ライター : macaroni 編集部

10月の手仕事:マロンクリーム作り

Photo by Yasuaki Watanabe/UP inc.

四季折々、さまざまな風景や風情が感じられる日本には、代々受け継がれる季節の手仕事があります。便利になって日常ではなかなか目にできなくなったものもありますが、こうした先人たちの知恵に今一度目を向けるのも、ひとつの季節の楽しみ方といえるでしょう。

この連載では、大分を拠点に全国の調味料や食材の魅力を発信しているフードアドバイザーの神谷よしえさんに、生活の知恵ともいえる手仕事を季節のレシピと共に教わります。

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フードアドバイザー・調味料ソムリエプロ/神谷よしえさん 大分県宇佐市出身。伝承料理研究家の母が設立した台所だけの建物「生活工房とうがらし」を継承。「ごはんはエール」をテーマに人と人を繋ぎ、産地と料理人を繋ぐ活動や国内外でおにぎりや調味料の講演やセミナーなどをおこなっている。趣味はおにぎりを握ること

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神谷さんの工房の庭に育つ大きな栗の木
第4回のテーマは、「マロンクリーム」です。

実り多き秋はおいしい食べ物がたくさんありますが、栗は秋の味覚のなかでも特別な存在。この時期になると栗料理や栗スイーツをあちこちで見かけるほど、秋を代表する食材なのではないでしょうか。

神谷さんも「うちの工房の大きな栗の木には、今年もたくさん栗の実がつきました。秋の栗の木は趣があり、眺めているだけで恋しく思います」とおっしゃいます。

「栗の木を見たことがない方も、『大きな栗の木の下で』という童謡は耳にしたことがありますよね。生い茂った秋の栗の木の下はぽっかり空間が空いていて、心惹かれてつい集まってしまう。秋になるとそんな光景が歌とともに心に浮かび、栗に思いを募らせます。

栗は、縄文時代から食されてきたといわれています。上品でやさしい風味に魅せられるのは、日本人の身体の中に栗の歴史が刻まれているからかもしれません。栗の下処理は少し手間がかかりますが、拾いたての栗のおいしさは格別です。新鮮なうちに、すぐに加工するのがおすすめですよ」

濃厚なコクのある甘味!マロンクリームのレシピ

Photo by Yasuaki Watanabe/UP inc.

調理時間:30分(栗剥きの作業は除く)
保存期間:冷凍で約1カ月(しっかりと密封した状態で)


「和栗特有のこっくりとした深い味わいが楽しめるマロンクリームです。栗をペースト状に加工することで、また違った楽しみ方ができます。

栗を剥くのはなかなか手間がかかって面倒に感じるかもしれませんが、ゆでる前にひと晩以上冷凍しておくと作業がしやすくなります。また、ペースト状にしてからじっくり弱火で火をとおすことで、栗の風味が立ってまろやかに仕上がりますよ。

マロンクリームは傷みやすいため、保管は冷蔵庫で。チャック付き袋に密閉して入れるか、消毒した瓶に入れることで日持ちします。長期保存する場合は冷凍庫で保存しましょう」

材料(作りやすい分量)

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・栗……500g(正味300g)
・牛乳……100cc
・砂糖……50g
・生クリーム……20cc

「9〜10月にかけて収穫を終えたばかりの瑞々しい栗は、皮に弾力があり濃い赤褐色をしています。丸みをおび、手にとってずっしりと重く感じるものを選ぶとよいでしょう。

和栗にはさまざまな品種があり、甘さも異なります。栗の大きさや甘みをみながら、砂糖や牛乳の量は加減してくださいね。

私が個人的におすすめしているのは、鬼皮と渋皮が一緒に剥ける画期的な『ぽろたん』という品種。鬼皮に切れ目を入れて加熱するだけで、ぽろっと簡単に剥くことができるのでおすすめです。JAの直売所やスーパー、インターネットで購入できますよ」

作り方

1. 栗の皮を剥く

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栗はよく洗い、水気を切ってひと晩以上冷凍しておきます。鍋に栗全体が浸るくらいたっぷりの湯を沸かし、栗を解凍せずに30〜40分ほどゆでましょう。触れるくらいまで冷めたら、鬼皮と渋皮を剥きます。

「栗の大きさによって、ゆで時間は多少異なります。生煮えはおいしさが半減してしまうのでしっかりゆでましょう。

圧力鍋の場合は、加圧時間は約10分程度です。栗が破裂しないよう鬼皮にしっかり切れ目を入れてください。ゆで終わったらお湯が冷めるまで浸しておいたほうが、灰汁が抜けて舌触りもよくなります」

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「焼き栗を使うと、より香ばしく仕上がります。魚焼きグリルの場合は上下強火で15分くらい、オーブンなら200℃で20分くらい焼いてください。こちらも破裂防止のために、裏表共に縦に切れ目を入れましょう。

栗を剥くのがむずかしいという方は、中身をスプーンでかき出して使ってもOKです」

2. 栗の実をペースト状にする

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フードプロセッサーに、皮を剥いた栗と牛乳、砂糖を入れてペースト状にします。

「フードプロセッサーがなければ、裏ごし器で裏ごすと口当たりがよくなりますよ。甘さ控えめのレシピなので、自分好みの甘さに調整して作ってくださいね」

3. 弱火で煮詰めて、生クリームを加える

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鍋に移したら弱火でしっかりと水分を飛ばします。粘りが出たら生クリームを加えてよく混ぜ、冷ましたら完成です。

「焦げつかないよう、木べらなどで混ぜながらじっくり水分を飛ばします。ぽてっとした感じの弾力と粘り気が出たら火を止めて、粗熱が取れてから生クリームを加えましょう。

水分が飛んで煮詰まってくると、ペーストが飛び跳ねます。火傷には充分気を付けてくださいね」

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