ライター : Raico

製菓衛生師 / スイーツ&フードアナリスト / フードライター

食べ終わって「おあいそ!」は間違い

寿司屋や居酒屋などで食事を楽しんだあと、店員さんに「すみませ〜ん!おあいそお願いします!」と声をかけていませんか?店員さんはニコニコしながらも、「日本語が間違っている」と心の中で苦笑いしているかもしれません。「おあいそ」の正しい意味やスマートな声のかけ方について、詳しく解説します!

「おあいそ」の正しい意味と語源

「おあいそ」は、漢字で書くと「お愛想」となります。さらに、「お愛想」は、「愛想尽かし」を省略した言葉です。「彼には愛想が尽きたわ!」と今でも使いますが、元々は遊郭で使われていた言葉。客がお気に入りだった女郎に対する愛情をなくして「もうお店に来たくない」という状態を、「愛想尽かし」と呼びました。

飲食店で客がお店側に対して「おあいそで!」というのは、「このお店には愛想が尽きたからもう来ません!」という意味になってしまうため、注意が必要です。「お気に入りのお店で使ったことがある……」と、顔が赤くなったり青くなったりしている人もいるのではないでしょうか。

ツケ文化から「おあいそ」は生まれた

「おあいそ」は、元々あまり意味のよくない言葉とわかりました。しかし、どうして現在ではカジュアルに使われているのでしょうか?

日本の江戸時代には、「ツケ」という文化がありました。行きつけのお店で常連客が、飲み食いした代金をその場で支払わずに、お店の帳簿に付けてもらい、あとでまとめて支払うという仕組みです。「おやじ〜、付けといて!」「はいよっ!」という会話を、時代劇のドラマで観たことはありませんか?

その場で支払わずに「ツケ」にするのは、「またお店に来るよ!」というメッセージにもなります。お互いの信頼関係が築けていて初めて成立する、江戸の粋な文化です。ツケにせずきれいに清算してしまうのは、「もう来ないよ」という意味。「ツケにしないのはお愛想尽かしだけど……」ということです。

「おあいそ」は客が使う言葉ではない

時が流れるにつれてツケ文化は弱まり、客は飲食時にきっちり飲食代を支払うようになります。お店側からお会計について切り出す際に、「お愛想尽かしなことで申し訳ございませんが、お勘定をお願いします」と使われていました。

だんだんと意味が転じて、「お勘定」そのものを意味する言葉として、客側も使うように。現在のように広く浸透したのは、明治時代の雑誌「風俗画報」にて、お勘定を「おあいそ」と言うのは京都の風習として紹介されたのがきっかけ、と考えられています。

お勘定、お会計、チェック。正しい声のかけ方は?

「おあいそ」と言うのがふさわしくないなら、なんと言えばスマートでしょうか。「お勘定」「お会計」「チェック」という言葉が同じように使われますが、どれも正解です。

しかし「チェックで」と言いながら両手人差し指を交差させて×印を作るジェスチャーは、日本では賛否両論あり、意味が通じないことも。素直に「お勘定お願いします」「お会計お願いします」と言えば、間違いありませんよ。

丁寧に言えば間違いない!

飲食店で「ツウ」ぶって専門用語を使おうとすると、痛い目を見ることがあります。「おあいそ」はもともとお店側が使う言葉とは、意外だったのではないでしょうか。丁寧な言葉を選べば、粋がって見えることもありません。

帰り際に「おいしかったです」「ごちそうさまでした」と感謝の気持ちを伝えれば、もっとステキです。スマートで大人らしい振る舞いを、身につけたいですね。
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