ライター : 大谷りえ子

パンディレクター/パンライター

パン好きが講じて、原料にまで精通する生粋のパンマニア。国内外で訪れたパン屋は1,500軒以上にものぼる。メディア出演多数。パンのよさを多くの人に伝えるべくパンディレクターとしても…もっとみる

人気店「ボンヴィボン」児玉シェフの推しパンは?

Photo by macaroni

連載4回目となる今回”推しパン”を教えてくれたのは、「ボンヴィボン」の児玉圭介(こだま・けいすけ)シェフ。横浜・青葉台の住宅街にある人気店のオーナーシェフが選んだ推しパンは、東京・人形町でその名を知られるブーランジェリーのパンでした。

児玉シェフが登場した前回の記事はこちら▼

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ボンヴィボンの児玉圭介シェフ
「ブーランジェリー・ジャンゴの『ローストポテトブレッド』が私の推しパンです。シンプルだけど毎日でも食べたくなるパンで、実はものすごく手間がかかっているんですよ」(児玉シェフ)

毎日食べたくなるということは、飽きの来ないタイプのパンなのでしょうか。児玉シェフの推しパンの正体に迫るべく、さっそくジャンゴへ取材を申し込みました。

人形町の人気店「ブーランジェリー・ジャンゴ」へ

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2010年11月に練馬区江古田にオープンし、2019年5月、パンには不毛地帯と言われた人形町界隈へ移転した「ブーランジェリー・ジャンゴ 」。昔ながらの街並みが残る人形町周辺は、以前は昔ながらのパン屋さんばかりでしたが、近頃は本格的なパンを売るお店が増え、なかでも同店はシックでおしゃれな外観もあってひと際注目を集めています。

ちなみに、店名の「ジャンゴ」は、1930年代から1950年代初頭にかけてフランスで活躍した天才ジャズ・ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトからとったもの。オーナーシェフの川本宗一郎さんが「ジャンゴの音楽はパンのある風景と合う」と感じたことから、この名前に決めたのだとか。

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入ってすぐ目に入るのは、カウンター下や壁を埋め尽くす文様。この壁面のモチーフはチェコの建築家、パヴェル・ヤナークが設計した陶製のクリスタルボックスで、特注の照明もチェコのキュビズム(※)を参考としているといいます。「10年後でも20年後でも流行に左右されることなくここに居続けたい」という川本シェフの想いから、お店の顔として採用されたものなのだとか。一見すると、江戸切子の柄にも見え、人形町という町ともよく合うように感じられます。
※20世紀初頭にピカソとブラックによって始められた芸術運動。立体派と訳される

天井が高く、開放感あふれる店内には、ハード系からクロワッサン、デニッシュ、彩り豊かなオープンサンドまで、おいしそうな商品がいっぱい!

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こちらは川本シェフが最近特に開発に力を入れているというパネトーネ(イタリアの伝統的なドライフルーツが入った発酵菓子パン)。クリスマスシーズンに食べられることの多いパンですが、ジャンゴでは一年中販売されています。焼き上がりまで3日かかるという手の込んだパネトーネは、生地はしっとりとして、それでいて口溶けがよく、リッチな味わいが楽しめるとのこと。

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カウンターに陳列されたローストポテトブレッド 820円(税込)※ハーフサイズ 410円(税込)も購入可
お目当ての推しパンは、カウンターに置かれた大きなショーケースの上に陳列されていました。POPの「じゃがいもを練り込んだもちもちパン」という文句が、味や食感への期待感を高めます。わりと大きなパンだったのですが、せっかくなのでまるまるひとつ購入!

ローストポテトブレッドをさっそく試食!

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外見的にはシンプルなローストポテトブレッド、さっそく試食開始です。いったいどんなパンなのでしょう。私は袋を開けるこの瞬間が大好き!ふわりと広がる小麦の香ばしさに、パン職人の想いが感じられます。

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ナイフで切り分け手に取ると、じゃがいもの香りがふんわりと……。なにもつけず、そのままかじりついてみました。POPに書いてあったとおり、もっちりしっとりの好食感!味は良い意味でクセがなく、口に広がる小麦とじゃがいもの風味に食べる手が止まりません。

味はもちろん、この食感はクセになる……!児玉シェフが「毎日食べたくなる」と表現した理由が良くわかります。

どうしてこんなにおいしいんだろう?答えを知るべく、川本シェフを質問攻めにしてみました!

おいしさの秘密はじゃがいもを丸ごと使うこと!

