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偶然から生まれた、必然の30年
松阪市の山間、本織神社の境内に隣接するかたちで営む一軒の料理店がある。自然生(自然薯)料理「本織庵」。こちらのお店では専門業者と年単位で契約することで、高い品質の自然生を低価格で楽しめるのがウリだ。提供されている定食には、様々な料理となって自然生が提供されている。
店主・加納達司さん(61)が暖簾を掲げてから、26年の11月でちょうど30年。しかしその出発点は、本人の言葉を借りれば「冗談で始めた」ようなものだったという。
今回はそんな「本居庵」と「加納さん」に焦点を当ててみよう。
店主・加納達司さん(61)が暖簾を掲げてから、26年の11月でちょうど30年。しかしその出発点は、本人の言葉を借りれば「冗談で始めた」ようなものだったという。
今回はそんな「本居庵」と「加納さん」に焦点を当ててみよう。
愛知県小牧市に生まれた加納さんは、工業高校を中退し17歳で三重県へと流れ着いた。20歳で高校を卒業し大阪の調理師専門学校へ進学。その後は東京を拠点に、中華、和食、製パンと、ジャンルを問わず料理の世界を渡り歩いた。東京での修業を終えた後、実は国際免許とパスポートを手に海外永住を本気で考えていたという。
そんな加納に転機が訪れたのは32歳のとき。本居神社の宮司をはじめ、地元の経営者たちが共同出資で新たな飲食店を立ち上げる計画を持ちかけてきた。加納の父親がの企業の取締役を務めていたという縁もあり、周囲の思いが重なってこの店は産声を上げた。1996年5月に有限会社本居庵を設立し、同年11月28日オープンにこぎつけた。
そんな加納に転機が訪れたのは32歳のとき。本居神社の宮司をはじめ、地元の経営者たちが共同出資で新たな飲食店を立ち上げる計画を持ちかけてきた。加納の父親がの企業の取締役を務めていたという縁もあり、周囲の思いが重なってこの店は産声を上げた。1996年5月に有限会社本居庵を設立し、同年11月28日オープンにこぎつけた。
自然生という、希少な選択
本居庵が30年間一貫して提供し続けているのが、自然生を主役に据えた料理だ。自然生は長芋や大和芋、筑前芋などとは全く異なる独立した品種であり、その粘り強さと風味の深さは他の山芋類とは一線を画す。日本全国を見渡しても、自然生料理の専門店は少なく、三重県内では本居庵を含めてわずか三店舗ほどしか存在しないという。
加納さんが自然生料理に目を向けたきっかけは、愛知県瀬戸市で「とろろ庵」を営む叔父の存在だった。親子二代にわたって45年以上続くその店で半年ほど修行し、自然生料理の基礎を叩き込まれた。
自然生の仕入れは、長年信頼を築いてきた専門業者との契約によって成り立っている。年間の使用量をあらかじめ見積もり、業者に取り置きを依頼する形態だ。業者との関係を対等かつ誠実に保つことを加納は重視している。自然生の旬は10月から4月ごろまで。この季節の変化に合わせてメニューを柔軟に組み替えているという。
「絞る」ことの強さ—メニュー哲学と倒産の危機
本織庵の歴史には、一度大きな経営危機があった。メニューを増やし続け、常に多品目を揃えようとした時期に行き詰まったのだ。右にも左にも首が回らなくなったその経験が、加納の経営哲学を根本から変えた。
それ以来、加納が徹底しているのは「メニューを絞る」という方針だ。刺身がついた定食は、市場で仕入れられた魚ときだけ提供し、売り切れたらすぐにメニューから外す。季節ごとにおすすめを入れ替えて最小限に保つ。自然生が旬の時期から外れている時には天ぷらや肉料理と組み合わせることで、素材の弱点を補いながら料理としての完成度を維持する。
それ以来、加納が徹底しているのは「メニューを絞る」という方針だ。刺身がついた定食は、市場で仕入れられた魚ときだけ提供し、売り切れたらすぐにメニューから外す。季節ごとにおすすめを入れ替えて最小限に保つ。自然生が旬の時期から外れている時には天ぷらや肉料理と組み合わせることで、素材の弱点を補いながら料理としての完成度を維持する。
