4. スパゲッティとソースを混ぜすぎない!

Photo by 島田 みゆ

柳田:スパゲッティとソースはできるだけ少ない回数で混ぜ合わせ、ボウルも振りすぎないように。空気に触れて熱が逃げ、さらに水分も飛んで、スパゲッティがパサパサになってしまいます。お店では、お箸で軽く5回ほど、ボウルを振るのは2回ほど。

時間を置くと状態が変わってしまうので、作ったらすぐに食べるのが理想的です。

「たらこスパゲッティ」が誕生した理由

そもそも、なぜ「たらこスパゲッティ」が生まれたのでしょう?

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▲「たらこスパゲッティ」のおいしさの秘密が記されたプレート
柳田:「たらこスパゲッティ」が生まれたのは1963年、お客さんとのやりとりがきっかけでした。海外出張帰りの常連さんが、お土産にキャビアを持ってきて「これでパスタ料理を作ってほしい」と頼んだそうです。

キャビア入りのスパゲッティはとてもおいしいものでしたが、さすがに高級なのでメニュー化はむずかしい。そこで、キャビアを何かで代用しようと試行錯誤した結果、「たらこスパゲッティ」が生まれたのです。

お客さんの要望がなかったら、「たらこスパゲッティ」は生まれなかったかもしれませんね。

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▲たらこスパゲッティの誕生は世間に大きな衝撃を与え、全国からたくさんのお客が押し寄せたのだとか。その人気を知ったお店がメニューに入れるようになっていったのだそう
柳田:そうかもしれません。また、今では当たり前ですが、提供直前に麺をゆでる「ゆで上げパスタ」を始めたのも当店が最初だといわれています。

当時は時間短縮のために、ゆで置きした麺を提供直前に温め直すのが一般的でした。ゆで上げスタイルの当店では、お待ちいただいているお客様と話すなかで、たらこだけでなく納豆やうにを使ったスパゲッティも生まれたと聞いています。

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柳田:お客様の声を聞く……それがまさに店名の由来です。シェイクスピアの戯曲「真夏の夜の夢」に“hole in the wall(壁の穴)”という言葉が出てきます。恋人同士が壁に開いた穴を通してささやきあい、心を通わせていくシーンを、お店とお客様に重ね合わせて「壁の穴」と名付けました。

いつまでもお客様と交流して、心が通じ合うようなお店でありたいという想いが込められているんです。

シェフにとって、「たらこスパゲッティ」はどんな料理ですか?

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柳田:やはりお店にとって特別なものなので、プレッシャーを感じるメニューですね。作り方がとてもシンプルなだけに、ゆで加減や調理の手際がすべて味に表れ、修正がいっさい利きません。そういう意味では、とてもむずかしい料理なんです。

これからも、すべてにこだわっておいしいパスタを作っていきたいです。

発祥店の「たらこスパゲッティ」には、プロの技が詰まっている

「元祖たらこスパゲッティ」は、お客様への想いと、食材へのこだわりや熟練の技が詰まったひと皿。シェフ直伝のレシピとコツを参考に、家庭でも絶品「たらこスパゲッティ」を作ってみてください。いつもとの違いに驚くことでしょう。

取材撮影・執筆:島田 みゆ
企画構成:道岡直宏(macaroni 編集部)
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