ライター : 嶋田コータロー

お土産マイスター

ラムドラの原点はぬれどら焼きにあり!【マニア注目の逸品 #3】

Photo by 梅月堂

“オトナのどら焼き”として話題の「ラムドラ」。本連載の前回に、ラムドラの誕生話やおいしさの秘訣に迫りました。

今回はその続編として、ラムドラの原点となった「ぬれどら焼き」をご紹介します。前回と同様、鹿児島県・梅月堂の4代目当主である、石原良さんにお話を伺いしました。

“職人泣かせ”と呼ばれるどら焼き生地や、餡へのこだわりをたっぷり話してくださいましたよ!

誕生のきっかけは、奥さまのひと言

ぬれどら焼きを販売する前から、どら焼きを作っておられたそうですね。

Photo by 梅月堂

石原さん(以下、石原):はい。今でこそ「ぬれどら焼き」をご存じの方もおられますが、私どもが跡継ぎをした時点では、単に「どら焼き」という名称で、数ある商品のひとつとしてショーケースに並んでいました。

60年前に、2代目の道男が「どこにもないしっとりとしたどら焼きを作りたい」との思いで、開発したものです。

「梅月堂のどら焼きが一番!」と、まとめ買いしてくださるお客様もいらっしゃいましたが、まったくの無名と言ってよい状態で、店の売上には貢献していませんでした(笑)

ぬれどら焼きは、どのようにして生まれたんですか?

Photo by 嶋田コータロー

石原:私は妻から“Mr.湯之元せんべい”と呼ばれるほど、梅月堂の看板商品である湯之元せんべいに対する思い入れが強いのですが、湯之元せんべいにこだわりすぎてしまう部分があったんです。

そのようなときに、妻が「確かに湯之元せんべいは鹿児島では有名で、珍しいしおいしい。でも、全国的にみたら、どら焼きこそどこにもないお菓子なんじゃない?いろんなお菓子を食べてきたけど、こんなにしっとりしておいしいどら焼きはなかったよね」と言ったんです。

その言葉で、少なくともしっとりさに関しては、うちが一番だと自信を持つようになったんですね。また、どら焼きは“ふわふわ系”が主流で、“しっとり系”はほとんど存在しないということにも気づきました。

そこで、材料を見直すことで品質を上げ、ネーミングを「ぬれどら焼き」と変えて、リニューアル販売したんです。

“寝かせて食べる”、第3のどら焼き「ぬれどら焼き」

2代目が考案した、しっとり系どら焼きのおいしさに改めて気づいた石原さん。その後、リニューアルして販売するわけですが、そこには梅月堂ならではのこだわりがありました。

ぬれどら焼きとして販売するにあたり、特に改良した部分はどこですか?

Photo by 梅月堂

石原:ひとつは餡の材料と炊き方です。小豆は北海道産のなかでも、粒が大きくて均一な大納言小豆のみを使用しています。粒の大きさがそろっているので、小豆の食感を残して炊き上げることができるようになりました。

粒がそろっていないと、大きくて煮えにくい豆に合わせて炊く必要があるので、小さな豆はやや、やわらかくなり過ぎてしまうんです。餡を炊くとき・練るときには、少しだけ煮汁を残し、より小豆本来の風味を出すようにしました。

また、砂糖を1割以上減らすことで、食べたときに一体感が得られるようになりましたし、小豆の風味をより感じられるようになったと思います。

Photo by 嶋田コータロー

石原:また、ネーミングとパッケージを新しくしました。私どもが家業を継いだ際、複数のお客様から「梅月堂さんのどら焼きはしっとりしておいしい。仏壇にお供えして賞味期限ぎりぎりで食べると、もっとしっとりしておいしいよ」とのお言葉をいただいたんです。試してみると確かにそうで、なるほどと思いましたね。

このことをデザイナーさんにお話したところ、「ぬれどら焼き」というネーミングなら、特徴が伝わりやすいのではないか、ということで名前が決まりました。

パッケージは、しっとりとした生地を見ていただけるように、和紙から半透明のものに変更。デザインからも、なんとなく“濡れ感”を感じていただけるかと思います。

販売の際には、「ふわふわでもない、もちもちでもない、寝かせて食べるじっとりどら焼き。いわば、第3のどら焼きです」と、ご説明するようになりました。

“職人泣かせ”と呼ばれる「ぬれどら焼き」

ふわっとしたどら焼きが主流のなか、あえてしっとりを追求して作られた「ぬれどら焼き」。ただ、ぬれどら焼きの生地作りは想像以上にむずかしく、「職人泣かせ」と言われるほどなんですよ。
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