ライター : macaroni松阪特派員 たけ

松阪市 地方活性化企業人

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松阪市の中心部、駅部田のハニータウン内に一昨年天ぷら専門店がオープンした。その名も「天ぷら TAKA」。松阪市内でも珍しい形態のそのお店では、夜にはセルフサービスでの日本酒飲み放題など、面白いサービスを楽しむことができる。店を営む澤田貴之さんは32歳。若くして自らの店を持つに至ったこれまでの話を伺った。

中学卒業から始まった、料理人としての長い旅路

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澤田さんの料理人としてのキャリアは、一般的な調理師とは少し異なる道筋を辿っている。中学卒業後、名古屋の調理師専修学校に進学し、高校卒業と調理師免許の取得を同時に果たすという3年間を過ごした。学校では和食・洋食・中華・製菓と幅広いジャンルを学んだが、澤田さんが和食の道を選んだのは、理由がある。外国語で切り方やオーダーが飛び交う中ではひとまず頭での変換が必要となる。日本語で指示が飛び交う和食の厨房のほうが、習得に集中できるという感覚があったという。その直感は、後の修行生活において確かな礎となっていく。

18歳で飛び込んだのは、京都の料亭という最も厳しい和食の世界だった。京都日本の和食文化の中でも特に格式が高く、その厳しさゆえに若い料理人が1年も経たずに離職するケースが後を絶たない世界でもある。そんな環境の中で澤田氏は4年間を過ごし、和食の基礎と精神を徹底的に叩き込まれた。

その後、名古屋に戻りホテルの飲食部門に4年間勤務した。ここでは朝食ビュッフェから昼のお膳料理、夜の居酒屋メニューまで、幅広い業態を経験することになる。ここでの経験は、段取りと効率の重要性を体で覚える貴重な機会となった。さらに立食パーティーのフィンガーフード、団体客向けの一斉提供メニューなど、料亭では学べなかった「量と速度」の料理を習得していった。

名古屋での修行を終えた澤田氏は、VISONのすき焼き専門店で3〜4年間勤務する。それまでの和食修行とは一線を画するものだったが、食材の扱い方や鍋料理の奥深さを学ぶ場となった。

天ぷら専門店という選択と、松阪への愛着

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なぜ松阪で、なぜ天ぷら専門店なのか。この二つの問いに対する澤田氏の答えは、いずれもシンプルでありながら本質を突いている。

松阪という街を選んだのは、VISONで働いている際に松阪に住んでおり、生活の中でこの街を好きになったからだ。ただ、この街で暮らしこの街の空気に馴染んでいく中で、ここで店を開きたいという気持ちが自然と育っていった。駐車場が広く、車通りも程よくある立地は、地方都市での飲食店経営において重要な条件を満たしていた。

天ぷら専門店という業態を選んだ理由もまた、澄んだ視点から生まれている。松阪には天ぷらを主役に据えた専門店はほとんどなく、天ぷらそのものを目当てに訪れる店が存在しなかった。その空白を埋めることが、自分の強みを最大限に活かせる場所だと澤田さんは判断したのだ。

店名「天ぷら TAKA」は、自身の名前「貴之」の「たか」から取ったシンプルなネーミング。覚えやすく、親しみやすく、そして料理人の顔が見えるという点でこの名前に行き着いた。独立開業のタイミングについても、何歳までにという明確な目標があったわけではなく、修行の場を離れるタイミングが来た時に自然と踏み出したという。その飾らない姿勢が、店の雰囲気にもそのまま反映されている。

手軽に見えて繊細。ランチの天丼

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大海老天丼:2,000円 大きな海老の天ぷらが3つも入った贅沢な丼だ。濃厚な店ダレによって箸が止まらなくなる。
やはり天ぷら専門店ということでいただくのは天丼がいいだろう。丼の中央にそびえるのは、堂々たる大海老の天ぷらが三本。衣は軽やかに揚がり、口に入れるとサクッと心地よい音が響く。中から現れる海老は身が太く、ぷりっとした弾力が特徴だ。そこへ店特製の濃厚な天丼ダレが絡み、ご飯との相性は抜群。

専門店ならではの火入れと揚げの技術が、大海老の旨みを余すことなく引き出している。ランチでこの内容が2,000円というのも魅力で、天ぷらを主役に据えた贅沢な天丼を気軽に楽しめる。

まかないから生まれた一皿—真鯛のメンチカツという発明

天ぷら専門店でありながら、澤田氏が特に食べてほしいと語るメニューがある。それが「真鯛のメンチカツ」だ。グランドメニューには載っておらず、仕込みができた日だけ黒板に登場するこの一品は、まさに澤田さんのとっておき料理といえる。

その誕生秘話は、名古屋のホテル時代までさかのぼる。毎日同じ食材のまかないに飽きた際に試行錯誤した末に辿り着いた一品だ。一度食べた客はほぼ必ずリピートするというこのメンチカツは、天ぷら屋という看板からは想像しにくい意外性と、素材の旨みを最大限に引き出した完成度の高さで、静かな人気を誇っている。

