ライター : 堀田 らいむ

webライター

南関あげはおいしい油あげ

「南関(なんかん)あげ」が生まれたのは、熊本県の南関町。県の北西部、福岡県との県境に位置する、山あいの緑豊かな町です。名前の通り、かつて交通の要所となる関所が置かれた地として、古くは鎌倉時代に書かれた「平家物語」にもそのことが記されています。江戸時代には参勤交代の休憩所であった御茶屋があり「豊前街道南関御茶屋跡」として現存しています。 そんな歴史の町、南関で誕生した南関あげは、昔から地元の人々の食卓に欠かせない伝統食品です。南関あげの発祥は、江戸時代初期の1637年〜38年に起こった「島原の乱」の後、四国伊予松山からの移住民の中に油あげの製法を知る人がいて、そこから今の南関あげの原型が伝わったとされています。 現在の南関あげの製法は、水に浸した大豆をすり潰し、その汁を煮て豆腐を作ります。できあがった豆腐を5ミリほどの厚さにスライス。圧縮機にかけて水分を抜き、その後、二度揚げにします。この製法で作ると、普通の油あげと違って長期保存が可能になるといいます。見た目も食感も普通の油あげと異なり、30センチ角の大きさで、調理する前はパリっとしており、出汁や煮汁を含むとふっくらとジューシーになるのが南関あげの特徴です。

煮物や味噌汁に!南関あげの食べかた

南関あげは、普通の油あげよりも水分の含有量が極めて少ないので、出汁や煮汁をよく吸い、味の入りが非常に良い食材です。基本的に油抜きの必要がなく、手で割っても使えるので、忙しい時の味噌汁の具として最適。包丁を使わないので、小さいお子さんと調理する時も安心です。味噌汁の他にも、郷土料理の「南関煮しめ」や「南関あげ巻き寿司」のように、さまざまな料理に使うことができます。

南関あげのレシピ

南関あげのいなり寿司

南関あげを縦3等分にして、油抜きをします。鍋に南関あげとだし汁、調味料を加えます。煮立ったら火を止めて、南関あげを1枚ごとに丸めて味をしみこませます。ごはんにすし酢、白ごまを混ぜます。南関あげをザルにあけ、軽く水気を切って半分に切ったら、俵握りにしたすし飯に南関あげを巻いてできあがりです。

南関あげと鶏肉の混ぜご飯

ご飯は少し固めに炊いておきます。干ししいたけは水で戻します。絹さやは軽く塩水でゆでたら5ミリ幅に、鶏肉は小さめに、干ししいたけとにんじんは粗みじん切り、ごぼうはささがき、南関あげは5ミリ幅に切ります。鶏肉を炒め、ごぼう、にんじん干ししいたけを入れて炒めます。しいたけの戻し汁と水を加えて一煮立ちさせたら、南関あげと調味料を加えて少しだけ煮詰めます。しょうゆやみりんで味を調え、絹さやを入れて少し混ぜたら、炊き上がったご飯に混ぜ込んで完成です。

南関あげの生姜ご飯巻き

南関あげは油抜きをします。油抜きした南関あげを出し汁、濃い口・淡口醤油、味醂、砂糖 で煮含めます。炊き立てのご飯に寿司酢、いりごま、みじん切りした生姜の甘酢漬けを入れながら切るように混ぜます。アスパラガスは茹で、ツナ缶は油をきり、砂糖と醤油で炒り煮します。巻き簾にラップを敷いて、煮含めた南関あげを広げ、その上に寿司飯をのせます。茹でたアスパラガス、カニカマ、ツナの炒り煮を、巻き寿司の要領で巻きます。ラップで形を整えたら完成です。

南関あげの保存方法

南関あげは長期保存ができる食材です。常温で3ヶ月程度保存可能ですが、その際は直射日光や蛍光灯などの強い光、高温多湿を避けて保存してください。開封後は、密閉できる容器に入れて保存し、できるだけ早く使い切りましょう。

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