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好きな家具でつくる“自分らしい空間”の、カフェみたいな食堂
店内に一歩入ると、北欧チックな雰囲気を思わせる白い壁と無骨な椅子やテーブルが並ぶ。だが実は、その多くがアメリカ軍の払い下げ品を扱う店から仕入れた家具だという。
「機能的には重たいし、座り心地もいいとは言えないんです。でも自分が好きな椅子や家具を揃えたかったんです」と中瀬さんは語る。
過度に居心地を追求するのではなく、自分が心地よいと感じる空間を大切にする姿勢が、アオゾラ食堂のコンセプトそのものである。来店するお客にとっても、食事だけでなく“空間の魅力”を味わえる場所となっているようだ。
「機能的には重たいし、座り心地もいいとは言えないんです。でも自分が好きな椅子や家具を揃えたかったんです」と中瀬さんは語る。
過度に居心地を追求するのではなく、自分が心地よいと感じる空間を大切にする姿勢が、アオゾラ食堂のコンセプトそのものである。来店するお客にとっても、食事だけでなく“空間の魅力”を味わえる場所となっているようだ。
料理に影響を与えた存在と原点
「料理を始めたきっかけは『料理の鉄人』を見たことでした」と語る中瀬さん。子どもの頃から料理に関心を持ち、高校も相可高校の調理科に進学。栗原はるみ氏をはじめとする料理研究家の著作や、街中の中華料理店の調理風景を映すYouTube動画などからも影響を受けてきた。料理を作る過程やライブ感を「実況中継のようで面白い」と語り、今も料理への好奇心を持ち続けている。
大阪で培ったバリスタ経験とカフェ文化への憧れ
中瀬理恵さんは、高校卒業後に大阪のカフェ専門学校に進学。卒業後は飲食業のスタートは大阪。コーヒー店で3年間働き、バリスタとしての経験を積んだ。一方で、飲食店に行くことも趣味と言えるほど好きであったため、都会のカフェや飲食店を数多く食べ歩いたという。
大阪には個性的なカフェがあり、そこで「自分がやりたいカフェ像」が膨らんでいったという。コンセプトは自分の「好き」を集めた、自分がリラックスできる空間。しかし地元には同じような店がなく、「それなら自分でつくるしかない」と独立の決意につながった。
大阪には個性的なカフェがあり、そこで「自分がやりたいカフェ像」が膨らんでいったという。コンセプトは自分の「好き」を集めた、自分がリラックスできる空間。しかし地元には同じような店がなく、「それなら自分でつくるしかない」と独立の決意につながった。
カフェから食堂へ、そして新たな挑戦
松阪に戻ってきてからいろんな飲食店での修行の後、2009年25歳の時には初めての店舗「アオゾラカフェ」を開業した。その後カフェではなく、定食を提供する方向へと転換していく。きっかけは唐突だった。
「カフェも好きだけれど、食堂をやりたいと思うようになったんです。したくなっちゃった笑」と中瀬さんは無邪気に答えた。
「カフェも好きだけれど、食堂をやりたいと思うようになったんです。したくなっちゃった笑」と中瀬さんは無邪気に答えた。
様々な料理が並ぶ「食堂」の魅力
もともと「食堂」が大好きで大阪時代にもよく通っていたという。「商店街には食堂が少なく、むしろ必要とされているのではないか」と気付いたのも転機のひとつだった。
奇しくも松阪市内でカフェが増え始めていた時期でもあり、あえて自分がやらなくても他の店で楽しめる環境が整いつつあった。一方で、商店街に根差す“食堂”は数が限られており、「自分がやるべきはそちらだ」と感じたのだ。2013年頃「アオゾラ食堂」へと変更し、数年間の運営を経て2017年に現在の場所へ移転した。地域に根付いた食堂として、すでに12年以上の歴史を重ねている。
奇しくも松阪市内でカフェが増え始めていた時期でもあり、あえて自分がやらなくても他の店で楽しめる環境が整いつつあった。一方で、商店街に根差す“食堂”は数が限られており、「自分がやるべきはそちらだ」と感じたのだ。2013年頃「アオゾラ食堂」へと変更し、数年間の運営を経て2017年に現在の場所へ移転した。地域に根付いた食堂として、すでに12年以上の歴史を重ねている。
飲食店として表現したいことは多種多様!
「アオゾラカフェ」から「アオゾラ食堂」に業態転換した当時、「MOND CAFE」という別店舗を立ち上げるなどカフェの運営も並行して続けており多角的に飲食に携わっていた。現在はそのカフェは閉店しているが、そこで一緒に働いていたスタッフが姉妹店である「小麦香る男」の店長として活躍しており、縁が今も続いている。
元ガールズバーの空き店舗を食堂へ?!
