ヒスタミン食中毒

回遊魚である鯖は、発達した筋肉を持っています。そのなかにヒスチジンというアミノ酸をたくさん蓄えています。自己消化の最中に鯖の体内にある細菌が活性化し、ヒスチジンを分解してヒスタミンを作り出します。このヒスタミンを大量に食べることで、わたしたちは食中毒を起こします。ヒスタミンによる食中毒は、通常の食中毒とは異なり、じんましんなどアレルギーのような症状を起こすのが特徴です。
鯖には、“鯖を読む”以外にも、“鯖の生き腐れ”という言葉があります。鯖は活きがいいように見えても、傷んでいることがあるから気をつけなさい、という意味ですが、これは間違いではありません。ヒスタミンは大量に発生しても、鯖の外観に影響を及ぼすことはほとんどなく、プロの目利きでも鯖にヒスタミンが発生しているかどうかを見極めることは大変に難しいと言われているのです。
ヒスタミンを生み出す細菌は、気温20℃~40℃で一番活性化します。そのため、気温の高い夏は特に中毒が多いのです。しかも、やっかいなことに一旦、鯖の体内で増えたヒスタミンは加熱しても、冷凍しても減ることがありません。ヒスタミンは作りださないことが大切なポイントなのです。

余談:関サバなら鮮度はよい

このように傷みが早い鯖ですが、この鯖をおいしいお刺身でいただくことができる“関サバ”をご存じですか?関サバと言えば全国的に有名な高級魚のひとつです。九州の大分県と四国の愛媛とに挟まれた豊後水道のなかでも、もっとも狭い豊予海峡で獲れる真鯖を指します。豊予海峡は豊富な餌と潮の流れが速いことで知られ、そこで獲れる鯖はほどよい脂と締まった身を持つことで知られています。
関サバは瀬戸内海と太平洋の混じり合う豊予海峡で成長し、一本釣りで捕獲されます。一本釣りとは、その名の通り、竿や釣り糸で一尾ずつ釣り上げる漁獲方法です。一尾ずつしか捕獲できない漁獲方法ですが、網などで大量に捕獲する方法とは異なり、鯖を傷つけずに釣り上げることができます。釣り上げられた鯖は、すぐにいけすに入れられ、生きたまま港に持ち帰られるのです。
このように鯖そのものの扱いと鮮度にこだわった漁獲方法で港に揚がった関サバは、さらにいけすのなかの状態を確認してから買われる“面買い”という方法で、生きたまま買い取られます。消費者の口に入る直前まで、関サバは生きていることから、中毒のもととなるヒスタミンの生成も促されず、安心しておいしいお刺身を堪能できるというわけです。

サバは読まずに正直に!

いかがですか?今回は、“鯖を読む”ということばの語源と鯖が傷みやすい原因について、ご紹介させていただきました。鯖はおいしいお魚です。これから秋に向けてますます、おいしい鯖を堪能できる季節でもありますね。
鯖を自宅で調理するときには、加熱調理を基本に、冷蔵庫から取り出したらすぐに調理して食べるように心がけてください。食中毒は暑い夏より、涼しくなってきたこれからのほうが発生しやすい、という実態もあります。これは、気温が下がってきたから大丈夫だろう、という調理する側の気のゆるみも関係するようです。
鯖を読んでしまう心理は、誰にでも理解でき、笑って許されるかわいい嘘のたぐいではありますが、嘘だとわかったときにはバツが悪いものでもあります。鯖はおいしく食べることに専念して、読むことのないようにしたいものですね。
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