お客様にとって幸せなことを選ぶ力、“築地の技”が今を支える

Photo by Kaori Saneshige

中央卸売市場の移転や、新型コロナウイルス感染拡大による影響を受けているかと思いますが、築地の今についてお聞かせください。

寺出:ありがたいことに、今までうちの店で買ってくれていたお客様は、変わらず来ていただいています。初代から培った信用と、正直に商売に取り組む姿勢でお客様としっかりと繋がる。そのことが今のような時代に一番の強みになっていると思います。

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築地で代々商売されていた皆さんは、いま同じように感じられているでしょうね。

寺出:そういった店は「お客様にとって一番幸せなことを選ぶ力」を持っているんですよ。 “目利き”という言葉がよく使われますが、私たちはその力を「築地の技=築技(つきわざ)」と呼んでいます。

例えば、うちの店だと、お肉を買いに来たお客様に「いつ召し上がるんですか」、「何に使われるんですか」といったことを聞くようにしています。

今日食べるのか、3日後に食べるのかで、“いい肉”というのは変わってきます。少し先に食べるものなら、冷凍や解凍の方法もアドバイスする。そうすると、お客様が「やっぱりおいしかった」と戻ってきてくれる。そこで信頼関係が結ばれるわけです。そういった技を、築地にある460店舗すべてが持っている。だから、今でも築地はパワーがあるんだと思います。

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“三方良し”の精神で描く、築地の未来予想図

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これからの築地はどうなっていくとお考えですか?

寺出:豊洲へ場内が移転し、私たちは、魚を扱う有力な仲卸業者が出店する「築地魚河岸」施設を作りました。築地はやっぱり魚の街ですから。魚を中心に築地の伝統やプロ意識を守っていこう、未来につなげていこうと。移転がきっかけで、むしろ築地にいる皆の意識が一枚岩になったと思います。

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「近江屋」としては、これからどんなことに取り組んでいきたいですか?

寺出:私たち「近江屋」も新しいことをやっていかなければいけません。そういった流れのなかで、隣に「ロースト肉工房」をオープンします。これまでも、「近江屋」にしかないオンリーワン商品として、「特製やきぶた」や「30日熟成近江牛スネ肉のローストビーフ」などを販売してきました。

新たな工房でも、オンリーワンの商品を軸に、できたてのテイクアウト料理やお弁当、真空パックなどさまざまな商品を売っていこうと考えています。

そのひとつに“情報発信”があります。今はモノよりコトの時代です。「こういうことをやるよ」とか「こういうものを作るよ」と発信し、「いいね!買いたい」となっていく。そこにモノを合わせるのが大切だと思います。

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