4. リッチな生地に合わせたコクの強いあん「十勝小豆×あんぱん」

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粉に対して22%もの量のバターを入れて作っているリッチな生地のパンです。

特別に栽培した十勝産の小豆を、ベルギー産のカソナード(赤砂糖)で炊き上げた粒あんは、リッチな生地との重量感を合わせるために、グレープシードオイルを入れています。

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見てのとおり気泡が粗く、とても口どけの良い生地です。あんこはぎっしりではなく、上に少し空洞があります。これは、上質な小豆の香りをとどめるために、あえて作っている空洞なのです。

上が厚くて下が薄いという構造は、食べてすぐに舌であんこを感じてもらうため。食べる人の幸福感を、とことん追求してできた形なのです。

5. 空洞に香りを閉じ込めた「カレーぱん」

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油で揚げるのが一般的なカレーパン。ですが「365日」では、揚げなくても表面がカリカリになるよう、焼きあがる直前にオーブンから一度出して、型の底にオリーブオイルを入れ、さらに上にパン粉をかけて焼いています。

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こちらもあんパンと同じように、カレーの香りを包みこむために上に空洞を作っています。

フィリングのカレーは二層構造になっていて、下は豚ひき肉と赤ワイン、7種類のハーブとスパイスで作ったカレー。上には、夏は自家製ドライトマト、冬はカボチャなど季節の野菜を使用しています。

生地に75%ものさつまいものペーストを入れているので、歯がスッと通って食べやすいのも特長です。

おうちでも!「365日」の通販お取り寄せ

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「365日」公式オンラインショップでは、自家焙煎のコーヒー豆やオリジナルジャム、さらに人気パン「クロッカンショコラ」を含むパンを、通販でお取り寄せできます。店舗では売り切れてしまうこともある商品を、家にいながら注文できるのはとっても嬉しい!

おうちカフェ、手土産など色々なシーンで利用してみてください。

そもそも「365日」という店名の由来とは?

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とっても気になる「365日」 という店名。その由来を杉窪シェフに聞いてみました。

毎日の食事こそ、体にも心にも良いものを食べましょう、というメッセージを届けたいのです。また、パン屋にありがちな読みにくい外国語ではなく、お子さんにも分かるような日本語にしたのもこだわりですね」

店名プレートの下には、「食+食―食×食÷食」という数式が刻まれています。

食材を組み合わせて新しい発見をし、引き算で食材のうまみを引き出す。そして生まれた相乗効果を、分かち合う。そんなメッセージが込められています。

「365日」が目指しているのは、パン屋ではなく「総合食料品店」

商品のラインアップから分かる通り、「365日」がめざしているのは単なるパン屋ではなく、「総合食料品店」。杉窪シェフに、その狙いを伺いました。

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「私が考える総合食料品店とは、多面的な使い勝手の良いお店。パンを買うついでに納豆を買ったり、醤油を買いにきたついでにパンを買ったり、とコンビニエンスストア感覚で使えるお店です。

そして、買うこと自体がエンターテインメントになるような仕掛けがある、コンビニ級の存在感があるお店を作りたいと以前から考えていました」

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「『パン屋はパンだけ焼いていればいい』という、パン屋の枠組みだけで考える狭い視野ではなく、もっと広い視野で『食』に取り組みたいと考えています。

2013年9月に『安全、自然、公平な食と生活をプロデュースする』というコンセプトを掲げて『ウルトラキッチン』を設立したのも、パン屋で成功して完了にはしたくなかったから。

移転の直接的なきっかけは、元の『365日』が売り場約10坪と狭く、長い行列ができてしまって近所にご迷惑をかけていたことです。そして少しでも行列を短くしようと、ずっとパンを焼き続けていたために、夏の厨房の暑さも以前から大きな課題となっていました。

移転先は、元のお店近くにあったカフェ併設の姉妹店「15℃」の跡地。約30坪と広くなり、願っていたとおり、パン以外のさまざまな物も販売できるようになりました」と杉窪シェフ。

素材の魅力を伝える。「365日」のパンに込められたこだわり

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製パンの技術書を読み込むことで、ほぼ独学でパン作りを学んだ杉窪シェフ。でも、どんなに本の通りに作っても、杉窪さんがおいしいと思えるパンはできあがりませんでした。

またパンを作るプロセスについても、「なぜこうするんだろう?」という疑問がたくさん出てきたそうです。

「その答えを探して、ひとつひとつのプロセスを検証していきました。そこで気づいたのは、日本のベーカリー業界で教え継がれている手法は、必ずしもおいしさだけが目的ではなく、“見た目の失敗がないこと、大きく膨らむこと”を重視しているということでした。

その発想の根本にあるのは、量を優先する“食糧としてのパン作り”。確かに食糧事情が悪く、そういうパンが歓迎された時代もありましたが、今はそうではありませんよね。なのになぜか、昔の作り方がずっと継承されているんです」と杉窪シェフ。

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「365日」のパンがすごいのは、目指している「小麦粉をはじめとする素材の味や香りを楽しんでもらうパン」を作るために、杉窪シェフがすべてのプロセスを再検証し、パン作りをリノベーション(新しく構築する)していること。

例えば多くのパン屋さんでは、膨らみをよくするために生イーストを使って発酵させるのが常識。でも実は生イーストはイーストの臭いが非常に強く、それが小麦本来の風味を邪魔してしまうことも。

杉窪シェフは、小麦粉をはじめ素材の風味をダイレクトに伝えるため、イーストのなかでも一番臭いが弱い、インスタントドライイーストを使っています。

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また、生地に水分が多いほど成型しにくくなるため、一般的なパンは小麦粉100に対して水60%から、多くても70%くらいの割合になっています。

しかし「365日×バゲット」は92%、「365日×食ぱん」は約80%、「北海道×食ぱん」は約90%もの水分を加えています。水分が多いために、グルテンが形成されにくく、歯切れの良い食べやすいパンに仕上がっているのです。

このように、ふつうの製パン法とは真逆をいく工程も多いのですが、杉窪シェフのなかでは、理論にもとづいたしっかりした理由があるのです。
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