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三重県松阪市の住宅街に、少し変わった飲食店がある。看板ランチメニューはハワイアンプレートとアジアンプレート。夜には居酒屋メニューが並び、夏になれば韓国式のふわふわ氷・ビンスが登場し、日曜の午後には子どもたちがおこづかい片手に集まってくる。その名は「カマアイナ」。ハワイ語で「地元の人」を意味するこの店は、オーナーの青木裕子さんが36カ国を旅し、十五年間の海外生活を経て、ようやく自分の「地元」に根を張るために生み出した場所だ。
懐石料理から世界へ
青木さんのキャリアは、調理師専門学校を1年で修了したところから始まる。卒業後は懐石料理の世界に飛び込み、7年にわたって日本料理の基礎と精神を叩き込まれた。繊細な季節感、素材への敬意、一皿に込める丁寧さ—そうした懐石の美学は、後に彼女が世界中の料理と向き合う際の土台となっていく。
20代後半、青木さんはワーキングホリデービザを手に海外へと旅立った。最初の目的地はオーストラリア。そこからカナダ、イギリス、そして最終的にはハワイへと渡り、合計5カ国に居を構えた。ハワイでは実に7年間を過ごし、現地のレストランで料理人として働く。ハワイ以外の三カ国でもそれぞれの土地で厨房に立ち続けた。
働いていた国々の長期休暇や仕事の合間に、積極的にバックパッカーとして各地を旅した。オーストラリア滞在中にはアジア各国を巡り、イギリス時代にはヨーロッパとアフリカにまで足を伸ばし、カナダ在住中には中米を探訪した。こうして訪れた国の数は36カ国に上る。旅先で口にした料理、市場で出会った食材、屋台で感じた熱気—それらすべてが青木さんの料理観を形成していった。
その海外生活は合計で約15年に及ぶ。コロナ禍の影響で六年間帰国できない時期もあり、2021年の夏にようやく日本の土を踏んだ。
20代後半、青木さんはワーキングホリデービザを手に海外へと旅立った。最初の目的地はオーストラリア。そこからカナダ、イギリス、そして最終的にはハワイへと渡り、合計5カ国に居を構えた。ハワイでは実に7年間を過ごし、現地のレストランで料理人として働く。ハワイ以外の三カ国でもそれぞれの土地で厨房に立ち続けた。
働いていた国々の長期休暇や仕事の合間に、積極的にバックパッカーとして各地を旅した。オーストラリア滞在中にはアジア各国を巡り、イギリス時代にはヨーロッパとアフリカにまで足を伸ばし、カナダ在住中には中米を探訪した。こうして訪れた国の数は36カ国に上る。旅先で口にした料理、市場で出会った食材、屋台で感じた熱気—それらすべてが青木さんの料理観を形成していった。
その海外生活は合計で約15年に及ぶ。コロナ禍の影響で六年間帰国できない時期もあり、2021年の夏にようやく日本の土を踏んだ。
カマアイナ誕生の背景
帰国後、青木さんは再び飲食店に雇用される道は選ばなかった。長年の経験と世界中で培った料理の引き出しを活かして、自分の店を持つことを決意していたからだ。しかし、いきなり実店舗を構えることへのハードルは高い。現実的な壁を前に、青木さんが選んだのがフードトラックという形態だった。
ハワイをはじめ海外ではフードトラック文化が根付いており、青木さん自身も現地でその魅力を肌で感じていた。機動力があり、初期費用を抑えながら自分の料理を直接お客さんに届けられるこのスタイルは、彼女の理想に合致していた。2022年8月、親戚が所有する空き地の駐車場を借り受け、カマアイナのフードトラックは産声を上げた。
メニューは最初から多彩だった。ハワイ名物のガーリックシュリンプやアヒポキ、ロコモコといったハワイアンフードに加え、タコス、春巻き、韓国チヂミ、ベトナムフォーなど、アジア各地の料理が並んだ。季節ごとにメニューを入れ替え、春には桜を使ったパフェやバブルワッフル、秋にはさつまいもを使ったクリームブリュレなど、スイーツも積極的に展開した。一品特化型のキッチンカーとは一線を画す、まさに多国籍・多ジャンルの移動食堂だ。
その後、松阪市内でも定期的に出店するようになり、インスタグラムを通じて出店情報を発信することで遠方からわざわざ足を運ぶファンも現れるようになった。四日市や関方面からドライブがてら訪れる常連客も生まれ、フードトラックでありながら確かなリピーター層が育っていった。
