ライター : macaroni 編集部

監修者 : 龍 慶介

てしま農園 代表

教えてくれる人

てしま農園 代表 / 龍 慶介さん
自衛隊のパイロット、大手広告出版会社と異色の経歴を経て、10年前に農業の世界へ。“植物のプロとお客様をつなぐ”をコンセプトとした『てしまの苗屋』を立ち上げる。初心者の方に植物を育てることの楽しさを伝えたいと、苗の丁寧な育成はもちろん、購入される方への説明や相談にも積極的に対応。失敗しにくい苗の販売と育成に力を注いでいる。

寒さが厳しい2月は少し趣向を変えて、「土のリサイクル方法」について教えていただきます。

新品種作りに精を出しています

Photo by てしま農園

編集部「立春を過ぎ暦上ではもう春ですが、2月といえば実際には寒さが厳しくなる月ですよね。てしま農園ではどういった作業をおこなっているんですか?」

龍さん「寒いときは植物も休眠する時期なので、土を休ませてあげる準備期間という感じですね。特にてしま農園は、一般的な農家さんとは異なり苗を作る育苗農家。なので準備期間のあいだに新品種作りもしますよ」

編集部「新品種!? 例えば、どんなものを作られているんですか?」

龍さん「最近では、『ぷちピー』という色鮮やかなカラーピーマンを作りました。色は7種類くらいあって、ピーマンを嫌う子どもでも食べられるくらい苦みが少ないんですよ。色鮮やかなので食卓が華やかになりますし、何よりカラフルで作り手としても見ていて楽しくなるんですよね」

編集部「新品種というだけで、私もワクワクしてきました。でも新品種は、前例がないぶん育てるのも大変そうですね」

龍さん「そうなんです。新品種の栽培方法をお客さまに伝えていくことも我々の使命のひとつだと考えているので、常に試行錯誤しながら、育成しているんですよ」

寒さの厳しい2月は土のメンテナンス期間

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編集部「先ほど、寒い時期は土を休ませてあげたほうがよいとおっしゃっていましたが、それはベランダ菜園でも同じでしょうか?」

龍さん「そうですね。3月には少しずつ気温が上昇し、やっと本格的なベランダ菜園シーズンが到来します。2月はそれに向けての準備期間と割り切ったほうがいいかなと思いますね。野菜を育てたい気持ちはあるとは思いますが……」

編集部「ぐっと堪える時期、ということですね(笑)。具体的にはどんなことをすればいいですか?」

龍さん「3月以降のベランダ菜園の成功の鍵は、間違いなく“土”にあります。植物は土で育つわけですから、土にはできるだけこだわってあげたほうがいいですよ。本格的なシーズンが来る前の2月こそ、土の入れ替えやメンテナンスをしっかりおこなっていくことが大切です」

“ベランダ菜園の成功”は土の良し悪しで決まる!

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龍さん「植物にとっての土は、人間でいえば“家と食事”にあたります。それくらい土は植物の育成には欠かせないものです。養分を吸収する根がのびのびと成長できる土の状態で、植物のできは大きく左右されます」

編集部「人間にとっての家と食事だといわれると、その大切さがよく分かります。でも土でそんなに違いが出るものなんですか?」

龍さん「全然違うんですよ。状態の悪い土で植物を育てると、病気になったり生育不良の原因になったりします。逆に良い土で育てられた植物は、茎が太くがっしり育ちますね。土の見た目だけでは違いを見抜くことはむずかしいかもしれませんが、植物を育てていると少しずつ違いがわかってきます」

編集部「土を制する物は、ベランダ菜園を制すということですね!」

龍さん「おっ!なかなか筋がいいですね!その通りです」

良い土とは?

Photo by てしま農園

編集部「具体的に、良い土とはどういう状態のものをいいますか?」

龍さん「健康な土には、いくつかの条件があります。まずは水はけと水持ちがいいことです。一見、矛盾しているようにも聞こえますが、水やりするとしっかりと水分を吸収し、余分な水分はきちんと排出するという意味です。そして、有用な微生物がバランス良く存在していること。次に土の酸度が適切であることです。

良い土はふかふかとやわらかく、少ししっとりとしていて無臭(いやな臭いがしない)です。せっかくの良い土も作ってから時間が経つと固くパサパサになってくるので、土作りをしてからの鮮度も大切。ホームセンターで袋が土埃を被って山積みされている下のほうにある土は、古く固くなっていることがあるので注意が必要ですよ。

さらに、植物がしっかり育つには、その植物にあった肥料をちゃんと土に混ぜてあげることも重要ですね」

編集部「肥料ってたくさんの種類が売られていて、いつもどれを選んだらいいかわからないんですよね。肥料を選ぶポイントってありますか?」

龍さん「肥料には、窒素・リン酸・カリの3要素があり、窒素は葉っぱが茂る葉ごえ、リン酸は実が肥える実ごえ、カリは根っこや茎が丈夫になる根ごえと、それぞれ役割が異なります。そしてそれらの含有量は、8・8・8のように肥料の袋に表記されるんです。なので、基本は割合の同じ肥料を用意して、あとは状況に合わせた肥料で補ってあげるといいですよ」

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編集部「はじめて知りました!でも、3つの要素の割合が同じ肥料の場合は何で1:1:1じゃないんですか?」

龍さん「単位がないためわかりにくいですが、割合ではなく%ですね。なので、8・8・8は8%・8%・8%なんですよ。数値が高ければ高いほど、濃度が高いということになります。ちなみに、てしまの苗屋ではこだわりの詰まった『超培土』という土の販売もしているんですよ」

編集部「へぇー!どのようなこだわりなんでしょう?」

龍さん「この土に含まれている肥料は、てしまの苗屋オリジナル配合で作っています。また注文が入ってから配合するので、ふかふかで水はけと水持ちがいい新鮮な土をお届けすることができます。40L / 2,980円(送料込み)と値段も手頃なので、この機会にぜひひ良い土を触って実感してみてください!」

悪い土とは?

Photo by てしま農園

編集部「見た目では土の良し悪しの違いはわかりづらいということでしたが、悪い土とは具体的にどのような状態なんでしょうか?」

龍さん「一般的には、土が固くて水はけが悪く、菌のバランスや酸度の偏った土を指します。このような土だと根が十分に育つことができず、ほっそりとしたヒョロヒョロの弱々しい苗になってしまいます。

また、土はサラサラ過ぎても硬過ぎてもいけません。実際に土を軽い力で握ると固まり、触れるとほぐれるくらいが理想的。ふかふかとしていてふっくらしている、まるで羽毛布団のようなイメージです」

編集部「我が家のプランターの土は、今かなり悪い状態かもしれません……」

龍さん「それが普通なので大丈夫ですよ(笑)。基本的に土の効能は、1年のサイクルだといわれています。植物が育ったぶん、栄養や水分が使われて土の中はカラカラの枯渇状態になっているんですね。なので、この時期に土の入れ替えをすることが大切なんです」
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