ライター : 取れば人生変わるかも!? 食の資格大百科

「米・食味鑑定士」ってナンダ?

続々と増える食に関係する資格。あまりにも数が多すぎてどれが何やらわけわからん!というあなたのために、毎回1つ取り上げてその全貌をご紹介する企画。 第2回となる今回は、「米・食味鑑定士」。字面だけだと何やらお堅いものにも見えるこの資格、最近では有名グルメブロガーにも所有者がいて、知名度を大きく増しています。 日本人の食卓には欠かすことのできないお米。その味や香りを鑑定するという米・食味鑑定士とはいったいどういう人たちで、いったい全体何に役立つ資格なの?

米・食味鑑定士はお米のソムリエ

そもそも、米・食味鑑定士ってどういう資格なんでしょう。 米・食味鑑定士協会の鈴木秀之会長によると、「米・食味鑑定士はお米のエキスパート。ワインのソムリエにあたる資格と考えております」とのこと。 2017年12月現在で、資格所有者は643名(男性528名、女性115名)。そのうち97%がお米にかかわる仕事をしている人たちで、農機や肥料などを扱う農業関係の企業の人や、炊飯器メーカーの研究者、行政で働く人、日本のお米を海外へ輸出する貿易商にもこの資格を持っている人がいるといいます。ちなみに、ココナッツウォーターで世界的な成功を收めたデヴィッド・リン氏もその一人。 残りの3%には、料理研究家がいたり、ふつうの主婦がいたり。お米好きが高じて資格を取り、地域活動に生かしている方もいるそうですよ。

本当においしいお米を消費者へ

それにしても、どうしてこの資格が生まれたのか。お米にソムリエが必要かどうかといわれると……、正直、よくわかりません。鈴木会長は、お米を取り巻く環境への危機感が資格発足のきっかけだったといいます。 「平成7年(1995年)に食糧管理法(国民の食糧の確保および国民経済の安定を図るために食糧を管理し、その需給・価格の調整、流通の規制を行うことを目的とする法律 – デジタル大辞泉)が廃止となって、お米の市場が大変混乱した。自由競争になって、それまではありえなかったような良くないことをする業者が増え、粗悪な商品がたくさん出回ったんです。そんな頃に、新幹線で井戸端会議をしていた主婦の話に気になる言葉がありました」 お米にもソムリエがいたらいい。おいしいお米にそういう人のお墨付きがあれば、ヘンなお米を避けられるのに。 この言葉を聞いて「たしかに!」と思った鈴木会長は、平成8年には「米・食味鑑定士」の商標登録を済ませ、お米の品質や食味をしっかり鑑定できる人材の育成を目指して平成10年に養成講座を開講。この講座は特にお米の関係者の間で注目を集め、同年11月には最初の米・食味鑑定士55名が生まれました。

2日間の講習でお米のエキスパートに

こうして誕生した米・食味鑑定士の資格。所持者は具体的にどういう知識を身につけているのでしょう。資格取得のための講習会の内容は、以下のとおり。 ●主旨・目的とビジョン ●米の成分と構造・食味評価法 ●新形質米・Q&A・イネの診断とお米の見分け方 ●米の文化と歴史 ●価値訴求型農業ビジネスへの挑戦 ●復習とテストについて ちょっとわかりづらいでしょうか。ざっくりと説明すると、その内容は、お米の文化と歴史、お米の選び方や炊き方、調理法に合わせた炊飯の方法、新形質米と呼ばれる機能性のあるお米についてなど。これらを学んだ上で5種類の品種を見分ける官能審査とペーパーテスト(50問)を受け、それぞれに合格すれば資格取得。鑑定士認定会員証と会員手帳、認定証などが授与されます。 なお、気になる合格率はなんと90%以上!講習会の内容をしっかり聞いていれば、そう難しくはなさそうですね。 ただし、資格を所持するための費用はそれなり。講習の受講費が57,000円で、合格後には所持費用15,000円+年会費36,000円=51,000円の支払いが必要となります。年会費の支払いは年1回で、毎年の更新時期に手続きして36,000円を納金すれば、翌年まで資格を維持できます。

米・食味鑑定士になるメリットは

これだけの費用をかけて米・食味鑑定士になるメリットとは? まず、「米・食味鑑定士(商標登録済)」の肩書きを使えます。自分は米・食味鑑定士だと公にして活動できるわけですね。また、のぼり・看板・名刺(不正表示を防ぐため、協会推奨のものに限る)に資格名称を入れたり、商品に鑑定士ラベルを貼ったりして、自分と自分がかかわる商品のブランディングに資格を利用できます。 他にも「米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」への出品検体料金が割引されたり、審査員として優先的に登録できたりもします。 米・食味鑑定士は、こうしたメリットを上手に利用して、一流企業での製品開発や各地のコンクールでの審査員、雑誌やマスコミの取材対応など、多岐にわたる活動をしています。

お米って知れば知るほどおもしろい!

Photo by macaroni

秋元 薫さん 料理研究家、米・食味鑑定士、ごはんソムリエ。企業・雑誌へのレシピ提供やお米コンテストの審査員を中心に活動中。得意の「お米」以外にも、和食からインド料理まで幅広いジャンルのレシピを提案している。
ごはんソムリエとしてその名を知られる秋元薫さんも、米・食味鑑定士の一人。ル・コルドンブルーをはじめとするさまざまな学校で学んだ彼女はどうしてこの資格を取ろうと考えたんでしょう。
「料理研究家として自分の強みをつくろうと思ったんです。じゃあ何を学ぼうと考えたら、『自分はお米が好き』なんだと気がついた。思い返してみると、私の実家は生産者から直接お米を送ってもらっていて、ごはんがとにかくおいしかったんですよ。
それに、お米は万能。どんな味付けも受け止められる度量があります。中華ならチャーハン、和食なら主食として、ヨーロッパではデザートに使われることもある。無理なくいろいろな提案をできるから、レシピ開発も楽なんです」
加えて、「お米という食材は知れば知るほどおもしろい」と秋元さん。
「お米の官能検査ってワインのテイスティングと似ていて、色の白さ、粒はそろっているか、弾力や食べた後の余韻はどうか、なんてことを細かく見ていくんです。見るべきポイントが多くて、とにかく奥が深いんですよ。同じ品種でも地域が違えば風味が変わりますし、学びに終わりがなくて、勉強し甲斐がありますね。おいしいお米をさらにおいしく食べたいという人なら、きっと楽しいですよ」
米・食味鑑定士の取得後は、お米関係の仕事をとにかくたくさんしたそう。
秋元薫さんの著書、「毎日食べたい混ぜごはん」(すばる舎 刊)1,300円+勢、「帰ったら15分で作れる!夜ラクごはん」(ナツメ社 刊)1,200円+税
「どんな資格も取っただけでは何も起こりません。お仕事をいただく上では、自分は何ができるのか明確に伝わった方が良いと思うんです。料理研究家としての仕事では特に、『お米に詳しいです。料理もできます』というのは強みになりますし、その証として資格を取得することは意味があると思います」
さらに、米・食味鑑定士の所持にはこんなメリットも。
「協会主催のコンクールにはトップクラスの生産者が集まってくる。米・食味鑑定士の資格があれば、そこで行われる懇親会にも参加できますし、新しい情報がたくさん手にはいります。
新しいお米も次々と市場に出てきますから、自分がもっている情報をアップデートするためにも、お米の関係者と多く知り合ってコミュニティを広げるためにも、この資格をもっているというのは大きいですね」
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