には手に入りやすいかもしれません。

葉は魚料理に、種子はカレーやピクルスに

さわやかなディルの葉の香りは魚との相性がよく、欧米では「魚のハーブ」と呼ばれるほど魚料理に欠かせない存在です。

また、さわやかさのなかに辛味も感じられる種子は、カレーやピクルスのスパイスとしても用いられています。

そんなディルを使った、ふたつの異国風レシピをご紹介します。

白身魚とディルと夏みかんのマリネ風

はじめて魚とディルの組み合わさったものを食べたのは、フィンランドを旅したとき。

寒くて寒くて、背負っていた荷物も重くて、心が折れそうになりながら入ったカフェのようなレストランのようなどちらとも言えない店で注文したサンドイッチの中身が、酸味の効いたサーモンとディルのペーストでした。

翌朝、いつまでたっても姿を現さない太陽を諦めて、心もとない灯りに照らされた薄暗い道を歩いて歩いて辿り着いた港のマーケットで、にしんのような魚にディルとクリームチーズの添えられたものとライ麦パンと思われる茶色のどっしりとしたパンを買って、その場でお腹に満たし、寒さで硬まっていた身体を温めたのを憶えています。

新緑の香るようなさわやかなマリネを食べながら、太陽の見えない時間の長さと寒さとお金のなさで途方に暮れていた、若かりし頃のフィンランド旅を憶いだす初夏。

寒くても、太陽が見えなくても、お金がなくても、お腹は減るし、食べた記憶は忘れないものだから、食べることって凄い生命力なのだなぁと、感心してしまいます。

「白身魚とディルと夏みかんのマリネ風」のレシピ

材料
・刺身用の白身魚(今回は鯛を使いました)
・夏みかん
・ディル
・塩
・オリーブオイル
作り方
1. 白身魚を食べやすい大きさに切りわけ、塩をふり、手であえ、魚に塩味をなじませる。
2. 夏みかんの実をほぐし果汁を絞りながら、塩をなじませた白身魚に加えていく。
3. ディルの葉を刻み、白身魚と夏みかんの合わさったなかに加える。
4. 全体にオリーブ油をまわしかけ、手で和え、味がなじんだら器に装う。

ズッキーニとディルとヨーグルトのブルガリア風

この料理を教えてくれたのは、ブルガリアが故郷の友人。

私が下北沢で小さな書店を営んでいた時のこと。

私のお店を気に入って、私自身のことも気にかけ、足繁く通ってくださる大学教授がいました。

彼女はブルガリアの出身で、とても美人で、すこぶる頭もよく、大きな瞳で、大声でよく笑う素敵な女性でした。

何年か前の夏のはじまりの頃、「私の故郷の味を食べてみて欲しい」と彼女が作ってきてくれたのが、揚げたズッキーニをディルとヨーグルトのソースに漬け込んだこの料理だったのです。

初めて食べたときにとても気に入ったこの料理は、今では私の夏の定番料理になりました。

「ズッキーニとディルとヨーグルトのブルガリア風 」のレシピ

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WRITER

ピリカタント 西野優

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