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三重県松阪市飯高町、緑深い山あいに一軒のカフェがある。大きな窓の向こうに広がる自然の景色、静かに流れる時間、そして丁寧に作られた植物性の料理。「CAFE DU HAZERU-カフェ・ドゥ・ハゼール」は、都市の喧騒から遠く離れたこの地で、食と暮らしの本質を問い続けている。オーナーの横山陽子さん(50)のその穏やかな笑顔と若々しい佇まいは、この土地での暮らしが彼女にもたらしたものを雄弁に語っている。
22年間の会社員生活が終わるまで
横山さんの人生の軌跡は、一見すると大きな転換の連続のように見える。しかしその根底には、一本の細い糸のように、「自分らしい暮らしへの目標」が静かに通い続けていた。
岐阜県で育った横山さんは短大を卒業後、県内の一般企業に就職。そこから22年間名古屋市内で仕事を続けた。人間関係は良好で、週末には自転車仲間と走り回り、傍から見れば充実した都市生活だったかもしれない。
しかしその生活は、じわじわと彼女の体を蝕んでいき、やがて体調を崩して会社を辞めることになる。1年間の休養期間、横山さんはそれまでとは全く異なる思想と出会う。それが「マクロビオティック」だった。
マクロビオティックは、陰と陽のバランスを整えることを基本とし、食だけでなく心のあり方、生活全体を包括する哲学だ。大切なのは、何を食べるかよりも、どのように整えるかという視点。この考え方は、横山さんの中で都市生活への違和感と静かに共鳴し、田舎への移住という、内に秘めていた長年の夢をより具体的な形へと押し上げていった。
休養後、横山さんは名古屋の自然食品店で約1年働き、そこでパン作りのレシピなど実践的な知識を身につけた。そして田舎への移住を模索する中で、松阪市との縁が生まれることとなる。
岐阜県で育った横山さんは短大を卒業後、県内の一般企業に就職。そこから22年間名古屋市内で仕事を続けた。人間関係は良好で、週末には自転車仲間と走り回り、傍から見れば充実した都市生活だったかもしれない。
しかしその生活は、じわじわと彼女の体を蝕んでいき、やがて体調を崩して会社を辞めることになる。1年間の休養期間、横山さんはそれまでとは全く異なる思想と出会う。それが「マクロビオティック」だった。
マクロビオティックは、陰と陽のバランスを整えることを基本とし、食だけでなく心のあり方、生活全体を包括する哲学だ。大切なのは、何を食べるかよりも、どのように整えるかという視点。この考え方は、横山さんの中で都市生活への違和感と静かに共鳴し、田舎への移住という、内に秘めていた長年の夢をより具体的な形へと押し上げていった。
休養後、横山さんは名古屋の自然食品店で約1年働き、そこでパン作りのレシピなど実践的な知識を身につけた。そして田舎への移住を模索する中で、松阪市との縁が生まれることとなる。
地域おこし協力隊という出会い
松阪市に知人がいたことから、ある日横山さんは市役所の移住課を訪ねた。そこで紹介されたのが、地域おこし協力隊という制度だった。松阪市にとって初めての協力隊員となった横山さんは、市と手探りで進めなければならない状態であったという。
そこで横山さんは、その活動を食と地域文化の継承に注ぐこととなる。中でも特筆すべきは、エゴマの灰汁を使った昔ながらのこんにゃく作りとの出会いだ。地域のおばあちゃんから教わったこの製法は、手間のかかる完全手作りのプロセスだ。この製法を受け継ぐ人がほとんどいなくなっていることを知った横山さんは、ワークショップを通じてその技術を広める活動を始めた。
また、地域のお母さんたちと郷土料理を一緒に作り、学ぶ機会も設けた。飯南高校の魅力発信や、空き家バンクの立ち上げ支援にも携わり、移住者と地域住民をつなぐ役割を担った。協力隊の3年間で築いたネットワークは、後のカフェ運営の土台となる人間関係を生み出した。
「CAFE DE HAZERU」という名前に込めた願い
ハゼールが入る一軒家には、もともと「はぜの風」というクレソン料理の店があった。地域のお母さんが長年営んできた予約制のレストランだ。協力隊時代から手伝いを通じて深い信頼関係を築いていた横山さんに、彼女はある日「年齢的にも体力的にも大々的な営業を続けるのが難しくなってきた、この場所を使っていいよ」と告げた。
横山さんは、2022年10月に店をオープン。店名の「HAZERU(ハゼール)」は、この地域の名称「ハゼ」と、「はぜる」という日本語の動詞を掛け合わせた造語だ。はぜるとは、弾けるように広がること。この山里に人が集まり、賑わいが生まれる——そんな願いが店名に込められている。内装はほぼそのままに、インテリアを少し変えただけで、建物の持つ温かみはそのまま受け継がれた。
店のコンセプトは、動物性食材を一切使わない植物性料理だ。出汁でさえ、椎茸や昆布などの植物性のものだけを使う。大切なのは、体に良いものを、自分が食べたいと思うものを、丁寧に作って提供すること。その姿勢こそが、このカフェの核心にある。
