ライター : macaroni 編集部

11月の手仕事:古米を使って味糀(あじこうじ)作り

Photo by Yasuaki Watanabe/UP inc.

四季折々、さまざまな風景や風情が感じられる日本には、代々受け継がれる季節の手仕事があります。便利になって日常ではなかなか目にできなくなったものもありますが、こうした先人たちの知恵に今一度目を向けるのも、ひとつの季節の楽しみ方といえるでしょう。

この連載では、大分を拠点に全国の調味料や食材の魅力を発信しているフードアドバイザーの神谷よしえさんに、生活の知恵ともいえる手仕事を季節のレシピと共に教わります。

Photo by Yasuaki Watanabe/UP inc.

フードアドバイザー・調味料ソムリエプロ/神谷よしえさん 大分県宇佐市出身。伝承料理研究家の母が設立した台所だけの建物「生活工房とうがらし」を継承。「ごはんはエール」をテーマに人と人を繋ぎ、産地と料理人を繋ぐ活動や国内外でおにぎりや調味料の講演やセミナーなどをおこなっている。趣味はおにぎりを握ること
第5回のテーマは、「味糀(あじこうじ)」です。

味糀とは、温かいごはんに米糀と塩を加え、ごはんの熱で発酵させたもの。塩糀やぬか床と同じような使い方ができる、発酵食品のひとつです。そんな味糀を、神谷さんはこの季節に余りがちな古米を使って作っているそうです。

「11月は、新米を目にする機会が増えてきます。近ごろは古米も新米もそれほど味に違いはありませんが、やはり新米を見ると早く食べたくなるのが日本人の性(笑)。そこで私は、古米を味糀にして使い切るようになりました。

簡単に作れて、塩糀やぬか床に比べて扱い方が楽なのでおすすめですよ。何度も繰り返し使えますし、そうして素材の旨味がぎゅっと濃縮された味糀はみそ汁やお鍋のだしとして最後までおいしくいただけます」

古米を活用した味糀のレシピ

Photo by Yasuaki Watanabe/UP inc.

調理時間:約半日(発酵時間含む)
保存期間:冷暗所で約2週間~1カ月


「温かいごはんに米糀とお塩を加えるだけなので、発酵時間を除けば調理時間は1分ほど。とってもお手軽なんですよ!発酵時間を短くするために、少し粗熱を取った炊き立てのごはんを使うのがポイントです。

味糀はぬか床と同じように野菜を漬け込むことができますが、ぬか床と違って毎日かき混ぜなくても大丈夫。一定の温度に保つ必要もありません。

冬場は基本的には冷蔵庫に入れなくても問題ないですが、水分が出はじめたら塩分濃度が下がって傷みやすくなるので冷蔵庫で保管してくださいね」

材料(作りやすい分量)

・ごはん……320g(約1合)
・米糀……30g
・塩……70g(ごはんと米糀の約20%)

「発酵食品の人気の高まりから、米糀もスーパーで手に入れやすくなったように感じます。生タイプのものもありますが、乾燥タイプのほうが手に入れやすいですし扱いやすいでしょう。でも、どちらでも仕上がりに違いはありません。

甘味を強くしたい場合は、米糀の量を増やしてください。塩分濃度20%を守れば、失敗しないと思います。お塩は普段使っているもので大丈夫ですよ」

作り方

1. ごはんに米糀と塩を混ぜ合わせる

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チャック付きの袋やフタ付きの容器に温かいごはんを入れ、米糀と塩を加えて混ぜ合わせます。

「ごはんは温かいほうが発酵の進みがよくなります。冷やごはんを使う場合は、一度温めてから使いましょう。

ただし、ごはんが熱すぎると糀菌が死んでしまいます。粗熱を取ってから米糀を入れるようにしてくださいね」

2. 半日ほどかけて発酵させる

Photo by Yasuaki Watanabe/UP inc.

そのまま常温で半日ほど置き、発酵させたら完成です。

「30℃くらいのぬるいごはんのときは発酵が緩く進んでいる状態です。ごはんがしっかり冷めたら、発酵終わりのサイン。できあがった味糀は冷暗所で保存しましょう」

味糀の使い方

1. 野菜を漬ける

Photo by Yasuaki Watanabe/UP inc.

「私がもっともおすすめする使い方です。味糀で漬けた野菜は、ぬか漬けのように色がくすまず色鮮やか。軽く塩ゆでしたような、野菜本来の美しい色合いに仕上がります。

軽く風味を付ける程度なら、30分ほど漬け込むだけでおいしく食べられますよ。サラダ感覚で食べたいときは1時間ほど、しっかり味をつけたければ3時間ほど漬け込んでください。長めに漬け込むなら、野菜をカットしないで漬け込むほうがいいのかもしれません」

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