ライター : とも

子育てフードライター

「油を売る」の語源って?

「油を売る」とは、むだ話をして仕事をさぼる様子を表すことわざです。仕事中に関わらず、勉強や作業をしている最中にほかのことをしていると、このように言われてしまうことがあるかもしれません。

では、なぜ仕事をさぼることを「油を売る」と言うのでしょうか?

「油を売る」がなぜ怠けるの意味か

「油を売る」の由来は、町の油売りという説が有力です。当時は、油を入れた樽をかついで売り歩き、客が持参した升に柄杓で油を注ぐスタイルでした。

柄杓から注いだ油が糸をひいてなかなか切れなかったため、油売りは客と世間話をして油が容器に入るまでの間をつないでいたそう。

世間話をしている間は仕事をしていなかったことから、いつしか「油を売る=怠ける」の意味をもつようになったといわれています。

江戸時代に使われていた油

江戸時代は、街中に多くの屋台がありました。そばやうなぎなどの屋台に並んで人気だったのが天ぷら。江戸前の穴子や芝えびなどは当時から食べられていたと考えられています。天ぷらに多く用いられていたのは、菜種油だったそう。

また、油は調理以外にも用いられていました。椿油やごま油は女性の髪につけていたという記録があり、油がさまざまな用途に使用されていたことが分かります。

江戸時代の油は庶民の必需品。油問屋は大忙し

古くは限られた人々しか使用できなかった油は、江戸時代に入ると食用や美容のほか、明かりとしても使用され、庶民の必需品となりました。

江戸時代初期には、油市場の中心であった大阪から油を買い集める専門の問屋が誕生。しだいに油問屋の数は増え、江戸で多くの油が消費されていたと考えられています。

また、関東地方で菜種油の原料である綿作の栽培が盛んになりました。江戸時代後期には、江戸で使用する油の30%近くを近郊で搾油された油が占めるように。

これらを踏まえると、油を売ることを生業としてしていた油問屋や、綿作栽培に携わる人々は、仕事が充分あったであろうことがうかがえます。

美濃の有名武将も元油売り

戦国時代の武将で織田信長にも縁がある「斉藤道三(さいとうどうさん)」は、美濃の油問屋だったという説があります。油売りから転身し、美濃を治めたというエピソードは今も語り継がれていますよ。

こんなふうに言われたら注意

「油を売る」という言葉は、どのように使うのが正しいのでしょうか。以下の例文を参考にしましょう。

・買い物へ行ったきり帰ってこないが、どこで油を売っているんだろう
・あの人は油を売ってばかりで、なかなか仕事に取りかからない

「さぼっている」や「怠けている」を遠回しに表現するときに用いられるため、もしこのように指摘されたら行動に気を付けたほうが良いですね。
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