ライター : 中島茂信

日髙シェフ、あなたの包丁 見せてください!

Photo by macaroni編集部

日髙シェフが愛用するツヴィリングの包丁
「いろいろな包丁を使ってきましたが、一番気に入っているのはドイツの『ツヴィリング』ですね」

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リストランテ アクアパッツァ/日髙良実シェフ 1957年兵庫県生まれ。神戸ポートピアホテルのフランス料理店「アラン・シャペル」で修業後、イタリア料理に転向。1986年に渡伊。北から南まで14軒で研鑽を積む。1989年に帰国し、東京・乃木坂の「リストランテ山﨑」のシェフを経て、1990 年、東京・西麻布「アクアパッツァ」のシェフに就任。2020年7月よりYouTube「日髙良実のACQUAPAZZAチャンネル」を開設。すでに登録者数は10万人を越え、グーグルからシルバー クリエイターアワードの盾を贈呈された
日髙良実シェフは、昨年7月にYouTube「日髙良実のACQUAPAZZAチャンネル」を開設し、レシピ動画を配信しています。店の厨房で撮影しているので料理道具はすべて丸見え。もちろん包丁も。

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日髙シェフが最近使いはじめたというツヴィリングの牛刀
「YouTubeをはじめるにあたり、新しいツヴィリングを入手しました。でも、いまだに手放せないツヴィリングがあります。調理師学校を卒業し、料理の修業をはじめたばかりの頃、親父が出張先のアメリカで買ってきてくれた包丁です」

父が買ってくれたツヴィリング

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料理人になったばかりの頃、父親が贈ってくれたツヴィリング
ーー料理人の道を歩みはじめた息子のために包丁を買ってくれたんですね。

「親父は僕が料理人になることを心良く思っていませんでした。2浪したもののどこの大学にも受からず、喫茶店をやるつもりで調理師学校へ行かせてほしいと頼んだら、渋々承知してくれたのです」

ーーイタリアンではなく、喫茶店ですか。

「高校時代も浪人中も、一日中喫茶店に入り浸っていました。喫茶店でピラフやナポリタンを食べ、それを見よう見まねで作り出したのが、料理を作るようになったきっかけです。

親父はサラリーマンで、息子の私にも、大学を出てサラリーマンになるか、自衛隊員か弁護士になってほしいと望んでいたようです。でも私自身は、どんな職業につきたいのかまったく考えていませんでした。ただ、サラリーマンには向いていないし、なっても出世はできないだろうとだけは思っていて。

入り浸っていた喫茶店は夫婦で営んでいました。ふたりを見ているうちに、こういう生活や生き方もあるのかと思い、喫茶店をやるつもりでした」

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刃元が欠けたままの牛刀
日髙シェフは21歳で調理師学校を卒業し、神戸のフレンチ「塩屋異人館倶楽部」に入店。お父様がアメリカへ行った際、料理人の道を歩みはじめた息子のために、ツヴィリングの包丁セットを買ってきてくれたといいます。

「6本ぐらいのセットだったと思います。そのなかの牛刀とペティナイフを長年使い込んできました。牛刀はもっと長くて太かったんですが、自分で研いでいるうちに短くなってしまった。刃元が凹んでいるのは、鶏の骨を割っていたから。この牛刀は刃元が研ぎづらく、刃先だけを研いできました」

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経年変化で刃型が変わり、ツヴィリングのマークも消えたペティナイフ
牛刀もペティナイフもツヴィリングの双子のマークが消えています。ペティナイフにいたっては、刃形が原型をとどめていません。

「ペティナイフはジャガイモやニンジンなどの皮をむいているうちに、自然とこういう形になってしまいました」

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ーー今もツヴィリングを使っているのはなぜですか?

「ツヴィリングの包丁は僕の手にしっくりとくるんです。バランスがいいし、鋼に硬度があり、欠けにくい。いろいろなメーカーの包丁を使ってきたし、それぞれ良かったのですが、握ったときのフィーリングはツヴィリングが一番。手の一部のような感覚。フライパンにしても、道具は相性ですよね」

料理好きな私たちはどんな包丁を選べばいいのか

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ーープロではない私たちはなにを目安に包丁を選ぶべきでしょう。

「手にしたときのフィーリングを大切にして選んでほしいと思います。料理好きの方なら良いものを1本はもつといいでしょう。最低でも牛刀とペティナイフはそろえたいですね」

ーー最後に、日髙シェフにとって包丁とは?

「身体の一部だと思います」

喫茶店でナポリタンやピラフを作ろうと思ったことから料理人を目指した日髙シェフ。調理師学校を卒業し、料理人1年生になった息子へ父が贈ったツヴィリングが、日髙さんがグランシェフへ至る道へと導いた、といえるかもしれません。
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