幕末に登場した「千枚漬」は宮中料理人が考案

「江戸時代末期になると、京漬物の代名詞、千枚漬が登場。宮中料理人の大藤藤三郎が、聖護院かぶらを薄く切り、塩や酢に漬けるという新しい調理法を考案しました。明治維新とともに、天皇が東京に移った後も、京に残った藤三郎は、その調理法を確立させ、『千枚漬』として売り出しました。

それまでは長期保存食としての位置づけが中心だったお漬物とは異なり、聖護院かぶらの純白で美しい姿と上品な味わいは多くの人を魅了し、『すぐき』『しば漬』とともに京を代表するお漬物として「千枚漬」はその地位を築いていきました」

食文化のひとつとしてのお漬物

「明治以降、西洋化の波は日本の食卓にも訪れましたが、お漬物は変わらず副菜の重要な地位を占め、ご飯の良きパートナーとして今日まで歩んできています。それは千枚漬のように、郷土を代表するお漬物が全国各地にしっかりと根づいていることからも分かります。

北海道の松前漬、岩手の金婚漬、東京のべったら漬、長野の野沢菜漬、奈良の奈良漬、広島の広島菜漬、福岡の高菜漬など、日本の食文化を支える重要な役割を担うお漬物が数多くあります。

さらに2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されて以来、「飯・汁・菜・香の物(お漬物)」の組み合わせとして、お漬物が世界からも注目される存在になっています」

新米と京漬物でおいしい秋をさらに満喫

炊き立てのご飯に京漬物。シンプルに新米を楽しむにはベストの組み合わせですね。教えてもらった「千枚漬」「茄子」「大根」「みぶ菜」「たまねぎ」のどれもがご飯の風味を際立たせ、かつそれぞれの味が食べる喜びをふくらませます。

おいしい秋、京漬物とともに、新米のおいしさを存分に満喫してくださいね。
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