常用漢字に「摂る」はない?

日本には文部科学省によって制定された、「常用漢字」というものがあります。これは漢字を日常で使うときの目安となるもので、一般的に使用される漢字を抜粋したものです。

この常用漢字表のなかに、「とる」という読み方の漢字に「取る」はありますが、「摂る」は含まれていません。そのため「食事を取る」という表現が、一般的には正しい表記法とされています。ちなみに音読みの「摂」はありますが、訓読みはないようです。

常用漢字になくてもとくに支障はない

漢字は古代に中国から伝わった文字で、いまは使われていない古い漢字を含めると、その数は10万字以上もあるのだとか。漢字はひとつひとつに意味があり、私たちはそれを踏まえて、普段から漢字を使っているのです。

常用漢字は、直近では2010年に改訂されて、現在では2136字が制定されています。10万字を超える漢字のなかの、たった2100字程度の常用漢字は、あくまでも使用の目安に過ぎません。常用漢字以外の字を使うことを禁じているわけではないため、実生活では支障なく使えますよ。

とるとるクイズ

「取る」と「摂る」の違いを、理解していただけたでしょうか。では、ここから問題を出します。これから挙げる文章で使う「とる」は、漢字で表記すると「取」「摂」のどちらが正解でしょうか?常用漢字かどうかは気にせずに、考えてみてください。

【第1問】栄養をとる

「栄養をとる」の「とる」は、「取る」と「摂る」のどちらでしょうか?ちょっと簡単すぎましたね。栄養は、体内に「取り入れて」「自らのものにする」ものですね。

では「栄養のバランスをとる」場合の「とる」は、「取る」か「摂る」のどちらでしょうか。ちょっとむずかしくなりましたね。ヒントは「とる」にあります。「栄養のバランスをとる」の「とる」が、どの言葉にかかっているかを考えるとわかりやすいですよ。

「栄養をとる」と「栄養のバランスをとる」。このふたつの文章を見比べてわかるように、「とる」がかかる対象がどの部分、言葉かによって、使う漢字が変わってくるのです。どちらにどの「とる」を使うのか。もうわかりましたね。正解は……のちほど発表します。

【第2問】水分をとる

第2問は「水分をとる」です。この場合は、「取る」と「摂る」のどちらでしょうか?水分をとるのもふた通りあります。自分の体に水分を補給する場合、どちらの「とる」を使うのがふさわしいのでしょう。

また、水分補給以外にも「水分をとる」場合があります。料理のレシピでよく見かける、「野菜の水分はよくとってから和えましょう」の「とる」です。この場合、あなたなら「取る」と「摂る」のどちらを選びますか?

「水分をとる」という文章であっても、同じ読み方でふたつの意味合いがあります。つまり漢字でその違いを判断している、ということですね。さて、みなさんはどちらの「水分をとる」に、どっちの「とる」の漢字を当てはめますか?

【第3問】休憩をとる

「取る」と「摂る」の違いについて、長々と説明されて、すっかり疲れてしまったのではないしょうか。このへんで少し「休憩をとる」ことにしましょう。「休憩をとる」の場合の「とる」は、「取る」か「摂る」のどちら?「休憩」がどんなものかを考えると、わかりやすいですよ。
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