ライター : macaroni 編集部

監修者 : 野﨑 洋光

「分とく山」総料理長

ハレの日を華やかに彩る!基本のおせち料理3品

Photo by きたやまあさみ

分とく山の料理人、野﨑洋光さんから教わる基本のレシピ。第5回目は、お正月の定番・おせち料理3品の作り方をご紹介します。

コリコリッとした独特の食感がくせになる「かずのこの醤油漬け」は、出汁の効いた奥深い味わいが特徴。ほんのり甘い「田作り」は、くるみとじゃこのポリポリ食感が箸休めにぴったりです。「海老のつや煮」は、色鮮やかで、食卓に華を添えてくれますよ。

教えてくれる料理人

Photo by 分とく山

「分とく山」総料理長 野﨑 洋光(のざき ひろみつ)さん
1953年(昭和28年)福島県石川郡古殿町生まれ。武蔵野栄養専門学校卒業後、東京グランドホテルの和食部に入社。5年間の修行を経て八芳園に入る。1980年に東京・西麻布の「とく山」料理長に就任。1989年に南麻布「分とく山」を開店し、2020年現在、グループ店を含む5店舗を総料理長として統括。雑誌、TVなど各種メディアを通して、調理科学、栄養学をふまえた理論的な料理法に基づくわかりやすい和食を提唱。
著書に「常備菜でつくる和のお弁当」(世界文化社)「季節を楽しむ おもてなしの食卓」(KADOKAWA)「日本料理 前菜と組肴」(柴田書店)「じつは知らない和食の常識」(洋泉社)「野﨑洋光が考える 美味しい法則」(池田書店)「和食のきほん、完全レシピ」(世界文化社)ほか多数。

おせち料理を作るポイントとは?

野﨑さん:「昔は『おせち料理は仕込むもの』というイメージがありましたが、今は食材の流通がよくなり、 フレッシュなものが手に入るようになりました。

なので、新鮮な食材を購入したら、短時間で作ることができる料理は、なるべく召し上がる直前または当日中に調理するといいですよ」

食材選びのコツ

Photo by きたやまあさみ

おせち料理3品の食材の選び方を、野﨑さんに教えていただきました!

かずのこ

かずのこは、形が崩れておらず、整っているものを選びましょう。 崩れているものだと味がぼやけ、仕上がりがボロボロになってしまいます。

ちりめんじゃこ

ちりめんじゃこは、粒がそろっているものを選ぶのがおすすめ。 本来、ちりめんじゃこは粒が小さいものが高級ですが、田作りを作るのでしたら、 粒が大きいもので十分ですし、大きいほうがおいしくできます。

海老

「海老のつや煮」に使う海老は、生きているもののほうがもちろんいいですが、冷凍のものでも構いません。 ただ、作るのに時間がかかるものではないので、前日から作り置きするのではなく、 直前に調理して仕上げるのがおすすめです。

1. 塩加減が絶妙!かずのこの醤油漬け

Photo by きたやまあさみ

おせち料理の定番「かずのこの醤油漬け」です。おいしく仕上げるポイントは、塩気をしっかり抜くこと。塩抜きは2日ほどかかるので、前もって準備しておきましょう。コリコリっとした食感と、ほどよい塩気で、お酒とも相性抜群です。

材料(2~4人分)

Photo by きたやまあさみ

・かずのこ(塩蔵)……4本
・塩……適量
・削り節(糸がき)……適量
a. 出汁……200cc
a. 薄口醤油……30cc
a. 酒……30cc
a. かつお節……2g

カロリーと糖質・塩分量(1人分)

カロリー……85kcal
糖質……2.4g
塩分……4.4g(※1)

材料2人分を全量とした場合の1人分の栄養価です。

調理のポイント

かずのこを漬ける際は、しっかり冷ました漬け汁を使いましょう。かずのこに火が入るのを防ぐためです。

かずのこの醤油漬けの作り方(調理時間:40分)

1. かずのこの塩気を抜く
塩蔵かずのこを1%弱の塩水に浸し、塩気を抜きます。(塩水は数回取り替え、2日ほどかけて塩気を抜きます)

2. 鍋で調味料を煮立たせる
鍋にaを合わせて火にかけ、煮立ったらそのまま冷まし、ざるで濾します。

3. かずのこをひと口大に切る
ほどよく塩気が抜けたかずのこをひと口大に切ります。

4. 漬け汁の半量に浸す
切ったかずのこを2の漬け汁の半量に浸し、30分置いて汁を捨てます。

5. 残りの半量の汁に浸す
さらに、残りの半量の漬け汁に浸します。

6. 削り節(糸がき)をのせる
器に盛り、削り節(糸がき)をのせたら完成です。

ここが気になる!Q&A

編集部 大河内:「工程1.のかずのこの塩気はどのくらい抜きますか?味見をして好みの加減を見つければいいのでしょうか?」

野﨑さん:「味見をして、塩気が少し残ると感じる程度まで塩抜きしましょう」

編集部 大河内:「工程4.5.の漬け汁に浸す作業を2度繰り返すのはなぜでしょうか?」

野﨑さん:「1度目が下漬け、2度目は本漬け。最初に半量で下味をつけることで味が入りやすくなります。一度に漬けてしまうと味が浸みないので、2回に分けることが大切なんです」

