ライター : なっちゃん

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「魚醤」とは

魚醤とは生魚を塩漬けし、発酵させたときにできる液体のことです。魚の旨味がギュッとつまっていて、料理に塩辛さと濃厚な旨味が加わります。「ぎょしょう」や「うおびしお」と言われていて、魚版のしょうゆのようなものです。

主な原材料は魚・えび・いかなどで、魚醤のルーツをたどると中国の醤(ひしお)に辿り着きます。また、古代ローマ時代から日常的に使われていたようです。魚を発酵させるので独特の香りと味わいがあり、一度食べたらクセになる人もいます。

魚醤の作り方

魚醤の材料は地域によって異なりますが、塩と魚介類がメインです。塩は材料に対して15〜25%くらいの分量が多いです。材料として使われる魚介類はいわしやさばの仲間が多く、東南アジアでは網にかかった小魚を使うというケースもみられます。

作り方は、地域差が多いものの、塩漬けにした魚や干物などを保存桶に詰め込んで発酵させるところは全国共通。日本では麹やもろみ(ろ過していない醤油)を加えて発酵させる地域もみられます。魚醤を作るには、半年から2年程度の漬け込みが必要です。ときどき中身をかく拌しながらゆっくりと発酵させていきます。

魚醤はシンプルな工程でできる調味料なので、自宅も意外と簡単に作れます。戦時中の日本では、大豆不足から魚醤を作る地域もみられました。しかし最近では、安全性の問題や手軽に既製品が購入できるようになったことから、家庭で作るケースは少なくなってきているようです。

魚醤と醤油の違い

魚醤と醤油の大きな違いは、原料です。醤油は大豆を使うのに対して、魚醤は魚やイカなどの魚介類を使用。そのため、醤油は植物性のたんぱく質、魚醤は動物性たんぱく質であるという違いがあります。

どちらも塩漬けしているので塩気が強い点が共通していますが、魚醤のほうが塩味が強いです。また、醤は動物性たんぱく質がもつコクや甘味が感じられるのに対し、醤油は植物性のたんぱく質を使用しているため、さっぱりとしています。

世界各地の魚醤

世界にはさまざまな魚醤があり、東南アジアを中心に各国で使われています。有名なものとして、ナンプラー・ニョクマム(ヌクマム)・ユイルウ(魚露)・エクジョなどがあり、どれも生魚を塩漬けにして発酵させ熟成したときにできる液体です。

しかし不思議なことに、香りや味が違います。昔は高価で入手困難でしたが、現在はスーパーやエスニック調味料を扱っているお店で購入可能です。購入しやすい小さい瓶で売っていることが多いですよ。

魚醤とナンプラーの違いとは?

魚醤とナンプラーの一番の違いは、原材料です。魚醤が小魚・えび・いかに対して、ナンプラーはカタクチイワシを使うのが主流です。作り方はどれも塩漬けにして発酵させるので同じです。ナンプラーは魚醤よりも独特の魚の臭みが強いのが特徴ですよ。

また、塩分濃度が高かったり旨味が強かったりするので、少量加えるだけでも料理がおいしく作れます。隠し味程度に入れるのがおすすめです。魚醤と比べて独特の臭いが強いのもナンプラーの特徴ですよ。
種類産地作り方塩気クセ使い道
ナンプラータイカタクチイワシを塩漬けにし、7ヶ月から1年熟成発酵させる★★★★★★★生春巻き、ガパオライス
ニョクマム(ヌクマム)ベトナムいわしやあじなど小魚を塩漬けにし、7ヶ月から1年熟成発酵させる★★★★★★★チャーハン、ドレッシング
ユイルウ(魚露)中国カタクチイワシやムロアジを塩漬けして熟成発酵させる★★チャーハン、焼きそば
エクジョ韓国いわしを塩漬けして熟成発酵させる★★キムチを漬けるとき、クッパ

日本3大魚醤

東南アジアでみても種類が豊富な魚醤ですが、日本国内でもいろいろな種類があります。

有名な魚醤は、秋田の「しょっつる」、香川の「いかなご醤油」、石川の「いしる」。この3種類の魚醤は、日本3大魚醤と呼ばれています。

日本の魚醤は熟成期間が長く、1〜2年も寝かせておくのが特徴。材料や使用する魚の種類は地域によって異なるため、さまざまな味わいが楽しめます。
種類産地作り方塩気クセ使い道
しょっつる秋田県ハタハタやいわしを塩漬けして発酵させる★★しょっつる鍋、ラーメンのスープ
いしる石川県いわしやいかの内臓を塩漬けして発酵させる★★★★★★鍋、煮物
いかなご醤油香川県イカナゴというスズキ科の小魚を塩漬けしたものを発酵させる★★刺身につけるしょうゆ
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