ハワイをはじめ海外ではフードトラック文化が根付いており、青木さん自身も現地でその魅力を肌で感じていた。機動力があり、初期費用を抑えながら自分の料理を直接お客さんに届けられるこのスタイルは、彼女の理想に合致していた。2022年8月、親戚が所有する空き地の駐車場を借り受け、カマアイナのフードトラックは産声を上げた。
メニューは最初から多彩だった。ハワイ名物のガーリックシュリンプやアヒポキ、ロコモコといったハワイアンフードに加え、タコス、春巻き、韓国チヂミ、ベトナムフォーなど、アジア各地の料理が並んだ。季節ごとにメニューを入れ替え、春には桜を使ったパフェやバブルワッフル、秋にはさつまいもを使ったクリームブリュレなど、スイーツも積極的に展開した。一品特化型のキッチンカーとは一線を画す、まさに多国籍・多ジャンルの移動食堂だ。
その後、松阪市内でも定期的に出店するようになり、インスタグラムを通じて出店情報を発信することで遠方からわざわざ足を運ぶファンも現れるようになった。四日市や関方面からドライブがてら訪れる常連客も生まれ、フードトラックでありながら確かなリピーター層が育っていった。
フードトラックから実店舗への挑戦
フードトラックを始めて約二年が経つ頃、青木さんはある変化を感じ始めていた。イベントや週末の出店を重ねるうちに、「お店はどこにあるの?」と尋ねるお客さんが増えてきたのだ。雨の日も風の日も、暑い夏も寒い冬も、天候に左右されずに来られる場所。ゆっくり腰を落ち着けて、料理とお酒を楽しみながら会話できる空間。そうした「居場所」を求める声が、青木さんを実店舗開業へと後押しした。
もう一つの動機は、平日の稼働だった。フードトラックはどうしても週末のイベント出店が中心になりがちで、平日に働く機会が限られる。自分の店を持てば、平日も営業できる。そう考えた青木さんは、ネット検索を通じてたまたま現在の場所を見つけた。
住宅街の中という立地は、家賃の面で現実的であるだけでなく、「歩いて来られる、歩いて帰れる」という地域密着型の強みも生んだ。実際、近隣住民が徒歩で来店し、お酒を楽しんでそのまま歩いて帰るというスタイルが定着しつつある。
2024年8月、カマアイナは実店舗をオープンした。夜は常連客の要望に応じて深夜まで営業することもあり、柔軟な対応が常連客に喜ばれている。
もう一つの動機は、平日の稼働だった。フードトラックはどうしても週末のイベント出店が中心になりがちで、平日に働く機会が限られる。自分の店を持てば、平日も営業できる。そう考えた青木さんは、ネット検索を通じてたまたま現在の場所を見つけた。
住宅街の中という立地は、家賃の面で現実的であるだけでなく、「歩いて来られる、歩いて帰れる」という地域密着型の強みも生んだ。実際、近隣住民が徒歩で来店し、お酒を楽しんでそのまま歩いて帰るというスタイルが定着しつつある。
2024年8月、カマアイナは実店舗をオープンした。夜は常連客の要望に応じて深夜まで営業することもあり、柔軟な対応が常連客に喜ばれている。
父の釣果と36カ国の記憶
カマアイナの料理を語る上で欠かせないのが、青木さんの父親の存在だ。松阪在住の父は釣りを趣味とし、伊勢湾に船を出して様々な魚を釣り上げてくる。その天然魚が、カマアイナの食材として使われるという。懐石料理で培った魚の扱いへの知識と、父が届けてくれる新鮮な素材が組み合わさることで、居酒屋メニューにも確かなクオリティが宿る。
ハワイアンプレートには、ガーリックシュリンプ、モチコチキン、アヒポキ、ロコモコという現地の人気料理が一皿に凝縮されている。特にガーリックシュリンプはガーリックの風味を現地に近い形で再現することにこだわっており、7年間ハワイで暮らした青木さんだからこそ出せる本場の味がある。モチコチキンは、もち米の粉を使って揚げたハワイのソウルフードで、日系移民の多いハワイならではの食文化が生んだ一品だ。
ハワイアンプレートには、ガーリックシュリンプ、モチコチキン、アヒポキ、ロコモコという現地の人気料理が一皿に凝縮されている。特にガーリックシュリンプはガーリックの風味を現地に近い形で再現することにこだわっており、7年間ハワイで暮らした青木さんだからこそ出せる本場の味がある。モチコチキンは、もち米の粉を使って揚げたハワイのソウルフードで、日系移民の多いハワイならではの食文化が生んだ一品だ。
