ライター : 大谷りえ子

パンディレクター/パンライター

人気店「ブーランジェリー スドウ」須藤シェフのご贔屓パンは?

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松陰神社前の「ブーランジェリースドウ」
連載1回目となる今回“ご贔屓パン”を教えてくれたのは、世田谷線・松陰神社前駅近くにある人気ベーカリー「ブーランジェリースドウ」の須藤秀男シェフ。パティシエ出身の須藤シェフが作るパンは、どれも独創的でおいしいと評判。なかでもファンの多い食パンは、1ヶ月予約待ちをしてようやく入手できる人気商品です。

そんな須藤シェフのご贔屓パンは、ご自身も得意としている食パン!

「私のご贔屓パンは『セントル ザ・ベーカリー』の角食パンです。製法・素材に作り手のこだわりが詰まった、ほかでは真似のできない唯一無二の湯種(※)食パン。世に湯種食パンはたくさんありますが、クオリティの高さも安定感も本当に素晴らしいです。食パン専門店としてのコンセプト、店構え、パッケージを含め、感銘を受けました」(須藤シェフ)
※湯種=パン生地に使用する小麦粉の一部に熱湯を加えてこね、ひと晩寝かせておモチのようにした生地のこと

力強い言葉で“推し”の魅力を語ってくれた須藤シェフ。一消費者としてだけでなく、パン職人としても刺激を受けたと伝わってくるコメントでした。『セントル ザ・ベーカリー』の角食パンは私も以前から好きで、何度か購入しています。一流のパン職人のご贔屓パンと聞いて、自分がほめられたみたいにうれしい♪

ご贔屓パンの店「セントル ザ・ベーカリー 銀座店」へ

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東京メトロの銀座一丁目駅/JR有楽町駅からそれぞれ3分ほどの場所にある食パン専門店「セントル ザ・ベーカリー 銀座店」。首都高速の高架下に軒を連ねるこのお店は、高級食パンブームの火付け役とも呼ばれています。

オープンしたのは2013年で、2017年にはフランスのパリに出店。行列の絶えないお店と話題になり、2018年には東京では2店舗目となる青山店の営業を開始しました。

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入口からまっすぐ進むと広々としたイートインスペースがあり、テイクアウトのスペースは店内に入ってすぐ右手。お目当ての角食パンは、このテイクアウトスペースのレジ横にありました。

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こちらで売られている食パンは、国産の小麦を使った「角食パン」900円(税抜)、輸入小麦を使った「プルマン」900円(税抜)、山型の「イギリスパン」800円(税抜)の3種類。角食パンのPOPには「焼かずにそのまま食べるのがおすすめ」「食感:しっとり・もっちり」などと書かれていました。これだけを見ても、スタッフがこのパンに自信をもっているのがわかりますね。

棚の向こうに目をやると、奥では続々と食パンが焼かれ、スチール製の棚に次々並べられていました。漂ってくる焼きたてパンの甘い香りに居ても立ってもいられず、とりあえず角食パンを2本購入。さらに、パン職人の山本シェフに少々時間をいただいて、角食パンについていろいろとうかがうことにしました。

何よりの魅力は食感!耳はしっかりと焼くのがこだわり

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セントル ザ・ベーカリー 山本昌弘(やまもと まさひろ)シェフ 「ブーランジェリーブルディガラ」で統括シェフを務めたあと、辻口博啓氏の「マリアージュ ドゥ ファリーヌ」のオープニングスタッフとして働く。駒場東大前「ルルソール」を経て、2018年より現在の「セントル ザ•ベーカリー銀座店」のシェフを務める
ーー 角食パンはオープン当初からの人気商品ですね。これほど人を惹きつけるパンとなると、開発にはやはり苦労されたのでは?

山本シェフ(以降 山本) 開店当時、私自身は別の店で働いていたのですが、数年をかけて試行錯誤し、ようやく完成したパンだと聞いています。

ーー 作り手である山本シェフから見て、こちらの角食パンの魅力とは。

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山本 当店の角食パンは超強力粉といわれる北海道産小麦「ゆめちから」を使用し、湯種と液種という製法を用いてしっとりもっちりと仕上げています。魅力をあげるなら、まずはこの食感ですね。

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山本 一方、耳はしっかりと焼いています。最近の高級食パンには耳がやわらかいパンが多いですが、ここにはこだわっていますね。

ーー 私、このミチッとした耳の部分が大好きです。

山本 ありがとうございます。自社牧場の脱脂乳を使用して風味豊かに焼き上げているので、甘すぎず、毎日食べても飽きのこないパンとなっています。これも高級食パンとしては珍しい特徴でしょう。

ーー 日にどれくらいの数を焼いているんですか?

山本 銀座店では、角食パンだけで1日1000本焼き上げています。

ーー 1000本! ほかの食パンと合わせるとすごい数になりそうですね……。さすがは行列店です。

山本 北海道美瑛産の2種類の小麦粉をブレンドしたオリジナル粉を使用しておりますが、毎日同じように焼き上げるのが非常にむずかしい。日々粉と対話するような気持ちでパンづくりに取り組んでいます。

山本シェフおすすめの食べ方は甘い系

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ーー 山本シェフはこの角食パンをどのように食べるのが好きですか?

山本 角食パンはミルキーな味わいのパンなので、甘い系のパンのお供と一緒に食べることが多いです。トースターで軽く焼き、バターを塊のままのせて、フランス・プロヴァンス産のラベンダーはちみつをかける。クセになります。

ーー それはおいしそう! 帰ったら私もやってみます。

山本 マシュマロクリームをたっぷり塗って、軽くトーストする食べ方もおすすめです。ぜひ試してみてください。

そのまま食べても焼いて食べてもおいしい!

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今や食パン市場は戦国時代。銀座周辺にも次々と食パン専門店が進出しています。

「競合店が増えていますが、そんななかでも変わらないことを心に留めて、多くの方に愛されているこの味を大切にしていきたいと思います」と、今の想いを言の葉にのせた山本シェフ。その言葉からは、自分が味を守っていくんだという決意が感じられました。

取材を終え、さっそく山本シェフに教わった食べ方を試してみると、これが本当においしかった! POPに書かれていたとおり、焼かずに食べるのも良いですが、焼いて食べてもとても良い。新しい楽しみ方を知って、セントル ザ・ベーカリーの角食パンをより一層好きになりました。

店舗情報

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