杉窪シェフがコーヒー店を手掛けた理由とは?

パンからスタートし、総合食料品店の次はコーヒー店。「コーヒーが好きだから?」と聞くと、杉窪シェフからは「それもあるけれど、ひとつは飲食業界のホワイト化のためです」という意外な答えが返ってきました。

Photo by macaroni

「飲食業界、特にベーカリー業界は労働時間が長く、労働条件も過酷なのが常識とされてきました。でもそれを変えたいのです。

そこで、ベーカリーよりも収益性の高いコーヒービジネスに注目し、パン作りの経験を生かして私自らが焙煎士としてローストを始めました。

じつは、スタッフの長時間労働を是正するための取り組みは、『365日』のパン作りでもおこなっています。従来の作り方から、おいしくするために不要なプロセスのいくつかを見直すことで、労働時間の短縮につなげているんです」(杉窪シェフ)

Photo by macaroni

ベーカリーで得たノウハウを、すべての飲食ビジネスに落とし込んでいくのが、杉窪シェフの狙い。まずはパンと親和性の高いコーヒーから始めているというわけです。

「マスで満足できない人の避難所を作りたい」

Photo by macaroni

このお店でもうひとつ驚いたのが、販売しているコーヒー豆やコーヒーメニューのマニアックさ。ショップで販売しているコーヒー豆はすべてフェアトレードで、杉窪シェフが実際に訪れた農園の豆も多くあります。

例えば、エチオピアの農園で、働いている人の95%を女性が占めているという「イルガチェフェ」という豆は、彼女たちの朗らかな笑い声が聞こえてきそうな味わい。

またカフェでは、メルボルン発祥のエスプレッソスタイル「マジック」(多くのコーヒー豆を使用して、前半に抽出される雑味が少ない部分のみを使用したラテ)や、「ジブラルタル」(エスプレッソを少量の温かいミルクで薄めたもの)、オーストラリアやニュージーランドのカフェで人気の「ショートブラック」「ロングブラック」といった、世界中のスタイルでも提供しています。この4種がすべて飲める店は、めったにありません。

ジブラルタル

Photo by 桑原恵美子

715円(税込)
コーヒーであれば、一般的なアメリカーノやカフェラテで満足する人も多いですが、杉窪シェフはこう言い切ります。

「この店では、マス(多数)を取りに行っていません。マスで満足できない人たちが避難できる場所として、作っているんです」

店舗で使用する食材は、できる限り契約農家から取り寄せたものを採用するほか、全国の生産者と一緒に、日本の小麦を活性化させるプロジェクト「新麦コレクション」に参加したり、地方食材の生産者と消費地をつなげる活動をしたりなど、食に関わる真摯で革新的な取り組みを続けています。

新たな出会いが続々。「365日」と「二足歩行coffee roasters」

Photo by 二足歩行 coffee roasters

写真左から二足歩行 coffee roastersの「サーモンドッグ」(税込1,430円)、ジュウニブン ベーカリーの「塩モンブラン」(税込610円)。ジュウニブン ベーカリーの商品はすべて、二足歩行 coffee roastersでイートイン可
「ウルトラキッチン」の公式サイトで、杉窪シェフはこれまでの10年間を「手間を楽しむ」ことに取り組んできたと語っています。そして次は「変わることを楽しむ」10年間にしていくとも。

「新型コロナで動きを封じられたこの2年間で、みんな、多くのことをインプットするようになったんじゃないでしょうか。その結果、物の選び方も変わってきているような気がします」と杉窪シェフ。

「世界平和」という大きな最終目標。杉窪シェフの話を伺うなかで、「食」を通して少しずつ実現できる可能性があることを実感できました。

何かを変えたい、そう思っている人は「365日」と「二足歩行 コーヒーロースターズ」を訪れてみてください。もちろん、おいしいものに出会いたい人も……!

取材・文/桑原恵美子
構成・一部撮影/道岡直宏(macaroni 編集部)
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※本記事は個人の感想に基づいたもので、感じ方には個人差があります。
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