横山さんは、2022年10月に店をオープン。店名の「HAZERU(ハゼール)」は、この地域の名称「ハゼ」と、「はぜる」という日本語の動詞を掛け合わせた造語だ。はぜるとは、弾けるように広がること。この山里に人が集まり、賑わいが生まれる——そんな願いが店名に込められている。内装はほぼそのままに、インテリアを少し変えただけで、建物の持つ温かみはそのまま受け継がれた。
店のコンセプトは、動物性食材を一切使わない植物性料理だ。出汁でさえ、椎茸や昆布などの植物性のものだけを使う。大切なのは、体に良いものを、自分が食べたいと思うものを、丁寧に作って提供すること。その姿勢こそが、このカフェの核心にある。
週替わりのワンプレートと、土地の恵みを映すスイーツ
フードメニューはシンプルだ。週替わりのワンプレートランチに、スープ、ご飯またはパンが付く。スイーツとドリンクのセットを追加することもできる。プレートにはサラダを含む5品ほどが並び、メインには車麩カツのような手の込んだ一品が登場することもある。
食材は、できる限り農薬不使用または減農薬のものを選択。地域の農家から仕入れたり、自ら畑で育てたりしながら、旬の野菜を中心に構成する。砂糖はきび糖を使用し、化学調味料は一切使わない。味付けの基本は変えず、季節によって野菜が変わるというシンプルな構造が、このカフェの料理の骨格だ。
パンにも独自のこだわりがある。玄米ご飯を生地の約半分に練り込んだ天然酵母パンは、名古屋の自然食品店時代に学んだレシピを受け継いだものだ。小麦だけでなく玄米も入ることで、体への負担が軽減される。手間はかかるが、このパンを目当てに訪れる客も少なくない。
食材は、できる限り農薬不使用または減農薬のものを選択。地域の農家から仕入れたり、自ら畑で育てたりしながら、旬の野菜を中心に構成する。砂糖はきび糖を使用し、化学調味料は一切使わない。味付けの基本は変えず、季節によって野菜が変わるというシンプルな構造が、このカフェの料理の骨格だ。
パンにも独自のこだわりがある。玄米ご飯を生地の約半分に練り込んだ天然酵母パンは、名古屋の自然食品店時代に学んだレシピを受け継いだものだ。小麦だけでなく玄米も入ることで、体への負担が軽減される。手間はかかるが、このパンを目当てに訪れる客も少なくない。
スイーツには特に横山さんの個性が光る。春になると自ら摘みに行くよもぎを使ったケーキは、リピーターから毎年心待ちにされている。取材時の季節はいちごを使ったスイーツが並ぶ。ケーキは通常2種類、多い日には3種類が揃う。
この日は豆乳を使用したレアチーズケーキの他にキャロットケーキやラムレーズンアイスがラインナップしていた。苺の部分は寒天で固められており、ゼリー寄せのような食感で、甘みを抑えたチーズケーキとの相性はぴったりだ。キャラメルのような甘みを感じるホットコーヒーを合わせれば、至福のひと時を楽しむことができるだろう。
この日は豆乳を使用したレアチーズケーキの他にキャロットケーキやラムレーズンアイスがラインナップしていた。苺の部分は寒天で固められており、ゼリー寄せのような食感で、甘みを抑えたチーズケーキとの相性はぴったりだ。キャラメルのような甘みを感じるホットコーヒーを合わせれば、至福のひと時を楽しむことができるだろう。
「普通」を思い出せる山奥のカフェ
このカフェが提案しているのは、実は「本来の普通」への回帰だ。発酵食は日本の食文化の根幹であり、季節の食材を使うことは昔では当たり前のことだ。このカフェが静かに、しかし確実に伝えているメッセージは、「食べることは、生きることの中心にある」という、シンプルでありながら深い真実である。
4月には桜が咲き、テラスからの眺めはさらに美しくなる。夏には深い緑、秋には紅葉、冬には雪景色。季節ごとに表情を変えるこの場所で、横山さんは今日も丁寧に料理を作り、客を迎える。
玄米を丁寧に発酵させ、にんじんを丁寧にすりおろしてドレッシングを作り、季節のの素材を使って調理をし、果物をソースに使う—その積み重ねの中に、このカフェの哲学のすべてが宿っている。体に良いものを、土地の恵みを、人の温もりを、一皿に込めて届けること。カフェ・ドゥ・ハゼールは、食を通じて「本当の豊かさ」を問い続ける、山里の小さな振り返りの場だといえるだろう。
4月には桜が咲き、テラスからの眺めはさらに美しくなる。夏には深い緑、秋には紅葉、冬には雪景色。季節ごとに表情を変えるこの場所で、横山さんは今日も丁寧に料理を作り、客を迎える。
玄米を丁寧に発酵させ、にんじんを丁寧にすりおろしてドレッシングを作り、季節のの素材を使って調理をし、果物をソースに使う—その積み重ねの中に、このカフェの哲学のすべてが宿っている。体に良いものを、土地の恵みを、人の温もりを、一皿に込めて届けること。カフェ・ドゥ・ハゼールは、食を通じて「本当の豊かさ」を問い続ける、山里の小さな振り返りの場だといえるだろう。
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※記事の内容は、公開時点の情報です。記事公開後、メニュー内容や価格、店舗情報に変更がある場合があります。来店の際は、事前に店舗にご確認いただくようお願いします。
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