アジアンプレートは、春巻き、ジーパイ、チヂミ、カルビなどを一皿にまとめたもので、それぞれ単品メニューとして提供していたものをプレートとして組み合わせた。季節感と即興性が共存するこのスタイルは、懐石料理の精神とバックパッカーの自由さが融合した、カマアイナらしい表現といえるだろう。
冬にはサムゲタン、スンドゥブ、モツ鍋、ベトナムフォーといった温かいメニューが登場し、夏には本格的な機械を使った韓国式ビンスやかき氷が涼を提供する。一つの店でこれほど多様なジャンルを扱うのは、青木さん自身が「同じことを続けていると飽きてしまう」という性格によるところも大きい。しかしそれは同時に、どの季節に訪れても新しい発見があるという、お客さんにとっての楽しみにもなっている。
冬にはサムゲタン、スンドゥブ、モツ鍋、ベトナムフォーといった温かいメニューが登場し、夏には本格的な機械を使った韓国式ビンスやかき氷が涼を提供する。一つの店でこれほど多様なジャンルを扱うのは、青木さん自身が「同じことを続けていると飽きてしまう」という性格によるところも大きい。しかしそれは同時に、どの季節に訪れても新しい発見があるという、お客さんにとっての楽しみにもなっている。
地域の「居場所」として
開店から半年あまりが経ち、カマアイナには少しずつ確かな常連客が育ってきた。それが青木さんにとって何より嬉しい瞬間だという。年齢も目的もさまざまな人々が集まる場所として、カマアイナは少しずつその輪郭を形成しつつある。
日曜日には子ども向けの特別営業も行っている。午後三時から五時の間、フリフリポテト、揚げタコ、タピオカドリンクなどを三百円均一で提供し、子どもたちがお小遣いを握りしめて集まれる場所を作っている。かつて地域に根付いていた駄菓子屋文化を現代に蘇らせるような試みは、単なる集客策を超えて、地域コミュニティの拠点としての役割を担おうとする青木さんの思いの表れだ。
日曜日には子ども向けの特別営業も行っている。午後三時から五時の間、フリフリポテト、揚げタコ、タピオカドリンクなどを三百円均一で提供し、子どもたちがお小遣いを握りしめて集まれる場所を作っている。かつて地域に根付いていた駄菓子屋文化を現代に蘇らせるような試みは、単なる集客策を超えて、地域コミュニティの拠点としての役割を担おうとする青木さんの思いの表れだ。
「カマアイナ」という店名には、地元の人に愛される場所でありたいという願いが込められている。36カ国を旅し、五カ国で暮らし、15年の歳月を経て帰ってきた松阪という「地元」で、青木さんは今日も厨房に立つ。世界中の料理と記憶を詰め込んだその一皿は、旅を知らない人にも旅の豊かさを届け、地元を愛する人々の食事時間に新しい風を吹き込み続けている。
カマアイナ
〒515-0063
三重県松阪市大黒田町1642
水曜日
定休日
月曜日
11:00〜14:00
17:00〜23:00
火曜日
11:00〜14:00
17:00〜23:00
水曜日
定休日
木曜日
定休日
金曜日
11:00〜14:00
17:00〜23:00
土曜日
11:00〜14:00
17:00〜23:00
日曜日
11:00〜14:00
17:00〜23:00
070-8465-8989
席数
30席(カウンター×8,テーブル:8名掛け×1、4名掛け×3、2名掛け×1)
L.O.
ランチ:13:30、ディナー:22:30)
定休日
水・木※予約の場合のみOPEN
最寄駅
松阪駅より車で15分
支払方法
各種クレジットカード、QR決済可
平均予算
1,500〜2,000円
駐車場
店前3台(12~14番)
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※記事の内容は、公開時点の情報です。記事公開後、メニュー内容や価格、店舗情報に変更がある場合があります。来店の際は、事前に店舗にご確認いただくようお願いします。
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