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ブーランジェリー・ジャンゴ オーナーシェフ / 川本宗一郎さん デザイン会社から一転してパン職人の道へ進み、千葉県の一般的な街のパン屋で約3年働いたのち、都内の複数店で働く。2010年に江古田にブーランジェリー・ジャンゴを開業。2019年5月、練馬区江古田から日本橋浜町に店舗を移転
父親の仕事の関係で、小学校の高学年までフランスで過ごしたという川本シェフ。デザイン会社からパン職人の世界へ飛び込み、自分の店をもつようになった今も、毎年のようにヨーロッパの国々へ足を運び、本場の空気を感じるようにしていると言います。

そんな川本シェフが作るパンは、個性的で異能すぎると評判!ふつうでないパンのアイデアが次から次へと出てくるのは、デザインの世界という出自ゆえか、はたまた本場の味を知っているからこそでしょうか。

「ほかのパン屋さんがやってることをやりたくない。流行を追うのではなく、自分にしかできないパン作りをしたいんです」

そう語る川本シェフの作品だけに、ローストポテトブレッドにもなにか驚くような仕掛けがあるのでは……。

ーーさっそくですが、ローストポテトブレッドのアイデアはどこから生まれたんですか?

川本シェフ(以降 川本) じゃがいもをパンに使ってみようと考えたときに、惣菜パンにするのではなく、いろいろとアレンジして楽しめるものにしたいと思いました。日本ではあまり馴染みのないアプローチですが、パン職人としての自分の個性を出したい気持ちもありまして。

ーーズバリ、おいしさの秘密はなんでしょうか?

川本 じゃがいもを皮ごとローストして生地に練り込んでいます。そうすることで、でんぷんのはたらきによってモチモチとした食感が生まれるんです。こうした手間をかけるというのはほかではなかなかマネできないと思いますよ。使用するじゃがいもの品種を季節ごとに変えているので、買う時期によって味の変化を感じられるのも特徴です。

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皮付きのままローストされたじゃがいも
ーー皮ごとじゃがいもをローストするのはどうしてですか?

川本 やはり皮のところに旨味があるので。それを生かすために一番良いと思ったのが、皮ごとローストする方法でした。

ーーほかのお店でじゃがいもを使う場合、粉末になったものを使うことが多いですよね。お店で皮付きのじゃがいもをローストするという作業、かなり大変なのでは。

川本 たしかに、ローストするためにかなりの場所を取られますし、時間も手間もかかります。でも、おいしさを優先しています。

ーー1日に何本焼いているんですか?

川本 3本です。
ーー3本!手間がかかるということで、やはりたくさんは作れないんですね。

川本 このパンを使ったサンドイッチも販売していますので、ローストポテトブレッドが品切れのときは、そちらをお試しいただければと思います。

おすすめの食べ方はサンドイッチ

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ーーこのローストポテトブレッド、どんな食べ方をするとよりおいしくいただけますか?

川本 そのまま食べてパンの風味を楽しむのも良いですし、バターやジャムをつけて食べてもおいしいです。特におすすめしたいのはサンドイッチ。特別な食材は必要ありません。おうちの冷蔵庫に残っている食材を好きに選んでパンではさめばOK。なにせじゃがいものパンですから、たいていの食材は合いますよ。

取材後、サンドイッチも試してみました

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取材を終えて帰宅し、さっそく自宅でローストポテトブレッドを使ったサンドイッチを作ってみました。スライスしたローストポテトブレッド2枚をそれぞれ軽くトーストし、ベーコン、レタス、トマト、スライスチーズをはさんでBLTCサンドに。

余談ですが、サンドイッチに使うパンをふつうに焼いてしまうと、具材と馴染みづらくなるんですよね。そこで私は、パン2枚を重ね合わせてトースターに入れ、焼くようにしています。すると上下の片面はカリカリ、その反面は焼く前の状態を残すことができて、よりおいしく仕上がるんですよ。

さて、サンドイッチを食べた感想ですが、おいしかった!どの具材ともケンカせず、パンそのものの風味のおかげで、旨味豊かなサンドイッチになっていました。ぜひ皆さまにも試していただきたいと思います。

ローストポテトブレッドは1日限定3本なので、必ず手に入れたいという場合は、早い時間にお店へ行ったほうが良いかもしれません。

ブーランジェリー・ジャンゴは、遊びごころいっぱいのパン屋さん。お店のなかでは、ガラス越しに厨房で働くシェフの姿も見ることができます。情緒あふれる人形町の町並みを眺めて散歩しながら、足を運んでみてください。
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