4. スパイスは、バランスよく配合されたものを使う

「カリーの肝となるのはスパイス。ひとつずつ組み合わせても良いですが、バランスよく調合されたものを用意するとラクです。

カリー粉に関しては、ご家庭で『中村屋純印度式カリー』を再現できるように特別に調合したものを販売しています。細部までこだわってブレンドした商品なので、ご家庭で再現される際には、ぜひ使ってみてください」

Photo by 島田みゆ

新宿中村屋から発売されているオリジナルスパイス「純カリー粉」(465円)

本場のインドカリーが、日本の中村屋で提供されたワケ

こだわりが詰まった「中村屋純印度式カリー」。そもそも、なぜ提供されることになったのか、歴史を覗いてみましょう。

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――なぜ、中村屋でインドカリーが誕生したのでしょうか?

石崎さん(以下、石崎) 中村屋の創業者である相馬夫妻と、インド独立運動で活躍した革命家 ラス・ビハリ・ボースとの出会いが始まりでした。インドから来日していたボースは、日本から国外退去を命じられていたのですが、気の毒に思った相馬夫妻などが、中村屋のアトリエでかくまうようになったのです。

それがきっかけで、ボースは相馬夫妻の娘・俊子と結婚。俊子は早くに亡くなってしまったのですが、その後もボースは中村屋と交流を深めていました。

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店内に飾られたラス・ビハリ・ボース氏と妻・俊子氏の写真
当時の日本では、イギリスから伝わった欧風カレーが一般的でした。

ボースはこのカリーがおいしくないと感じていて、「インドの本場の味を広めたい!」と喫茶部(レストラン)の開設とともにインドカリーをメニューに入れよう提案したのです。そうして「中村屋純印度式カリー」が誕生しました。

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――それまで日本でなじみのなかったインドカリーを、どう広めたのですか?

石崎 やはり、はじめはなかなか受け入れられなかったそうです。そのため、「日本人の口に合う本場のインドカリー」を作るため、材料に徹底的にこだわりました。

当時は養鶏場や牧場を保有して、カリーに合う素材を追求していました。お米もそれまでのインディカ米をやめ、米穀研究家に相談してカリーに合う日本米を調査。「白目(しろめ)米」という、将軍に献上されていた高品質な品種を使うようにしたのです。

そうした試行錯誤を経て日本人の好きな味を作り出し、おいしいインドカリーとして受け入れられていきました。

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ーー純印度式カリーで、特にこだわっているのはどんなところですか?

石崎 作り方は、誕生当時から変わっていません。こだわっているのは素材ですね。これはインドカリーに限らず、すべてのメニューや商品に言えます。理想を形にするために、こだわって調達や開発、調理などをしています。

また、いつ食べても同じ味であることもモットーのひとつです。当店は常連のお客様も多いので、どんな状況、どんな時間帯であっても、一定の味やサービス、クオリティを保つことを意識しています。ですから、入店状況によって、作るタイミングや炊くお米の量も変えているんです。

良い素材を使って作り、いかにおいしい状態でお客様にお出しするか、それを一番に考えていますね。

「中村屋純印度式カリー」のおいしさを家庭でも!

「カリーは当社の代表商品。長い歴史のなかで、いろいろな試行錯誤があったからこそ、今まで残すことができています。これからも、多くのお客様からの期待を裏切らないよう、新宿中村屋の柱のひとつとして守らねばという使命感がありますね」と石崎さん。

「中村屋純印度式カリー」のおいしさは、素材同士の相性、スパイスの配合など、徹底して考え抜かれたバランスにありました。本場の味を日本人の口に合うようにと研究した、まさに先人たちの努力の賜物。

今日は、いつものカレーをちょっとこだわりのインドカリーに。スパイスと歴史の深みを、じっくり味わってみてください。

撮影・文/島田みゆ
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新宿中村屋Manna
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