卓上には梅・わさび・抹茶の三種類の塩が置かれており、醤油やソース、マヨネーズなど好みに合わせた食べ方ができる。素材そのものの味を大切にしながら、食べる人が自由楽しめるというスタイルだ。

三重の地酒を自分で注ぐ。ユニークなセルフ飲み放題

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この店を語る上で欠かせないのが、ユニークなお酒のスタイルだ。店内には日本酒専用の冷蔵ケースが設けられており、三重県内の地酒を中心に約8種類の日本酒が並んでいる。飲み放題プランを選んだ客は、そこから自分でグラスに注いで楽しむことができる。価格は2,200円で、他ではなかなか見られない仕組みだ。

このスタイルの面白さは、客が自分のペースで、自分の好みに合わせてお酒を楽しめる点にある。なみなみと注いでたっぷり飲みたい人もいれば、少量ずつ全種類を飲み比べてコンプリートを目指す人もいる。どちらのスタイルも歓迎されており、客それぞれの楽しみ方が尊重されている。日本酒の飲み比べを楽しみたいという層にとっては、非常に魅力的な提案だ。

澤田さん自身がお酒を好むことも、この店のコンセプトに大きく影響している。自分が飲みたいと思えるお酒を揃え、自分が楽しいと思える空間を作る—そうした純粋な動機が、店の個性として自然に滲み出ている。

天ぷらとお酒という組み合わせは、実は非常に相性が良い。揚げたての天ぷらのサクサクとした食感と、日本酒のすっきりとした味わいは互いを引き立て合う。特に地元三重の地酒は、地域の食材や料理との親和性も高く、天ぷらとの相性も申し分ない。

年末の修羅場が教えてくれた、料理人の覚悟

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料理人としての修行において、澤田さんが最も印象深い経験として挙げるのが、京都の料亭で経験したおせちの製造だ。澤田氏が担当した京都の料亭では、年間900個ものおせちを製造していた。三段重のおせちを900個分用意するということは、それぞれの料理を何百個単位で仕込むことを意味する。

しかも年末は忘年会シーズンと完全に重なるため、通常の営業をこなしながら並行しておせちの準備を進めなければならない。大晦日の夜中から元旦にかけておせちの最終仕上げと詰め込み作業が行われ、元旦の営業が終わってようやく一息つける。連休が取れるのは新年会が落ち着く1月後半になってからというのが、料亭の年末年始の現実だ。

この経験は単なる苦労話ではなく、料理人としての精神的な強さと、大量調理における段取り力を身につける場となった。何百人分もの料理を時間通りに、かつ品質を落とさずに提供するという経験は、後に独立して自分の店を持った時の基盤となっている。松阪の小さな天ぷら専門店で日々丁寧に揚げ続ける澤田氏の姿の背後には、こうした修羅場をくぐり抜けてきた料理人としての確かな地力がある。

気軽に立ち寄れる店を目指して

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この記事を読んで初めてこの店を知った人に向けて、「難しく考えず、気軽に天ぷらとお酒を楽しみに来てほしい」、と話す。高級店のような緊張感は必要なく、ふらりと立ち寄って、揚げたての天ぷらをつまみながら地元の地酒を一杯—そんな気軽なひとときを提供したいという思いが、この店の根底にある。

一人でも、友人と連れ立っても、仕事帰りにふらりと立ち寄っても、どんなシーンにも馴染む懐の深さがある。小さな店だからこそ生まれる、店主と客の近い距離感。それがこの店の最大の魅力であり、何度でも訪れたくなる理由だ。

オープンからまだ1年余り。32歳の若き料理人が松阪に根を張り、丁寧に揚げ続ける天ぷらは、この街の食文化に確かな彩りを加えつつある。修行時代の厳しさと、まかないから生まれた創造性と、地域への愛着が一枚の天ぷらに込められている。天ぷらとお酒、そして人との温かなつながりを求めて、ぜひ一度足を運んでみてほしい。
旨い肴と天ぷらTAKA
〒515-0045
三重県松阪市駅部田町151−17
火曜日
定休日
月曜日
11:30〜14:00
17:00〜21:00
火曜日
定休日
水曜日
11:30〜14:00
17:00〜21:00
木曜日
11:30〜14:00
17:00〜21:00
金曜日
18:00〜21:00
土曜日
11:30〜14:00
17:00〜21:00
日曜日
11:30〜14:00
17:00〜21:00
開閉
0598-33-7833
席数
33席(カウンター×5、テーブル4名掛け×2、座敷:6名掛け×2、4名掛け×2)
L.O.
ランチ:13時半、ディナー:21時※月・金ランチ休み
定休日
最寄駅
松阪駅より車で10分
支払方法
現金のみ
平均予算
1,000〜2,000円
駐車場
店前20台(隣接店舗と共有)
ランチ
ディナー

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※記事の内容は、公開時点の情報です。記事公開後、メニュー内容や価格、店舗情報に変更がある場合があります。来店の際は、事前に店舗にご確認いただくようお願いします。

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