ライター : macaroni松阪特派員 たけ

松阪市 地方活性化企業人

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三重県松阪市嬉野。のどかな田園風景を抜けると伊勢中川駅付近の喧騒が突如現れる。そんな地域に、地元の人々から長年愛され続けるイタリアンレストランがある。その名は「カフェ・ラ ポルト」。フランス語で「扉」を意味するその店名は、まさしく夫婦で営む店を表しているとも言えるだろう。その上、こちらの店は実は料理人がフレンチ出身の妻からイタリアン出身の夫へと大変貌を遂げた経緯を持つ。

現シェフであるのは小西弘幸さん(55)、ホールを担当するのが妻である眞理さんだ。そんな二人がぶつかり合い、試行錯誤を重ねながら作り上げてきたこの店には、人と人とのつながりを大切にする温かな精神が宿っている。今回はそんな「ラ・ポルト」の歴史を紐解いてみよう。

二人の料理人、それぞれの道

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夫の小西広行さんは、大阪の辻調理師専門学校を卒業後、京橋のホテルニューオータニ大阪に入社。そこで実に13年間にわたってキャリアを積み上げた。その後、三重県に戻ってきたが、その道のりは順風満帆とはいかなかった。一時、料理の世界を離れたこともあったそうだが再び厨房の世界へと戻ってきた。その後は和食の店なども経験しながら、津・松阪エリアで腕を磨き続けた。

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一方、妻の眞理さんの経歴はさらに波乱に富んでいる。同じく辻調理師専門学校を卒業後、地元三重のレストランで働き始めるが、当時の職場では女性の料理人が魚をさばくことすら快く思われない風潮があった。

職場環境に限界を感じた眞理さんは、自ら魚の扱いを極めようと魚屋に転職。3年間の修業を経て、魚への苦手意識を克服するどころかすっかり魚好きになってしまったというエピソードは、彼女の芯の強さをよく物語っている。

その後東京へと活躍の場を移し、東京都内の様々な料理店で経験を積んだ。他にも山形のラスク会社が新設するレストランの立ち上げに1ヶ月半ほど携わるなど、その行動力は留まるところを知らない。そして極めつきはフランスへの単身渡航だ。
伝手もなく渡ったフランスでは、ホームステイや語学学校通いを経て、現地のレストランで働くという経験まで積んでいる。

出会い、そして「引き継ぎ」という試練

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対面式のカウンターもあり、一人でもゆっくりと食事を楽しむことができる。
フランスから戻り、眞理さんがラ ポルトをオープンしたのは2005年9月、35歳の時のことだった。当初はモーニングからカフェ、ランチまでをこなす喫茶店兼フレンチという業態で、地域の常連客を中心に賑わいを見せていた。弘幸さんとの出会いは、オープンから4〜5年後のこと。共通の友人がモーニングの時間帯に弘幸さんを連れてきたことがきっかけで二人は出会い、その後結婚へと至った。

しかし、弘幸さんが店に馴染むのには想像以上に複雑なものがあった。長年眞理さんの店に通い続けてきた常連客は、見知らぬ男性スタッフの登場に戸惑いを隠せなかっただろう。女性スタッフと話すことを楽しみにしていた常連客たちが、弘幸さんとはなかなか打ち解けようとしなかったという苦い記憶は、今では笑い話となるが二人の記憶に鮮明に残っている。

子どもが生まれたことを機に眞理さんが育児に時間を割かざるを得なくなる中、弘幸さんが厨房を担うようになっていく。スタッフがどちらの指示に従えばよいか混乱しないよう、眞理さんはあえて店から距離を置くようにした。その判断は正しかったが、業態転換の痛みは避けられなかった。

モーニングをやめ、カフェ機能を縮小し、ランチとディナーに特化していく過程で、売り上げは一時的に大きく落ち込んだ。長年通い続けてきたモーニングの客が離れ、客層そのものが変わっていく—それは必要な変化であったとしても、決して楽な道のりではなかったという。