現在の店舗は、もともとガールズバーとして使われていた場所である。カウンターはあったものの本格的な厨房は備わっていなかった。水道やガスの設備を活かしつつ、大規模な改装工事を経て「アオゾラ食堂」として生まれ変わった。
物件は以前の店舗から斜め向かいという近距離にあり、2階にもともと入っていたイタリアンレストランの店長が友人だったことから空きが出るタイミングも把握できていた。通りに面したガラス張りの明るさに惹かれたことも、ここを選んだ大きな理由のひとつである。「2階の方が厨房設備は整っていましたが、やはり1階の方が入りやすい雰囲気だった」と中瀬さんは語る。
最終的に1,2階どちらも借りることとなり、上下の厨房で数十種類以上の料理を5人体制で作り上げる現在のスタイルとなった。
物件は以前の店舗から斜め向かいという近距離にあり、2階にもともと入っていたイタリアンレストランの店長が友人だったことから空きが出るタイミングも把握できていた。通りに面したガラス張りの明るさに惹かれたことも、ここを選んだ大きな理由のひとつである。「2階の方が厨房設備は整っていましたが、やはり1階の方が入りやすい雰囲気だった」と中瀬さんは語る。
最終的に1,2階どちらも借りることとなり、上下の厨房で数十種類以上の料理を5人体制で作り上げる現在のスタイルとなった。
本当は“下町食堂”が好き!!
白を基調としたおしゃれな店内で客層ともマッチしていると感じたが実は、「本当はもっと下町の食堂みたいな空気が好きなんです」と中瀬さんは笑う。現在の「アオゾラ食堂」は整った清潔感があり、本人からすると“おしゃれすぎる”部分もあるという。将来的には、もっと自分のスタイルに自然に馴染む、下町食堂のような店づくりをしたいと考えている。
外食が大好きで、小さな頃からさまざまな店を食べ歩いてきた経験が、今の食堂の世界観を形づくった。中でも魅力を感じるのは「カウンターに焼き魚や煮物、卵焼きなどが並び、好きなものを選んで瓶ビールを楽しむ」ような大衆的な食堂スタイルだという。
実はアオゾラ食堂でも昼間に瓶ビールを注文することができる。夜には豊富なドリンクメニューも揃っており、野菜中心のヘルシーな料理と共に酒を嗜むことも可能だ。
外食が大好きで、小さな頃からさまざまな店を食べ歩いてきた経験が、今の食堂の世界観を形づくった。中でも魅力を感じるのは「カウンターに焼き魚や煮物、卵焼きなどが並び、好きなものを選んで瓶ビールを楽しむ」ような大衆的な食堂スタイルだという。
実はアオゾラ食堂でも昼間に瓶ビールを注文することができる。夜には豊富なドリンクメニューも揃っており、野菜中心のヘルシーな料理と共に酒を嗜むことも可能だ。
幅広い層に支持される食堂
「一人で来られるお客さんが多いのが、このお店の特徴ですね」と語る中瀬さん。来店客の多くは女性だが、男性の一人客も少なくない。気兼ねなく一人で足を運べる店は貴重であり、リラックスできる空間として多くの人に支持されている。健康志向の食事を求める人や、家庭的な味を安心して楽しみたい人に支持されているのだ。
野菜好きが生み出すシンプルで軽やかな味わい
料理の特徴を一言で表すなら「シンプルであっさり」である。中瀬さん自身が生野菜や苦味のある野菜を好むため、自然と野菜が多い料理構成になった。意図して健康的に見せようとしたわけではないが、結果的に「野菜たっぷりでバランスの良い食堂」という評価を得るようになったのだ。「お客さんがSNSでそう言ってくれるので、それでイメージが定着した。ラッキーですね」と笑顔を見せる。
惣菜は20種類以上、日々増え続けるメニュー
料理のバリエーションが豊富なことも、アオゾラ食堂の魅力である。「最初はもっと少なかったんですけど、作れるようになった料理が増えて、スタッフも増えていって。今では当初の3倍ほどになりました」と中瀬さん。
メイン料理は6〜7種類、現在は惣菜だけでも20品前後のメニューを提供している。適度なバリエーションと量のバランスを探りながら、お客にとって飽きのこない食堂を実現しているのだ。
メイン料理は6〜7種類、現在は惣菜だけでも20品前後のメニューを提供している。適度なバリエーションと量のバランスを探りながら、お客にとって飽きのこない食堂を実現しているのだ。
定番と新作をバランスよく取り入れるメニュー構成
