ライター : china0515

フードアナリスト2級

日本の老舗漆精製所「堤淺吉漆店」がPFV賞を受賞

Photo by プリマム・ファミリエ・ヴィニ

明治42年創業の京都老舗漆精製所「堤淺吉漆店」が、第3回プリマム・ファミリエ・ヴィニ(PFV)賞を受賞。京都・両足院にて日本初開催の授賞式がおこなわれました。

「PFV賞」とは?

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「PFV賞」は、世界でもっとも歴史のあるワイン生産家12社からなる組織、プリマム・ファミリエ・ヴィニが2020年に創設した賞。卓越した家族経営企業を支援することを目的とし、毎年10万ユーロの賞金とともに伝統を守りながら革新を続ける企業の功績を称えます。

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PFV賞は家族経営企業が経済や文化、伝統工芸の維持に果たす重要な役割を広く伝えることを目指しているといいます。

2021年にはヨーロッパ最古のヴァイオリン工房であり、歴史的楽器の修復技術に優れる「メゾン・ベルナール(ベルギー)」が受賞、2022年には8代続く高級繊維メーカーであり、伝統的な繊維技術と持続可能性を両立する「ブラン・ド・ヴィアン=ティラン(フランス)」が受賞しました。

日本初開催。京都でおこなわれた授賞式の様子

Photo by プリマム・ファミリエ・ヴィニ

2025年度のPFV賞は世界各地の多くの家族経営企業から応募が寄せられたが、PFVが大切にする「クラフトマップ」「伝統」「革新」の価値を備えた5つの家族をファイナリストに選出、最終的に伝統と革新の両立がとくに際立っていた堤家が受賞されました。

授賞式にはPFVメンバーが来日し、堤淺吉漆店の卓越した品質へのこだわりや持続可能な取り組み、世代を超えた職人技を称えました。

受賞した堤さんは「この度の受賞は、私たち家族と職人の技にとって大きな名誉です。100年以上に渡り、漆の精製技術を守り、発展させることに尽力してきました。PFV賞を受賞したことで、私たちの持続可能性、革新、そして次世代へこの伝統を受け継いでいくという決意がさらに強まりました」と語りました。

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授賞式後はミシュラン1つ星を獲得した昭和3年創業の京料理店「本家たん熊 本店」にて全12種類のPFVワインとのペアリングを堪能。

向付は新鮮な鯛やサヨリ、車海老にはフランスの「シャトー・オー・ブリオン・ブラン 1996 ドメーヌ・クラレンス・ディロン」。ハチミツやナッツの香りとクリーミーでリッチな味わいを感じられました。

Photo by china0515

出汁の香りが上品な、とろっとした餡のうずら饅頭の蒸し物に合わせるのは、「リースリング シェルハマー 2009, ファミーユ ヒューゲル」。

フルーティーな香りと、ドライでジューシーな味わいを楽しめました。

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ペアリングでは、全12種類の貴重なワインを飲み比べ。どのワインも生産者のみなさんが誇る最高峰の逸品。贅沢な時間を堪能しました。

この日サーブされたワインは、すべて全国各地のワインショップENOTECAで販売されています。

「堤淺吉漆店」の拭き漆を体験

Photo by china0515

このたび受賞した「堤淺吉漆店」は、明治42年創業の老舗漆精製メーカー。国内に流通する漆の70%以上を取り扱い、トップシェアを誇ります。

ウルシの木から採取した樹液を精製し、漆として提供。1本1本のウルシの木が持つ個性を見極めながら、色や粘度、光沢、硬化速度などを調整し、高品質な漆を生み出しているのが特徴です。「堤淺吉漆店」の漆は、食器や美術工芸品の塗装に使われ、職人たちの手で受け継がれています。

Photo by china0515

筆者も実際に、拭き漆(ふきうるし)を体験しました。拭き漆とは、生漆を木地に塗り、布で拭き取ることで木目を生かして仕上げる技法なのだそうです。

今回は箸に漆を塗りましたが、触れるとかぶれることがあるため、慎重に作業を進めました。本来はこの工程を6回ほど繰り返して、少しずつ色を重ねていくのだとか。

完成した箸は約1ヶ月間乾燥させたあと、使用できるようになるそうで、どんな色に仕上がるのか今から楽しみです……!

日本が誇る漆文化を次世代へ

今回、日本で初めてPFV賞を受賞した老舗漆メーカー「堤淺吉漆店」。堤さんは、漆文化を次世代へつなげたいという熱い想いを語っていました。

実際に「堤淺吉漆店」では、堤さん自身の経験を生かして漆塗りのサーフボードを制作。
さらに、より多くの人が漆に触れられるようにと社屋を改装し、体験施設「Und.」もオープンしています。

今回のPFV賞は、日本が誇る漆文化に触れるきっかけにもなりました。興味のある方は、ぜひ「堤淺吉漆店」を訪れてみてはいかがでしょうか?

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