ライター : dressing

11月11日は鮭の日!

この記事は、豊かなフードライフを演出するWEBメディア「dressing」の提供でお送りします。
新宿駅から京王線で2駅、代田橋駅を降りて徒歩5分の場所に「沖縄タウン めんそーれ大都市場内」がある。 この商店街、一度はさびれてしまった「杉並 和泉明店街」を活性化させるため、2005年のリニューアル時に付けられた名前だ。 東京のど真ん中で沖縄と聞くと不思議な感覚になるが、杉並区には沖縄学の父と呼ばれる伊波普猷(いはふゆう)や『おもろさうし』(沖縄最古といわれる歌謡集)の研究者・仲原善忠(なかはらぜんちゅう)などの高名な学者達が住んでいたこともあり、23区内で沖縄関係の在住者が多く、沖縄料理の店も都心では一番多いという背景がある。
今回紹介する『しゃけスタンド』は、その「沖縄タウン」内にある。2016年、鮭の日である11月11日にオープンしたこの店、実は日本一の鮭定食が食べられると定評のある鮭専門店『しゃけ小島』の姉妹店。 本店と異なるメニューが立ち飲み形式でリーズナブルにいただけるとあって早くも話題になっている。本店との距離は徒歩で30秒もかからないため、『しゃけスタンド』で飲みながら本店の席が空くのを待つ、という常連も多いという。 引き戸を開けると、ふわっとおでんのだしの香りが漂う。壁には嬉しいほど鮭メニューがびっしり。

ルビーのように輝く釧路産スジコに日本酒を合わせる

では、さっそく人気の鮭メニューを紹介しよう。
はじめにでてきたのは、「すじこクリームチーズ」(写真上)。クリームチーズの上にこぼれ落ちるほどたっぷりのせられたスジコ。釧路で水揚げされた新鮮な鮭から作るスジコは、ルビーのような輝きを放っている。ねっとりと塩の効いたスジコに濃厚なクリームチーズのミルキーなコクが合わさる。
そこに店主の小林雄一さんがそっと日本酒をぬる燗ですすめてくれる。外国人として初めて杜氏(醸造家)となった英国人フィリップ・ハーパー氏が作る秋の酒、玉川 自然仕込 山廃本醸造の「ひやおろし」が相性バツグン。ひと口含むとほんのり甘く乳酸系の香りが広がる。爽やかな風味の日本酒がこってりと味の強い「すじこクリームチーズ」を軽やかにまとめてくれる。

溢れ出る脂まで飲み干したい、「かま焼き」

定番の焼き物「かま焼き」(写真上)。焼く直前に塩を振り、中火で身をふっくらと、仕上げに強火で表面をカリッと焼きあげる。パリッとした皮に箸を入れるとサラサラと脂が流れ出てくる。
箸でホロリとほどける絶妙なやわらかさの身はしっとりで、完璧な焼き加減。実にシンプルだが鮭本来のうまさを堪能できる。レモンを搾り、大根おろしとともにさっぱりと食べるのも良い。この店の実力を実感できる一品だ。

季節や気分で変化するこわだりの「しゃけカレー」

『しゃけスタンド』の人気メニュー、店主こだわりの「しゃけカレー」(写真上)。「盛り付けも味も季節や気分でガラっと変えます」と小林さん。こだわりの詰まった南インド風のサラサラとしたカレーは、「しゃけカレー」と「豆カレー」の2種類。
「しゃけカレー」は、トマトの酸味をきゅっと効かせたスパイシーな風味。そこに素揚げした鮭の頭と切り身、定番のジャガイモがゴロゴロ入っている。 ルーに浸りながらもサクッとした食感が残る鮭のうまみが、スパイシーながらも野菜の甘みや酸味が効いた刺激的なルーとみごとに重なり食欲を増幅させてくれる。もうひとつはレンズ豆のカレー。舌触りが滑らかで豆の甘みと香りが広がるやさしい味わいだ。 器の上で2種類のルーを混ぜ合わせて食べると、辛み、甘み、酸味が幾重にも重ねられる味わいの変化が心地いい。
ライスの上にのせられた鮭皮は、パパド(インドのおせんべい)のような役割でパリパリ食感が楽しい。さらに、お好みで「ヨーグルトといくら」や「カレールーに納豆」など独特なトッピングもできる。立ち飲み屋でこのクオリティのカレーが食べられるとは驚きだ。

立ち飲みスタイルが心地よい。スタンドで絶品の鮭料理と酒に舌鼓

ところで、なぜ、立ち飲みスタイルなのだろうか。店主の小林雄一さんに尋ねてみた。「昔、ここは乾物屋さんだったんです。店を閉めるというので譲ってもらったんですが、ほら、床が斜めでしょう(笑) 床からの改装はお金もかかるので、それなら立ち飲み形式のスタンドにしよう、となったわけです」。そこがうまいこと居心地の良さにつながっているから不思議だ。

本店「しゃけ小島」へはしごも楽しい

『しゃけスタンド』で鮭料理を堪能したあと、食ツウなら本店へはしごしたいところ。ノスタルジックな雰囲気の佇まいが魅力的だ。
本店でしか食べられないおすすめメニューは「しゃけバターライス 白」(写真上)。バターライスの上に、鮭の骨についた身を丁寧にごそげて作る鮭フレークがたっぷりのっている。 ライスの味付けはバターと塩、少しの醤油のみ。香ばしく塩気の効いた鮭フレークにバターの香りをまとわせたライスがよく合う。レモンを搾れば、果汁の酸味が鮭フレークのうまみを引き出し、さっぱりとまとめてくれる。まさに〆のごはんにぴったりな一品である。
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