「定番と新作をうまく組み合わせています」と中瀬さん。ハンバーグやチキンカツ、鯖の味噌煮といった定番メニューは安定した人気を誇り、初めて訪れる人や久しぶりに来店する人の多くが選ぶ。一方で、常連客の楽しみのために新作メニューも随時考案。スタッフのアイデアや旬の食材を取り入れ、その時期にしか味わえない料理を提供しているのが強みである。新作が人気を集め、定番メニューに昇格することも少なくない。
地域行事や季節に合わせた特別メニュー
季節の節目には特別な料理を提供している。ひな祭りにはちらし寿司、節分には恵方巻、年末にはオードブルや寿司を用意するなど、日常に寄り添う形で季節感を大切にしたメニュー展開を心がけている。商店街の祭りなど地域の催しでは出店を行うこともあり、地域とのつながりを大事にした運営が伺える。
コロナ禍で広がった「お弁当需要」
もう一つの柱が「お弁当」である。大々的に宣伝はしていなかったが、顧客の要望やコロナ禍の影響で注文が一気に増えた。
「お弁当はありがたいです。1人前ではなく、家族分や会社単位で注文をいただけるので量も多く、今では全体の3分の1くらいが弁当のお客さんです」と中瀬さん。
電話での予約の大半もお弁当注文であり、持ち帰りが中心となるため店としても効率的だ。特に常連客からの注文が多く、日々の食卓や職場のランチに欠かせない存在になっている。
「お弁当はありがたいです。1人前ではなく、家族分や会社単位で注文をいただけるので量も多く、今では全体の3分の1くらいが弁当のお客さんです」と中瀬さん。
電話での予約の大半もお弁当注文であり、持ち帰りが中心となるため店としても効率的だ。特に常連客からの注文が多く、日々の食卓や職場のランチに欠かせない存在になっている。
利益よりも「安心して食べられる料理」を優先
外食でありながらも、化学調味料を極力使わず、野菜は地元産や産地を厳選。肉も国産や地元産を中心に仕入れている。「言わないのが私のプライド」と語るように、それをあえて大きく打ち出すことはない。しかし「自分が気持ちよく味見できないものは提供しない」という信念が料理の根底にある。
食材へのこだわりを声高に叫ばなくても、料理を口にすれば自然と伝わる。仕入れコストは高く、利益は決して大きくないという。しかし、日常的に通える食堂であるために、価格は抑える努力を惜しまない。
食材へのこだわりを声高に叫ばなくても、料理を口にすれば自然と伝わる。仕入れコストは高く、利益は決して大きくないという。しかし、日常的に通える食堂であるために、価格は抑える努力を惜しまない。
「アオゾラ食堂」という名前に込めた思い
そんな中瀬さんだが「アオゾラ食堂」という店名には、実は深い意味はない。響きが覚えやすく、カタカナ表記がやわらかさを演出しているのが気に入っただけだという。もともと「アオゾラカフェ」としてスタートした名残を引き継ぎつつ、時代の流れや自身の思いを重ねて、今の「食堂」という形に落ち着いた。
「初めて来た人からはカフェっぽいと言われることもあるけれど、それもまた自分らしいと思っている」と語る中瀬さん。過去の経験が自然に受け継がれ、現在の店に息づいているようだ。
「初めて来た人からはカフェっぽいと言われることもあるけれど、それもまた自分らしいと思っている」と語る中瀬さん。過去の経験が自然に受け継がれ、現在の店に息づいているようだ。
日常に寄り添う「普段使いの定食屋」でありたい
中瀬さんが大切にしているのは「選べる定食」である。どの料理を選んでも栄養バランスが整い、体に優しい仕上がりになるよう工夫している。「特別な日に来る店ではなく、毎日でも立ち寄れる普段使いの店でありたい」と語る。だからこそ、提供される料理は「罪悪感のない定食」であり、健康を意識する人にとっても安心して食べられる。
アオゾラ食堂は、地域の人々にとって気軽に立ち寄れる食堂でありながら、食を通じて安心を届ける存在になっていると言えるのかもしれない。
アオゾラ食堂は、地域の人々にとって気軽に立ち寄れる食堂でありながら、食を通じて安心を届ける存在になっていると言えるのかもしれない。
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※記事の内容は、公開時点の情報です。記事公開後、メニュー内容や価格、店舗情報に変更がある場合があります。来店の際は、事前に店舗にご確認いただくようお願いします。
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