お客に寄り添うイタリアンという哲学

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ラ・ポルトのランチコースは3種類ある。メイン料理もしくはパスタにスープ、サラダ、パンもしくはライスにコーヒーもしくは紅茶がつくAランチ。Bランチはそれにオードブルかデザート3種がつく。Cランチそれがどちらも着いてくるといった具合だ。

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Cセット:2,600円。フルコースをこの値段で食べられるのは大変オトクだ!
今回はメインをエビのトマトクリームパスタで注文。日替わりで様々な料理を頼むことができるのがラ・ポルトの特徴だ。1.3mmと細めのパスタに、濃厚なトマトクリームがよく絡み、満足感がとても高い。

スープもまた、この店の隠れた名物だ。夏には生のトウモロコシをそのまま使ったコーンスープが登場する。季節ごとに素材を変え、カリフラワー、ブロッコリー、キャベツ、白菜、里芋など、地元の野菜を丁寧に仕立てている。

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夜の人気メニューであるオムハヤシの誕生秘話もまた、この店らしいエピソードだ。もともとはオムライスにトマトソースをかけるスタイルだったが、トマトが苦手な男性客のリクエストで、たまたまランチに仕込んでいたハヤシソースをかけてみたところ、これが大好評。そのまま定番メニューとして定着した。お客さんの声が料理を育てるという、ラ・ポルトならではの食文化の形がここにも表れている。

地域とともに、人とともに

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お客さんが自ら育てた野菜を持ち込んで「これで料理してほしい」と頼んでくることも珍しくなく、シュトーレンの食べ比べ会や渡り蟹を味わう会など、お客さんのリクエストから生まれたイベントも数多い。毎年クリスマスには音楽家を招いたイベントを開催し、年末には洋風おせちの予約販売も行っているという。

ラ ポルトが20年間愛され続けてきた理由は、料理の美味しさだけではない。地域との深いつながりと一人ひとりのお客さんとの距離感の近さが、この店の最大の魅力となっている。格式張らず、しかし心のこもった料理と空間が、見知らぬ土地で不安を抱える人の心をほぐす—それこそが、ラ ポルトが目指してきた「普段使いできて、特別な日にも使える店」の姿そのものだ。

次の扉へ

20年という節目を越えたラ ポルトは今、次の扉を探している。無理に拡大するのではなく、今この場所で丁寧に一つひとつを積み重ねていくこと—それが、これからのラ ポルトの方針だ。

店名の由来となった「扉」の哲学は、20年を経た今も変わらない。一枚の扉を開けた先に、全く違う世界が広がっている。ラ ポルトの扉を開けた先には、地域の食材を使った温かくて少し特別な時間が待っている。常連客にとっては変わらぬ日常の一部として、初めて訪れる人にとっては新しい発見として—この店はこれからも、嬉野の地でその扉を開けられることを待っている。
カフェ・ラ ポルト
〒515-2325
三重県松阪市嬉野中川新町3丁目98
月曜日
11:00〜15:00
17:00〜22:00
月曜日
11:00〜15:00
17:00〜22:00
火曜日
定休日
水曜日
11:00〜15:00
17:00〜22:00
木曜日
11:00〜15:00
17:00〜22:00
金曜日
11:00〜15:00
17:00〜22:00
土曜日
11:00〜15:00
17:00〜22:00
日曜日
11:00〜15:00
17:00〜22:00
開閉
0598-42-6019
席数
25席(カウンター:7、テーブル:4名掛け×4、2名掛け×1)
L.O.
ランチ:14:00、ディナー:21:00
定休日
火曜・第二・四水曜
最寄駅
嬉野中川駅より徒歩6分、松阪駅より車で20分
支払方法
paypay可
平均予算
1,500〜2,500円
駐車場
14台(店横4台、店近く10台)
ランチ
ディナー

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