ライター : 伊藤 千亜紀

フードアナリスト

日本酒度ってなに?

近年、健康にも美容にも良いと注目を浴びている日本酒。都内各地では、日本酒バーや日本酒専門店があったり、日本酒のイベントも頻繁に開催されています。日本酒は、各地で特産品として盛んに製造されているので、バリエーションも豊富です。風味や香りの飲み比べも楽しく、幅広い年代の方に愛されている飲み物になってきています。
ところで、お酒の裏ラベルなどに記載されている「日本酒度」とは何かご存知ですか?辛口、甘口という表記の他に、「-4」「+2」などというプラスマイナスの数字が記載されています。「記載されているのは知っているけど、あまり気にしたことがないな……」という方も多いのではないでしょうか。 実は、この日本酒度とは、水と日本酒の比重を示した数値です。一般的には、日本酒の「辛口」「甘口」を見分ける目安として知られています。プラスの数値が高いほど辛口で、マイナスの数値が高いほど甘口を示しています。具体的な目安としては+3〜5程度で辛口、-3〜5程度で甘口です。それぞれの数値が6以上になると「大辛口、大甘口」といわれていて、10以上になると「超辛口、超甘口」などと言われたりします。 一般的には辛口、甘口を見分ける目安として知られている、とご説明しましたが、実はこの数値はあくまでも「目安の数値」です。日本酒度が高いからといって、必ずしも辛く感じるわけではなく、低いからといって必ずしも甘く感じるわけではありません。少し複雑な数値なので、詳しくは後ほどご説明します!

「日本酒度が高い・低い」って?

日本酒度とは水と日本酒の比重を示した数値と前述しましたが、この「水と日本酒の比重」とは、簡単に言うと「水より軽いか重いか」です。これは、日本酒に含まれる糖分やアルコールの量に左右されます。日本酒とは、米と米麹と水を原料として、アルコール発酵させたものです。麹の酵素によって米のデンプンを糖分に変えて(糖化)、酵母の力でアルコール発酵をしていきます。このお酒を造る工程で出る糖分やアルコールの量を計測します。 ・糖は、水より重い ・アルコールは、水より軽い 糖分は水より重いため、糖分の量が多くなるとお酒は重くなります。お酒の質量が重い(糖分がたくさん残っている)ほど日本酒度はマイナス(低く)になり、反対にお酒の質量が軽いほど日本酒度はプラス(高く)になります。日本酒度が高いとそれだけ糖分が少ないということなので、辛口に感じることになります。アルコールは水より軽いため、同じ糖分量でもアルコールが多くなると日本酒度はより高くなるということです。

日本酒度の測り方

日本酒度を計る際には、日本酒度計を使用します。計測する際、日本酒は15度、水は4度の状態で計測するという決まりがあります。これは、水は4度の状態が最も重くなる温度だそうですが、日本酒の温度設定の明確な理由は分かりません。一説によると、日本の平均的な室温である15度に合わせたという説もあります。 方法としては、15度の日本酒を注いだシリンダーに「日本酒度計」と呼ばれる目盛り付きの浮き秤をプカプカと浮かべて計測します。浮かべた際に、どこまで沈むかを目盛りで計測します。この計測した値が日本酒度となります。4度のお水と同じ重さの場合は日本酒度が(±)0、それより軽いものはプラスの値、重いものはマイナスの値となります。原始的な計測方法をしているんですね。 ちなみに、この日本酒度はあくまで「もろみを計るタイミング」で計っているものであって、出荷後は数値が変化する可能性があるそうです。また、同じ銘柄でも樽や時期によっても、数値は異なるそうですよ。ですので、あくまで参考の値として考慮してください。

甘口・辛口の目安には「酸度」も重要!

ここまで日本酒度のご説明をしてきましたが、日本酒の味わいには「辛口」「甘口」といった辛さだけではなく、実は「酸度」も深く関係しています。 酸度とは、日本酒を作る際に酵母や米から発生した乳酸やリンゴ酸、コハク酸、クエン酸などの酸の含有量を示します。細かく説明すると、10ml中に含まれる酸を中和するために必要な「水酸化ナトリウム溶液」の量を数値化しているものです。おおよそ日本酒の平均値は0.5〜3.0程度です。 通常「酸」というと、すっぱいというイメージを抱くと思いますが、日本酒の場合は少し異なります。日本酒における酸は「味を引き締める」役割をすることが多いのです。酸度が高いと味にメリハリがつくため、濃厚・芳醇な味わいになり、結果的に辛口に感じます。酸度が低いと淡麗と言われ、甘口に感じます。1.8以上で高め(辛口)、1.6以下で低め(甘口)になると言われています。 例えば、仮に日本酒度が同じ場合、酸度が高い方が辛口になるということです。一口に辛口、甘口と言っても、酸度によって味覚の感じ方が異なるのが日本酒の面白いところですね。

驚異の+28度の日本酒があった!

普段レストランや酒屋さんで見かける、日本酒の日本酒度は1桁台が多いと思いますが、驚くことに+28度の日本酒も存在します!キャッチフレーズは、「目指すは日本で一番辛いお酒」。名前につけられた「爆辛」という言葉にも、その意気込みが伝わってきます。しかも、加水なしの生原酒と、とてもデリケートなお酒です。水を加えていないため、アルコール度数はやや高めの18%です。一概に日本酒度で辛口・甘口を測れないと言ってきましたが、さすがにこの数値だと辛さは実感できると思います。好きな方ははまってしまうお酒かもしれません。
まずは、口に含むと意外や意外、グレープフルーツのようなフルーティな爽やかな香りがします。お味としては、口の中に広がるスッキリとしたお米の旨みの後に、パンチがきいた辛味が広がるのが特徴です。スッキリとした中にも、きちんと旨味を感じられるテイストに仕上がっています。飲食店にはなかなか置いておらず、酒屋さんで取り寄せる必要もあるかもしれませんが、目にしたらぜひ手に取ってみてください。辛口の日本酒好きの方に試していただきたい一本です。

辛口ならこちらもおすすめ!

辛口がお好きな方には、日本酒度+10のこちらもオススメです。米鶴酒造は、自然環境に恵まれた地で、蔵人を含む地元農家が提携して「高畠酒米研究会」をという会を発足させ、酒米から育てるという地元米にこだわりを持っている酒造です。 純米造りの完全熟成醪(もろみ)による旨味と辛み、そして切れ味をうまく表現している超辛口の特別純米酒になっています。お米からこだわっているだけあって、数字以上にピュアな味を堪能いただけると思います。こちらも香りは洋梨を思わせるフルーティな香りです。飲む際には、常温からぬる燗がオススメです!
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