ライター : macaroni 編集部

教えてくれる人

さかなプロダクション&さかなの会 代表 おさかなコーディネータ / ながさき一生さん
新潟県糸魚川市の漁村である筒石にて、漁師の家庭に生まれる。18年間家業を手伝い、東京海洋大学へ進学。卒業後は築地市場の卸売会社にて勤務を続け、同大学院にて魚のブランド研究により修士号を取得する。2006年より水産庁が立ち上げた「浜の応援団」にも登録されている「さかなの会」を主宰し、“食べる魚”を視点としたイベントを多数開催。大手IT企業にてITビジネスやマーケティングの知見を身につけたのち独立し、幅広い魚の知識とビジネス感覚を活かし、著書の出版や雑誌・新聞・ラジオなど多方面にて現在も活躍中。

コロナ禍で行き場をなくした魚介たち

漁師の家庭に生まれ、毎日当たりまえのように新鮮でおいしい魚を食べて育ったおさかなコーディネータのながさき一生さん。上京後、都会の食生活に危機感を覚え、日本の魚食文化を世界に広める活動をはじめたそうです。まず、魚を取り巻く現状について伺いました。

ながさきさん:
「コロナをきっかけに飲食や観光の需要が大きく減り、昨年の緊急事態宣言から飲食観光向けの水産物の流通がかなり滞った厳しい状況になりました。特に伊勢海老やウニ、クロマグロなどの高級といわれる魚介の流通は、ほぼほぼ止まってしまったといってもいいでしょう。

緊急事態宣言解除後は少しずつ状態はよくなっていきましたが、ウニや貝などの冷凍すると味が落ちてしまう魚介の被害は相当なものです。冷凍できるものでさえも、コロナが長期化し影響が出ています」

特に養殖魚への負担が大きい

Photo by shutterstock

ながさきさん:
「とはいえ、アジやサバなどの大衆魚はそこまで滞っていません。じつはもっとも被害が大きのは、養殖魚なんです。

養殖魚は、出荷時期に合わせて成長をコントロールしているんです。逆にいえば、適したサイズを超えてしまうと商品価値がなくなってしまうんですね。コロナの影響で営業できない飲食店が増え、サイズを超えてしまった養殖魚たちの行き場がなくなり養殖業者は今もかなり苦労しています。

ではサイズを超えてしまった魚はどうなるのかというと、安値で売るか処分されているのが現状です。コロナによるフードロスは、皆さんが思っているよりもずっと深刻なのですよ。なので、この状況をひとりでも多くの方に知っていただき、養殖魚を積極的に食べてもらうことが生産者の皆さんへの応援につながると思います」

今、積極的に食べてほしいのは養殖魚の「ブリ」と「真鯛」

Photo by Ikki Nagasaki

「この時期の代表的な養殖魚は、ブリや真鯛やカンパチ」だというながさきさん。そこで、養殖魚の魅力やおすすめの食べ方を教えていただきました。

ながさきさん:
「先ほどもお話したとおり、コロナの影響でじつはいいものがお得な値段で手に入りやすくなっています。つまり、今、養殖魚を買うことは消費者にとっても生産者にとってもメリットだらけなんですよ。

しかし、養殖よりも天然のほうがよいという認識を持っている方が一定数いて、養殖魚は手にとってもらえないことも多いんですよね。確かに天然の魚は旨味が強いのですが、養殖だからおいしくないなんてことはありません。

養殖の魚は品質・値段・味が安定しているうえに、餌によって味の調整が効くので消費者の求める味をつくることができます。また、脂の乗りも良くクセがないので食べやすいんですよ。天然も養殖もそれぞれのよさがあるので、調理法やメニューによって使い分けるのがおすすめです」

ながさきさんおすすめ!「ブリ」と「真鯛」のおいしい食べ方

絶妙なバランスが取れた「ブリのカルパッチョ」

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ながさきさん:
「ブリを生で食べるなら、ブリの甘味とほどよい脂を生かしてくれるカルパッチョがおすすめです。しつこくない旨味でパクパク食べられます。

ぷりっとした食感とちょうどいい口溶けとのバランスを、ぜひ皆さんに味わっていただきたいですね」

良質な脂をさっぱりといただく「ブリしゃぶ」

Photo by shutterstock

ながさきさん:
「養殖のブリは脂がのっていてやわらかく、とろっとした濃厚な味わい。なので、余分な脂を適度に落とせるブリしゃぶがおすすめです。

さっと湯通しして、大根おろしと一緒に食べるとおいしいですよ。さっぱりとした大根と合わせることで、ブリの旨味が際立つんです」
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