ライター : macaroni 編集部

Today's Foodie

前澤由希子/イタリア家庭料理研究家
J.S.A認定ソムリエ、豆腐マイスター。OL時代に各種料理学校へ通い調理師免許を取得。結婚後、単身イタリアへ留学し、現地の料理学校のほか、家庭の主婦や、リストランテのシェフからイタリア各地の郷土料理を学ぶ。帰国後、都内のトラットリアで修業し、船橋市の自宅で料理教室を開講。家庭でも簡単に作れる素朴なイタリア料理、体にやさしいイタリア料理をモットーに、現地の味を発信している。「ELLE a table」をはじめとした料理専門誌や、雑誌「VERY」「CLASSY」などへのレシピ掲載多数。

マンマは豪快。

Photo by macaroni

「道具にあまりこだわりはありません。イタリア人ってそもそも、キッチン家電や調理器具にはあまり興味がないみたいで、わたしもその影響を受けているのかしら(笑)」 “調理器具選びのテーマとは?”という問いに対してそう照れくさそうに答えるのは、イタリア家庭料理研究家の前澤由希子さん。現地の味をそのまま伝えることをモットーとし、『イタリアの家庭料理を学びたい』(白水社)や自身主宰の料理教室「チャオ バンビーナ(Ciao Bambina)」において、イタリアの家庭に伝わる食文化の魅力を発信しています。 そんな前澤さんがイタリアに魅せられたのは、イタリア料理が今ほど身近ではなかった20年ほど前のこと。青山にある「リストランテ 濱崎」主催の料理教室に参加し、そこでふるまわれた料理のあまりのおいしさに衝撃を受けます。そして1999年、本場の味に触れる機会を求めて、イタリアの一般家庭で短期ホームステイを経験。帰国後、勤めていたOLの仕事を退職、夫を上手く(?)説得してボローニャ、シエナ、フィレンツェへの一年間の料理留学に赴きます。 「イタリア人って、包丁をあんまり使わないんですよ。ほとんどといっていいほど、テーブルナイフでカットしてしまうんです。あと、まな板を使っている様子もあまり目にしたことがありませんね。食材を手のひらにのせながら鍋の上で食材を切って、ボトボト入れちゃうんです(笑)」 なんでも今回ご紹介いただく調理器具の愛用品は、そんな現地の生活に則したアイテムが多いのだとか。はたして前澤さんが納得して使っているというお気に入りとは?

1.【包丁】マンマ愛用のナイフ

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「イタリアでは包丁を持っていない一般家庭が多くて、大体の調理はテーブルナイフで済ませてしまうんです。でもあなどるなかれ、テーブルナイフといえど、その使い勝手は多岐にわたります。ムール貝も開けられますし、手打ちパスタをカットするときにも使える。15年間、ずっと愛用している大切な道具です」

2.【ナイフ】ラギオール「ソムリエナイフ」

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「曲線がやわらかくて、女性らしいデザインが気に入って購入しました。といいつつも、ネームバリューに惹かれたのが最大の理由ですが(笑)。ソムリエ試験のワインボトルを開けるテストのときに、かっこいいナイフでやりかったんですよね。象牙ということもあり、温かみのある質感もお気に入り」

3.【まな板】種類いろいろ

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「まな板ですけど、お皿代わりに使っています。食卓を素朴な感じに演出してくれるのが、木のまな板のいいところですね。お客さんがいらしたときには必ず登場します。あとはサンドウィッチをのせたり、グラタン皿の下に敷いたり、のせる料理の大きさに合わせて3種類を使い分けています」

4.【鍋】オリンパス「両手鍋 3L用」

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「もう何年も愛用しているオリンパスの両手鍋。煮込み料理やパスタを茹でるときに使うことが多いですね。こちらで家庭用のパスタを茹でると水が2.5Lほどで済むので、節水にも役立ちます。本当にちょうどいいサイズ感です」

5.【ブレンダー】ブラウン「マルチクイック」

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「ブラウンのハンドブレンダーは洗いやすい上に使いやすい。昔は別のブレンダーを使っていたんですが、こちらに変えたら洗いやすくて使い勝手も抜群に良い。 ワークボウルではジェノベーゼやアーモンドペーストをつくるときに愛用中です。お肉も粉砕できるので、自家製粗挽き肉もつくれちゃいますよ。一方のハンドブレンダーは、ポタージュなどのスープをつくる際には欠かせないアイテムです」

6.【グレーター】マイクロプレイン「ゼスターグレーター」

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「和製の穴型のおろし金よりも細かくおろせて、ニンニク、レモンの皮、チョコレートなどなんにでも使えます。教室で生徒さんにおすすめしたのがきっかけで手に入れました」

7.【スパチュラ】ブランシェ・アソシエ「シリコンスパチュラミニ」

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「ペーストを小分けにするときに愛用しているシリコンスパチュラ。しなり具合、大きさ、材質とすべてにおいて最高なんです。洗いやすくて衛生的ですし、色移りもしません。100本ぐらい用意しておいて、料理教室の生徒さんにおすすめしています。一回試してみると、その使いやすさが腑に落ちるはずですよ」

ITEM

ブランシェ・アソシエ「シリコンスパチュラミニ ホワイト」

¥1,100〜

サイズ:30×150mm

※2018年7月4日時点 価格は表示された日付のものであり、変更される場合があります。本商品の購入においては、Amazon.co.jpおよびrakuten.co.jpおよびshopping.yahoo.co.jpで正確かつ最新の情報をご確認ください。

ITEM

ブランシェ・アソシエ「シリコンスパチュラミニ レッド」

¥1,200〜

サイズ:30×150mm

※2018年7月4日時点 価格は表示された日付のものであり、変更される場合があります。本商品の購入においては、Amazon.co.jpおよびrakuten.co.jpおよびshopping.yahoo.co.jpで正確かつ最新の情報をご確認ください。

8.【その他】肉たたき

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「料理教室の生徒さんとの間で、“船橋の合羽橋”と呼んでいるお店が近くにありまして、こちらはその店で見つけたものです。イタリアの家庭にはよく置いてあるんですが、こちらは形も材質も本場のものと遜色ありません」

料理は人を幸せにする。

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時に味見と称したつまみ食いでお腹いっぱいになりながら、料理中にすすめられた白ワインでほろよいになりながら、料理をする楽しさの本質に触れられたイタリア料理留学。「道具にはこだわらない」という言葉の真意は、料理の主役は“人”にあると確信を得るに至ったからなのでしょう。 「料理をつくる上でいつも考えているのは、自分の家族や生徒さんの家族が幸せになれる料理かどうか。そういう意味では、つくる側の奥さんが疲れちゃう料理はダメだと思っています。たとえば、きれいに盛り付けるよりも大皿によそってみんなで取り分ける方が楽ですよね。 家族が食卓を囲んで、のんびりと会話を楽しむ。イタリアの家庭でその光景を目の当たりにしたときに、私の求めていた食の理想を見出したのかもしれません」 社交的なご両親のもとに育った前澤さんの脳裏に焼き付いているのは、大勢の人が料理をつまみながら楽しげに会話する手触りのある記憶。ホームステイ先のイタリアの家庭にあったのは、そんな心の原風景だったのかもしれません。 「前世はイタリアのマンマだったのかもね」と気恥ずかしそうに話す前澤さんの姿に、本当にそうなのかもしれないと思わせる不思議な説得力がありました。
取材/小林萠(macaroni編集部)、文・構成・写真/山川俊行(macaroni編集部)
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