ライター : macaroni 編集部

監修者 : 龍 慶介

てしま農園 代表

教えてくれる人

てしま農園 代表 / 龍 慶介さん

自衛隊のパイロット、大手広告出版会社と異色の経歴を経て、10年前に農業の世界へ。“植物のプロとお客様をつなぐ”をコンセプトとした『てしまの苗屋』を立ち上げる。初心者の方に植物を育てることの楽しさを伝えたいと、苗の丁寧な育成はもちろん、購入される方への説明や相談にも積極的に対応。失敗しにくい苗の販売と育成に力を注いでいる。

植物への愛情たっぷりの龍さんに、3月のベランダ菜園におすすめの野菜&ハーブと基本的な知識やアドバイスをいただきました。

てしま農園も春の訪れと共に忙しい時期に

Photo by てしまの苗屋

編集部「朝晩はまだ冷えますが、少しずつ春めいて暖かな日を感じることが多くなってきましたね。植物にとっては、冬のおやすみ期間を終えてこれから本番といったところでしょうか」

龍さん「まさにその通りです。てしま農園では、すでに春の植え込みが始まりました。大体の苗は植えてから出荷できるまでに60日ほどかかるので、今植えたもの達は4月中旬に出荷する分になります」

編集部「具体的に、どのような種類の植え込みが始まっているのでしょうか?」

龍さん「きゅうり・トマト・ナス・ピーマン・スイカ・メロンなどの果菜類と言われる、実のなる種類です。春は、こうした果菜類の植え時なんですよ。彩りも鮮やかな果菜類は、育てるのが楽しいし見た目も綺麗ですよね。本格的にベランダ菜園が楽しめる時期にもなってくるので、今後は果菜類も紹介していきたいですね!」

3月におすすめの野菜は「ジャガイモ」

Photo by okamagami

編集部「暖かくなってきたので、おすすめの野菜もいっぱいありそうですね!」

龍さん「暖かくなってきてはいますが、寒暖差があり気温の不安定なこの時期は野菜を植える時期としては少し早いんです。タイミングの目安としては、最低気温が10度を下回らなくなった頃。10度を下回ると、寒さに耐久のある植物以外は障害が出てくるリスクが高くなってしまいますからね。

そんな今だからこそ植え時なのが、春キャベツやジャガイモです!特にジャガイモは、気温が高いと腐りやすく失敗することが多くなってしまうので、今の時期はまさにベストだといえます」

編集部「ジャガイモってたくさん種類がありますが、ベランダ菜園に適した種類ってあるんですか?」

龍さん「どの品種も育て方は変わらないので、食べるときの用途に合わせて選ぶといいと思います。ただ、食用で売られているジャガイモは、食べるのにはもちろん問題ないのですが、育成の阻害になるウイルスが付着していることが多いんです。必ず検品された種イモを植えるようにしましょう

ジャガイモを上手に育てるには?

最適な環境と植え付け方法

Photo by okamagami

編集部「暑さに弱いなら、あまり日には当てないほうがいいんですか?」

龍さん「ジャガイモに限らず、植物全般的に日当たり・風通しの良さは基本です。ジャガイモを育てるコツとしては、地面から伝わる熱によって土が温まる事を防ぐために、すのこを下に敷いてあげるといいですよ。

おすすめは、40Lの肥料袋や土のう袋、培養土袋を立ててプランターの代わりに使う方法。深さがあり丈夫なので十分にプランターの代用になります。肥料袋や培養土袋など水を通さない袋を使う場合は、底に水切り用の穴をあけることを忘れずに。もちろん、プランターをお持ちならプランターでも大丈夫です」

Photo by okamagami

編集部「培養土の袋なら、中の土をそのまま使えて便利ですね!ジャガイモといえば北海道というイメージから、寒さには強いイメージがありますが……」

龍さん「そうですね。寒さには強いので、よっぽどマイナス気温にならない限りは、きちんと育ってくれます。冷蔵庫の中でも芽を出すくらいなので(笑)とても丈夫な植物なんですね」

Photo by okamagami

編集部「植える際に注意することはありますか?」

龍さん「種イモと一概に言ってもサイズはさまざま。小さいものはそのまま植えられますが、60g以上あるものは切り分けて1つが30〜40gになるようにします。このときカットした種イモは、すぐに植えずに乾かしましょう。そのまま乾かすと切り口から菌が入ってしまうので、灰を切り口につけて予防します」

Photo by okamagami

編集部「灰ですか……!」

龍さん「今時期ですと、草木灰という灰がジャガイモの植え付け用にホームセンターで売られていますよ!」

編集部「それなら手軽にできますね。袋1つあたりに、どれくらいの種イモが植えられますか?」

龍さん40Lの袋でしたら、1つあたりに4個ほど植え付けることが可能です。約3~4cmの深さに、カットした種イモなら切り口を下に。カットしていない種イモは、たくさん芽が出ている面を上にして植え付けます。

そしてジャガイモ栽培の一番のポイントは、なんといっても土寄せ。水やり中や、雨で濡れると土からイモが露出する場合があります。イモは日光を浴びると変色して味が落ちるので、露出してこないようにこまめに土寄せ(土を茎に寄せて山をつくっていくこと)することを心がけましょう。ジャガイモは、種イモよりも下に実がつくことはありません。そのため土寄せをしっかりおこなっただけ豊かに実るので、怠らないようにしましょうね!」

水と肥料のやり方

Photo by okamagami

編集部「ジャガイモの水やりは、どのくらいの頻度ですか?」

龍さん「ジャガイモは、乾かしすぎかなと思うくらい乾かし気味に育てていきます。なので、1日に1回が目安にはなりますが、表面の乾きを見ながら水やりをしましょう。表面が乾いていなければ、水をやる必要はありません。水やりのしすぎは腐敗の原因になりますからね」

編集部「そうなんですね。気を付けます!肥料は必要ですか?」

龍さん植えてから50日後に、固形の肥料を一度与えます。このときの注意点は、イモから少し離れたところに肥料をあげることです。イモや大根などの根菜類は、肥料が直接当たったところから腐ったり、効きすぎて悪くなってしまったりするんですよ」

編集部「それは知りませんでした!肥料の量はどのくらいでしょうか?」

龍さん「40Lの袋の場合ですと、一袋大体20〜25gくらいが目安ですよ。女性の手でひと掴みくらいですかね」

想定されるトラブルと対処法

Photo by てしまの苗屋

編集部「気を付ける病害虫はありますか?」

龍さん「比較的ジャガイモは強く育てやすいです。ただ風通しが悪かったりジメジメしていると、疫病にかかり途中で葉が枯れてしまいます。ジャガイモは収穫時期に葉が枯れていくのですが、自然な枯れ方とは異なり溶けるように枯れていくんですよ」

編集部「なにか予防方法はないのでしょうか」

龍さん「ホームセンターで買える、ジャガイモ用の殺菌剤やスプレー材を使いましょう。多くは殺虫剤と殺菌剤が混ざっているので、それをまくだけでも十分予防になりますよ」

編集部「枯れた葉を取り除けば、よみがえりますか?」

龍さん「疫病が原因で枯れてしまった場合は、ドロドロに溶けて急激に枯れるため、復活はむずかしいかもしれません。ただ、部分的に枯れてしまった場合は、葉を切り取れば再生しますよ」
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