ライター : macaroni 編集部

“アシェットデセール”入門としてのパフェ|表参道「EMME(エンメ)」

Photo by 田上大輝

お皿に盛られた作り立てのデザート「アシェットデセール」。作り立ての美しさに心癒され、時間の経過とともに変化する味わいを最後のひとくちまで堪能できます。

昼はアシェットデセールのお店、夜はワインバーとふたつの顔を持つ表参道「EMME(エンメ)」のパフェは、アシェットデセールの考えに基づいて作られているもの。

一流パティシエールが作り出すパフェには、一体どんな世界が広がっているのか、一層ずつ解剖していきましょう。

美しい「タルト・タタンパフェ」ができるまで

Photo by 田上大輝

フランスの伝統菓子「タルト・タタン」をパフェで表現しようと作られた、「エンメ」の人気パフェのひとつ。

パフェを盛るグラスは、青山にある「スガハラガラス」で、パティシエールの延命寺美也さんがひとめぼれしたものを使用しています。すべての層をいっぺんにスプーンですくえるようにと、底の深いパフェグラスから変えたそうです。

Photo by 田上大輝

まず1層目は、タルト・タタンに使った紅玉(こうぎょく)りんごの皮を、水と砂糖で煮出して作ったジュレ。産地直送のりんごは、皮にも旨味と栄養がたっぷり詰まっているのです。

鮮やかなピンク色は、りんごの皮から出た天然の色。りんごの華やかな香りとうまみが、ギュッと凝縮されています。

Photo by 田上大輝

このジュレの上にのせるのが、2層目の松の実。絶妙な食感と特有の香ばしさが、パフェの味わいをどのようにアシストするのでしょうか。すでにワクワクが止まりません。

Photo by 田上大輝

3層目は、セロリの香りが苦手な人にも試してもらいたいという延命寺さんの自信作、根セロリのアイスクリームです。根セロリをバターでじっくり炒め、クリームと合わせて丁寧に仕込んだもの。

あえて固めに作り、削るようにして盛り付けます。これは、食べる前に写真を撮るお客さんのために、アイスを溶けにくくしたいという想いから。

Photo by 田上大輝

4層目からは、いよいよタルト・タタンのゾーンに入っていきます。まずは砕いたパイ生地を敷きつめます。これはタルト・タタンのタルトを表現。サクサクとした食感がこれまたアクセントとなりそうです。

Photo by 田上大輝

そして、メインのタルト・タタンがお目見え。まずは表面に砂糖をまぶし、バーナーを使ってキャラメリゼ。薄氷が張ったように光沢をおび、パリっとした食感に仕上がります。

Photo by 田上大輝

タルト・タタンは約3時間かけ、140℃前後のオーブンでじっくり焼き上げられたもの。パフェにしたときの口どけを考えて、あえてりんごの水分を残すように絶妙な加減で焼かれています。

焼き上がるまでこまめに様子を見ながら、その日の気温や湿度、りんごの水分量に注意を払い仕上げます。延命寺さんとスーシェフ(副料理長)にしかできない工程なのだそう。

Photo by 田上大輝

根セロリの葉と細くカットした紅玉りんごを飾り付け。繊細な手仕事に息をのみます。

Photo by 田上大輝

キャラメリゼしたタルト・タタンの上には、なんと酒粕のクリームをふんわりと。粕汁を好む延命寺さんならではのアイデア。根菜である根セロリとの相性を想像して試したところ、見事にハマったのだそうです。タルト・タタンと合わせると、酒粕のアルコール感によってシードルのような印象に。

最後に、期間限定のハニートリュフを削って完成です。

五感が刺激される、上質な食体験

Photo by 田上大輝

キャラメリゼしたタルト・タタンの表面をスプーンでコンっと割り、スプーンを入れてひとくち。

紅玉りんごの酸味と甘さのバランスが絶妙です。シルキーな酒粕のクリームと合わせたり、ふんわりとした根セロリのアイスクリームと合わせたり、さまざまな組み合わせでいただきましょう。

Photo by 田上大輝

「あ、こんな味になるんだ!」 と味の重なり合いに驚き、新しい発見に喜び、多幸感でいっぱいになります。底までスプーンを入れてすべての層を一気に口に入れると、まさに至福!

紅玉りんごの甘酸っぱさと、根セロリの清涼感、酒粕のうっとりするような香りが混ざり合い、松の実とパイ生地が食感を楽しくしてくれます。主役である紅玉りんごの味わいを各食材が引き立て、美しいハーモニーを奏でるひと品です。

Photo by 田上大輝

「タルト・タタンパフェ」を作ってくださった、パティシエールの延命寺美也さん。

フレンチの名店「LATURE(ラチュレ)」や、三軒茶屋の人気パティスリー「patisserie Plaisir(パティスリー・プレジール)」などで腕を磨いたのち独立し、2019年に「エンメ」を開業しました。

Photo by 田上大輝

パフェを始めたのは、アシェットデセールをより多くの人に知ってもらうために、キャッチーなパフェスタイルで提供したのがきっかけ。延命寺さんならではの感性と技をグラスに閉じ込めたパフェは、同店で一番人気のメニューとなりました。

デザートとワインを楽しめる、大人のための空間

Photo by 田上大輝

昼はアシェットデセールを、夜はワインを楽しめる「エンメ」。テーブル席はゆったりと過ごせますし、カウンター席はデザートができるまでを見られる特等席です。

落ち着いた雰囲気でひとりでも入りやすく、時間が過ぎるのを忘れてデザートや料理に夢中になれますよ。

パティシエールが丹精込めて作るパフェで、至福のひとときを。

Photo by 田上大輝

取材・執筆
カメイアコ

紹介メニュー
タルト・タタンのパフェ 2420円(税込)
店舗情報
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