人気メニューとして長年愛されているのが、自然生の蒲焼きだ。甘辛いタレと自然生の粘りが絶妙に絡み合う一品として、リピーターを生み出し続けている。定食類ではむきとろ定食が看板商品だが、最もコストパフォーマンスに優れ多くの客が注文するのはレディースセットだという。両方を食べた客のほぼ全員がレディースセットを注文するという事実が、この店の正直さを物語っている。
また、とろろ汁はそのままでも十分な味付けがされているが、好みに応じて醤油を少量加えたり、わさびや刻みネギ、海苔をトッピングしたりすることもできる。これらは無料で提供しており、客の好みに寄り添う姿勢が随所に感じられる。
また、とろろ汁はそのままでも十分な味付けがされているが、好みに応じて醤油を少量加えたり、わさびや刻みネギ、海苔をトッピングしたりすることもできる。これらは無料で提供しており、客の好みに寄り添う姿勢が随所に感じられる。
「庵」という名に込められた謙虚さ
店名の「本居庵」は、すぐ隣に鎮座する本居神社に由来する。また、「庵」という漢字には、「粗末な建物ですが」というへりくだりの意味が込められているという。加納が三十年かけて体得してきた経営哲学と、どこか深いところで通じ合っているようだ。
従業員こそが、店の根幹
加納が30年間で最も大切にしてきたことを問われると、迷わず「従業員への感謝」と答える。開店当初、加納さんに対する評価として周囲の誰もが「あの性格では従業員がついてこない」と断言していたという。加納さん自身もそう思っていた。ところが現実は全く逆で開店から30年近く勤め続けるスタッフを始め、10年と長期にわたって働き続けるスタッフが複数いる。
加納は「従業員をきちんと教育し、従業員が気持ちよく働ける環境を整えれば、その従業員が自然とお客様に気を使うようになる」という考えを持つ。客へのサービスは、スタッフへの敬意から始まるという哲学だ。喧嘩もするし、ぶつかることもある。それでも長く続く関係があるのは、根底に互いへの敬意があるからだろう。
加納は「従業員をきちんと教育し、従業員が気持ちよく働ける環境を整えれば、その従業員が自然とお客様に気を使うようになる」という考えを持つ。客へのサービスは、スタッフへの敬意から始まるという哲学だ。喧嘩もするし、ぶつかることもある。それでも長く続く関係があるのは、根底に互いへの敬意があるからだろう。
現状維持という、最も難しい挑戦
これからの本織庵について問われると、加納さんは「現状維持と味の追求」という言葉を選ぶ。新メニューを増やすことよりも、今あるメニューの一つひとつのクオリティを高め続けることに集中する。経験から導き出した結論だ。
本織庵は今日も、本居神社の袂で暖簾を出す。30年前、父親に請われ冗談のつもりで始めた店が、いつの間にか加納達司の人生そのものになっていた。自然生の粘り強さに、どこか店主の生き様が重なって見えるようだ。
本織庵は今日も、本居神社の袂で暖簾を出す。30年前、父親に請われ冗談のつもりで始めた店が、いつの間にか加納達司の人生そのものになっていた。自然生の粘り強さに、どこか店主の生き様が重なって見えるようだ。
本居庵
〒515-0073
三重県松阪市殿町1533−2
木曜日
11:00〜15:00
16:30〜20:00
月曜日
定休日
火曜日
11:00〜15:00
16:30〜20:00
水曜日
11:00〜15:00
16:30〜20:00
木曜日
11:00〜15:00
16:30〜20:00
金曜日
11:00〜15:00
16:30〜20:00
土曜日
11:00〜15:00
16:30〜20:00
日曜日
11:00〜15:00
16:30〜20:00
0598-22-1283
席数
16席
L.O.
ランチ:15:00、ディナー:売り切れ次第終了
定休日
なし
最寄駅
松阪駅より車で10分
支払方法
現金のみ
平均予算
1,000〜2,000円
駐車場
店横6台※本居神社の駐車場も利用可
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※記事の内容は、公開時点の情報です。記事公開後、メニュー内容や価格、店舗情報に変更がある場合があります。来店の際は、事前に店舗にご確認いただくようお願いします。
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