編集部 大河内:「なるほど。2回に分けることで、よりおいしいかずのこができるんですね」

2. ポリポリおいしい!じゃことくるみの田作り

Photo by きたやまあさみ

噛むほどに旨みが増すちりめんじゃこと、カリッと香ばしいくるみがよく合う「田作り」です。甘辛い味つけが箸休めにちょうどいいひと品ですよ。

材料(2~3人分)

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・ちりめんじゃこ……20g
・くるみ(むき)……60g
a. 酒……100cc
a. みりん……50cc
a. 砂糖……50cc
a. 薄口醤油……大さじ1杯弱(13cc)
・水あめ……大さじ1杯
・七味……少々

カロリーと糖質・塩分量(1人分)

カロリー……432kcal
糖質……41.6g
塩分……2.7g(※1)

材料2人分を全量とした場合の1人分の栄養価です。

調理のポイント

ちりめんじゃことくるみは、香ばしさを出すため、フライパンで空炒りしてから調味料と合わせます。

田作りの作り方(調理時間:20分)

1. くるみを空炒りする
くるみをフライパンで空炒りします。

2. ちりめんじゃこも空炒りする
くるみを一旦取り出し、ちりめんじゃこもフライパンでカリッとするまで空炒りします。

3. 鍋で調味料を煮つめる
鍋にaを入れ、強火で煮つめます。泡が大きくなってきたらくるみ、ちりめんじゃこの順に入れましょう。

4. 水あめを加える
中火に落とし水あめを入れたら、焦げないよう手早く絡めます。

5. バットに広げて冷ます
熱いうちに手早くバットにあけ、菜箸で全体に広げて冷まします。

6. 七味をふる
仕上げに、七味をふったら完成です。

ここが気になる!Q&A

編集部 大河内:「水あめを用意できない場合、入れなくてもおいしくできるのでしょうか?」

野﨑さん:「水あめを使うのは、とろみと艶出しのためですが、もし用意できないときは、入れなくても構いません」

編集部 大河内:「とろみも味のうちなので、やはり用意しておくのがいいですね」

3. 主役級の存在感!海老のつや煮

Photo by きたやまあさみ

ぷりっぷりの食感と、鮮やかな見た目が人気の「海老のつや煮」です。海老は背わたを取り除くことで、色が悪くなったり、味が落ちたりするのを防ぎます。生の海老はもちろん、スーパーで売っている冷凍海老でも手軽に作れますよ。

材料(4人分)

Photo by きたやまあさみ

・有頭海老……10尾
a. 酒……200cc
a. みりん……100cc
a. 砂糖……60g
a. 薄口醤油……大さじ1杯
・生姜(薄切り)……4~5枚

カロリーと糖質・塩分量(1人分)

カロリー……263kcal
糖質……30.1g
塩分……2.2g(※1)

調理のポイント

冷凍海老を使用する場合は、海老を丸めて串を刺し、形を整えた状態にしてから煮ましょう。ただ、すぐに固くなるので、海老に火が通ったら煮汁につけたまま冷ますのではなく、海老を別の容器に取り出して冷まします。

海老のつや煮の作り方(調理時間:20分)

1. 海老の背わたを取り除く
海老は、頭のうしろの部分に竹串を刺して、背わたを取り除きます。

2. 鍋で調味料を煮つめる
鍋にaの調味料を入れて中火にかけ、煮立たせます。

3. 海老を加える
煮汁が色づいてきて、細かい泡が立ってくるようになったら火を弱め、1の海老を加えます。

4. 煮汁が少なくなるまで煮る
きれいに海老が曲がるように菜箸で形を整えながら、煮汁が少なくなるまで煮ます。

5. 生姜を加える
仕上げに生姜の薄切りを加えて、ひと煮立ちさせたら、そのまま冷まして完成です。

ここが気になる!Q&A

編集部 大河内:「工程4.の煮汁が少なくなるまで煮るとありますが、目安はありますか?」

野﨑さん:「焦げない手前まで煮詰めてください」

編集部 大河内:「なるほど、煮詰める際は目を離さず、焦げないように注意しておくことが大切ですね」

絶品おせち3品で、お正月を盛り上げよう!

Photo by きたやまあさみ

おせち料理には欠かせない、かずのこの醤油漬け、田作り、海老のつや煮の3品をご紹介しました。

かずのこは塩気を抜くのにやや時間がかかりますが、手間ひまかけて作った分、そのおいしさは格別です。田作りと海老のつや煮は、どちらも20分ほどあれば作れるため、大晦日に作り始めてもOK。

今回ご紹介した3品だけでも、十分お正月らしさが出るので、気軽に作ってみてくださいね。
分とく山の店舗情報
【参考文献】
※1 日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2018年
(2020/12/24参照)
取材・文/大河内美弥(macaroni編集部)
料理・撮影/きたやまあさみ

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