ライター : macaroni 編集部

きょうの作家さん

小澤基晴
粉引やブロンズ釉、華やかで柔らかい色合いの輪花皿など、あたたかみのある作品の数々で人気を集める作陶家。1974年東京生まれ。 岐阜県立多治見工業高校陶磁科学芸術科卒業後、製陶会社での勤務を経て、 2005年多治見市に築窯。2007年土岐市に工房を移転。

作品はどれも入手困難。人気作家・小澤基晴さん

素朴さと繊細さを兼ね備えた、あたたかみのある器で人気を集める作陶家・小澤基晴さん。落ち着いた色合いの粉引やブロンズ釉の器はもちろん、華やかな色合いの輪花皿もまた、テーブルで存在感を放ちながら料理を引き立てます。 セレクトショップ、器店では作品の入荷直後に売り切れが相次ぎ、個展が開催されれば入場制限がかかるほどの人気ぶり。インスタグラム上には、小澤さんのファンを意味する「#おざガール」というハッシュタグが誕生し、小澤さんの器を使った料理写真に添えて投稿されています。 現代を代表する人気作家の生の声をお届けし、作品の魅力に迫る連載第1回。今回は、作陶の道を志したきっかけや、作品作りにかける想い、ご本人オススメの作品活用術など、小澤さんからいただいた貴重なコメントをご紹介します。

陶芸体験から作陶の道へ

ーーまずは、器作りとの出会いから伺っていきたいと思います。器や料理については、子どもの頃から興味をお持ちだったんですか? 「今、改めて振り返ってみれば、料理は好きだったなと思います。料理をつくって、他の人に食べてもらうのが好きで。器については、特別興味を持っていたわけではありませんね」 ーーInstagram上でも旬の食材を使ったおいしそうな手料理の数々を公開されていますよね。器に特別興味があったわけではないとのことですが、作陶の道へ進まれたきっかけを教えていただけますでしょうか。 「私は内向的な性格なので、会社勤めは向いていないだろうなと、20代の初めから感じていました。手のひらでできるもの作りを仕事にできたらなと。その頃、陶芸体験をする機会がありまして、とても楽しく感じました。『簡単だな』とさえ感じたのを覚えています。きっかけらしいきっかけは、その陶芸体験だったように思います。 普通科の高校を卒業してから、岐阜県にある多治見工業高校に入学し、陶磁器作りの基礎を学びました」 ーー陶磁器について学ぶ場所として多治見を選ばれたのは、どんな理由があったのでしょうか。 「多治見は日本一の陶器の産地なので、基礎から学ぶには最も適した土地だと思い、選びました。成形だけでなく、釉薬についての専門的な知識や技術も身につけられました」

のんびりとした美濃の土地で生まれる作品の数々

ーー岐阜県土岐市に工房を構えられた理由を教えてください 「作陶をする場所として、ほかの土地は考えていませんでした。私にとって陶器は釉薬の違いで見せるものなので、『これだ』と思える土を選びたいと考えていて。粘土の原料である原土が豊富に取れる美濃には、名家の窯元があちこちに点在していて、良質で安定した粘土を提供してくれる原料屋さんもあります。作品づくりに適した環境だと思いますね。 陶磁器について初めて学んだ地なので、馴染みがあることも理由のひとつです。近隣の方々からもご理解いただいていますし、のんびりとした空気が肌に合っていると感じます」 ーー美濃は、志野焼きや織部焼などの美濃焼が有名な土地ですが、そこから受けた影響はありますか? 「私の作る器について『何焼きですか?』と聞かれることも多いのですが『何焼きでもありません』と答えています。美濃は、産業として、あるいは茶陶としても長い歴史を持つ土地ですが、私の作る食器は、別の文脈にあると思っています」

料理を引き立てる「きれいすぎない色」を目指して

ーー「輪花皿」は小澤さんの作品の中でも特に人気なシリーズのひとつですが、「翡翠釉」や「すみれ」などの味わい深く独特な色は、どのようにして生み出されているのでしょうか。 「多くの方から『独特』と言っていただくことが多くありがたいのですが、私自身、シンプルで、普通でありたいと思っています。器の色も『きれいすぎない色』と言いますか。主役である料理を引き立てる色を作りたいと考えています。 元来飽きっぽい性格なので、モチベーションを保つためにも新しい色について常に考えていますね。鉄赤、淡黄釉、翡翠釉と作りましたので、今度は曖昧な中間色を作りたいと思うようになりました。色の名前も、あまり大げさなものはつけたくなく。花の名など、自然の中にある色の名前を使っています」

自然にやれば、きれいな円形に仕上がるんですよね。

ーー小澤さんが器作りにこめていらっしゃる想いを教えてください 「自己的にならないように、日々心がけています。ろくろしか使わない自分が、型で作ったように均一なものを作れるように。並べたときや重ねたときに、ピタリとそろうものが美しいと思うのです。自然にやれば、きれいな円形に仕上がるんですよね。 粉引や輪花皿など、個性の異なる器をそれぞれ作っていますが、どれかひとつにこだわりや特別な思い入れがあるわけではなく、どの色も形も同じように向き合い、作陶に取り組んでいます。 物つくりは、特別な作業ではありません。私一人で器をつくっているものではなく、使ってくださる方が思い思いに工夫するからこそ、訴えかけるものがあると思っています。使い手の気持ちや、使い心地を常に考えていたいですね」
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